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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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王子の暗殺

「ううう……サポートするって言ったクセに」

ロハンは広い部屋でポツンと一人残され、寂しさで泣きそうになった。

部屋の中は家具などに豪奢(ごうしゃ)な装飾や刺繍(ししゅう)(ほどこ)され、その派手さがかえって息苦しさを感じさせる。

(ここでジタバタしても仕方ないか……久しぶりに落ち着いて寝れそうだし、さっさと眠っちゃおう)

不貞寝(ふてね)するかのようにロハンは横になり、そのまま目を閉じて眠ってしまった。


――そして5時間後。


頬にフワリとした風を感じたため、ロハンは目を開けて起き上がり、周囲の様子を確認してみた。

見ると窓の扉が少しだけ開いている。

「……あれ?」

立ち上がって窓を閉めたが、なんとなく部屋の中に人がいるような気配を感じた。

(何かおかしい……誰かが部屋の中に入ったな)

ふとテーブルに視線を向けると、フルーツや飲み物などが置かれており、ロハンはそれらを手に取って匂いを()いでみる。

(……毒を入れられたのかもしれないな。そんな気がする)


すると次の瞬間、黒ずくめの男がロハンの背後から襲い掛かって来た。

どうやら大型の家具に隠れていたらしく、ロハンを殺そうと息を(ひそ)めていたらしい。

だが、ロハンは咄嗟(とっさ)に身を(ひるがえ)し、男の攻撃をフルーツの皿で受け止めた。

「なにっ!?」

あまりの反応の速さに男は驚いたが、すぐにナイフを持ち替えてロハンを突き刺そうとする。

しかし、ロハンはイーテルヴィータが確定しているため、過去に学んだ格闘術を思い出して、黒ずくめの男をいとも簡単に投げ飛ばしてしまう。

床に思い切り叩き付けられた男は、その衝撃により気を失ってしまった。


「はあ……はあ……あ、危なかった」

ロハンは額に浮き出た汗を(ぬぐ)うと、黒ずくめの男の顔を確かめてみる。

「どうやら暗殺者のようだな。狙いは僕じゃなくて、この国の王子様だったはず。毒入りの飲み物を飲まなかったせいで、シビレを切らして出て来たのかも」

そしてロハンは部屋の前にいる見張りの男を呼ぼうとしたが、声を掛けても一向に反応がなかった。

(……やっぱり変だ、人払いがされてる。周到(しゅうとう)に計画された暗殺らしい。そう考えると、ここへ連れて来たあの老人も怪しいな)


……しばらく考えた後、ここにいては危険だと思い、ロハンは部屋からの脱出を(こころ)みる。

「あのマッチョおじさんだって約束を破ったんだ、僕も約束を破っちゃおう。こんなところで大人しくしてたら死んじゃう」

窓から下を(のぞ)き見ると、二階に通じるテラスがあるため、ロハンは窓から身を乗り出して、そのテラスに飛び降りた。

そのまま身を隠しながら二階へ侵入し、すぐ手前にある部屋の扉を開けて中に入る。

(あ……ここは談話室(だんわしつ)みたいだ。長く隠れられるような場所じゃないな)

すると、部屋の前から数人の男性の会話が聞こえ、こちらへ向かって歩く気配を感じた。

どうやらこの部屋の中へ入って来るらしい。

ロハンは慌てて隠れる場所を探し、幸いなことに大型の壺が置かれていたため、その陰に身を潜める。

そして扉が開く音がして、数人の男性が会話をしながら部屋へ入り、それぞれの椅子に腰掛けて互いに顔を見合わせた。

「やれやれ、もう少しで戦争が起こせそうだったものの、王が寸でで踏み止まってしまったわい」

「今なら弱体化した王国を乗っ取れるはずなのにな」

「まあ時期が時期だ。ヴェノーニャ様の教えも浸透(しんとう)しつつあるし、その(とりこ)となっている王の命も風前(ふうぜん)(ともしび)であろう。今は待つのが最善(さいぜん)の策である」

何やら物騒な言葉が交わされているも、内情を知らないロハンにとってはチンプンカンプンである。

「……して、王子の暗殺については?」

「今夜が決行だと聞いている。もう終わっているのかもしれん」

「朝には死体が見つかるさ。あそこの使用人は買収を済ませているゆえ、驚かれもしないだろうな」

その話を聞き、ロハンの蟀谷(こめかみ)青筋(あおすじ)が立った。

(ちくしょう、城の人間は誰一人として信用ができなさそうだ)


――だがその時、手前に置かれていた燭台(しょくだい)を、ロハンは肩で引っ掛けて倒してしまう。

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