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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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教祖ヴェノーニャ

部屋の隅でカランという音がしたため、談笑していた3人は一斉にそちらへ視線を向ける。

そして壺の裏側を注意深く見られると、ロハンが隠れていることに気が付いてしまう。


「お、王子!?」

「あちゃ~、見つかっちゃった」

「今の話を聞いていたのかっ! 仕方ない、ここで殺してしまえ!」

3人は懐からナイフを取り出し、ロハンの息の根を止めようと襲い掛かって来た。

しかし、ロハンはそれらの攻撃をヒラリと(かわ)すと、先頭にいた一人を蹴りの一撃で気絶させる。

「なっ!?」

「……まずは一人」

「こ、これは……本当に王子か? まさか偽者ではあるまいな!」

「番兵を呼べ! この者をひっ()らえるのだ!」

一人の男が部屋から出て、警護の兵士を呼びに行った。

「うわ~、大騒ぎになっちゃいそう。ここから早く逃げないと」

ロハンはキョロキョロと辺りを見回すと、子供が通れそうな小さい窓があることに気が付いた。

そして窓を開けて外へ飛び出すと、下にあった芝生(しばふ)に上手く着地する。

上を見ると、窓を通れない男が悔しそうにこちらを(にら)んでいた。

(子供の身長だから助かった……このまま城を抜け出しちゃおう)

ロハンは城の庭を駆け抜けると、城外へと続く太い一本道に辿り着き、その道に沿って城の外を目指した。


――しかし。


ドン! と音がした瞬間、何か巨大なものが目の前に舞い降りて来た。

砂埃(すなぼこり)が舞ったのでロハンが目を()らして見ると、それは原生種の背に乗ったヴェノーニャの姿であった。

「あ~らあらあら、悪い坊やだこと。城の中へ盗みにでも入ったのかしら?」

「おばさんは……誰?」

「お、おばっ……!」

ヴェノーニャは鬼の形相(ぎょうそう)になり、持っていた槍を怒りでブンブンと振り回す。

「おばさんじゃねぇよ! そりゃあんたよりは年上だけど、見た目は20代前半で通ってるんだ!」

「……でも、20代前半ではないですよね」

「うるっさい! 言わなくてもいいだろうが、そんなこと! 下衆(げす)な野郎だね」

ヴェノーニャは顔を紅潮(こうちょう)させながら、槍の切っ先をロハンに向ける。

「あんたには恨みがあるの、私のカワイイ妹をぶっ殺したからね。ここで(かたき)を取らせて(もら)うわ」

「カワイイ妹? 誰のことですか?」

「聞いてねぇのかよ! あのマッチョには、ちゃんと伝えたはずなのにぃぃぃ!」

「そんな話、一言も聞いてないです。本当に誰なんですか?」

「マラーニャだよ、マラーニャ。忘れたとは言わせないからね!」

マラーニャという名前を聞いて、ロハンは頭を抱えてしまう、

「ま~たあのノリに付き合わされるんだ……勘弁(かんべん)してよ」

「どうやら思い出したようだね」

「じゃあ、おばさんは悪しき者の刺客なのか。こんなところで何をやってるの?」

「私はモルテーム教団の一員として、新興派の教祖として君臨しているの。それから、おばさんおばさん言うんじゃねぇ! 私にはヴェノーニャって言う、立派な名前があるんだから!」


……ヴェノーニャは話を終えると、再び槍を構えて攻撃態勢(こうげきたいせい)に入る。

「話は終わりよ……ここであんたを串刺(くしざ)しにしてやる!」

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