信仰心
ロハンはヴァジュラを懐から取り出して構えて見せた。
「それは……インドラの神器ヴァジュラなの? あんたに使いこなせるのかしら」
ヴェノーニャにそう言われ、ロハンは少しだけ動揺する。
(困ったな……これをどう使えばいいのか僕にはサッパリ分からない。インドラって確か雷を操れる神様だったはず。ヴァジュラに意識を向ければ武器にすることができるかも……とにかくイメージしてみよう)
ロハンはヴァジュラを日本刀のように握り締め、先端から刃物が出ている様子をイメージする。
「何をしてるの? 黙ってるならこっちから仕掛けるわよ!」
ヴェノーニャは槍の切っ先をロハンに向けながら、こちらへ向かって突進して来た。
一方で目を閉じたまま静かにしているロハンは、ヴァジュラを握り締めて集中している。
「喰らいなっ!」
ヴェノーニャの槍がロハンの胸を貫こうとした時、突然、ヴァジュラの先端から光輝く剣のようなものが現れ、その刀身で槍を左側へ受け流した。
「なにっ!?」
槍は地面に突き刺さり、ヴェノーニャが抜こうとしても簡単に引き抜くことができない。
その機会を逃さず、ロハンは光の剣でヴェノーニャを袈裟斬りで仕留めようとした。
しかし、ヴェノーニャは強引に槍を地面から引き抜くと、その光の剣を弾き飛ばして後方へ下がり、ロハンと3メートルほど距離を置く。
「くそっ! 忌々しいガキだね! 雷を刀身にするなんてインドラにでもなったつもりなの?」
「イメージしたらこうなっただけですよ。これで対等になりましたね」
「ハッ! 私は今までの刺客とは比べものにならないくらい強いわよ。いい気にならないでちょうだい!」
ヴェノーニャは槍を軽く振り回すと、柄を脇に挟んで構えの姿勢を見せる。
「今度こそ息の根を止めてあげる。覚悟しな!」
――だがその時、上空から飛来したラファエルが二人の前に舞い降りた。
「あっ! ようやく助けに来てくれたんだ」
「馬っっっ鹿野郎! 目立つなとあれほど言っただろうが!」
「説明すると長くなるんですけど……多分無理です」
「チッ、世話の焼ける野郎だぜ」
ラファエルは背中に抱えている大剣を引き抜くと、その切っ先をヴェノーニャに向けて凄んだ。
「おい、そこの厚化粧。死にたくなかったら大人しく引き下がるんだな」
「……今さらノコノコ出て来て何を言うかと思ったら、そんな簡単に引き下がるワケないだろうが! それに、おばさんだの厚化粧だの、言いたい放題かあんたたち。少しは女性の扱いを覚えなさいよ!」
ラファエルは、小指で耳の穴をほじって聞いていないフリをする。
「ああ~そうか。もしかしてイスラム教国のムガルに逃げてたの? 哀れよねぇ、この国じゃ天使の信仰なんてないんだから、日に日に力が弱ってるんでしょ。そんな体で私に勝てるのかしら?」
「えっ……」
ロハンは驚いてラファエルの顔を見た。
「気にするな、あいつのハッタリだ。俺の力は弱くなんかなっちゃいねぇ」
そう言うと、ラファエルは大剣を正面に構えて戦闘態勢に入る。
「試してやろうかこのクソ女! か弱い女や子供たちを散々殺しやがって、おまえにも同じ苦痛を味わせてやる!」




