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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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城塞都市ファリア

ロハンと一行は、ハザルの村を後にして城塞都市(じょうさいとし)ファリアへと向かった。

ムガル帝国の支配が進む中、ファリアは王国の城塞都市として、帝国の猛攻(もうこう)に唯一抵抗できるほどの堅固(けんご)な防御力を(ほこ)っていた。

マハーラージャであるアフマド王は、インドの南西部にこの城塞都市を築き善政を()いていたが、最近ではキナ臭い噂が人々の間で飛び交っていると聞く。


「ちょいと調べたんだが、どうやら怪しい宗教家がアフマド王の側近になったらしい。恐らく、前に話したモルテーム教団の関係者だろうな」

ラファエルは焼いた魚を頬張(ほおば)りながら、ロハンにファリアの内情(ないじょう)を説明する。

「モルテーム教団て、どんな組織なんですか?」

「人間の『死』を人生の始まりと位置付けるのが彼らの教義(きょうぎ)だ。だがその実態は、虐待(ぎゃくたい)拷問(ごうもん)による苦痛、精神の荒廃(こうはい)などを推し進め、それを魂の目覚めなどと(しょう)して(だま)すのが奴らの手口なんだよ。それに、悪しき者たちが設立した組織でもあるんだな、こいつが」

「悪しき者が……」

「ああ、だから余計にタチが悪いのさ」

そう言うと、ラファエルは皿に乗せられた魚料理を一気に平らげた。

「ちょっと~、僕の分まで食べないでくださいよ!」

「また注文すりゃいいだろ。ここの料理、けっこう旨いぞ」

「なんで実体がないのに、食べ物だけはちゃんと食べられるの? おかしいですよね」

「細けぇこと言うな。天使だから、お供え物は食えるんだよ」

「……で、これからどうするんですか? このお店に長いこと居座(いすわ)ってますけど」

「それなんだがな……」


――その時、ロハンの背後で「王子、王子ではないですか!」と老人の声が聞こえた。


「……へ?」

ロハンは驚いて振り返ると、その老人に肩を(つか)まれて詰め寄られる。

「な、なんですか!? 放してよ!」

「逃がしませんぞ王子! あれほど城下町に行ってはならぬと釘を刺したではありませんか」

「僕は王子なんかじゃないよ!」

(とぼ)けないでください。さあ番兵よ、王子を丁重に城までお連れするのだ」

その様子を見ていたラファエルは、ロハンにそっと耳打ちする。

(おい、王子様のフリをしておけ。後は俺がサポートしてやるから)

ラファエルにそう言われたため、ロハンは不本意ながらも、老人と番兵たちに連れられてファリアの城へ向かった。


――そして城門をくぐり抜け城の中へ入ると、観念したと分かったのか、番兵たちが去って老人と二人きりになる。

「まったく……(じい)は心配しましたぞ。大切な時期ゆえ、何かあった場合はアフマド王に顔向けができませぬ」

ロハンは「そんなこと言われても」と内心で思ったが、言い返しても状況が変わるとは思えないため、しばらく黙っていた。

隣では、ラファエルが澄ました顔で立っている。

「さあ、自室へ戻ってくださいまし。しばらくは部屋から出るのも禁止です!」

そう言われ、ロハンは渋々(うなず)くと、老人と一緒に城の廊下を歩き出した。

そして付いて来るラファエルに、ロハンは小さい声で話し掛ける。

(知らなかったです……僕がこの国の王子様に似てるなんて)

「ああ、それは俺が過去を書き換えて、おまえさんとソックリになるようにしたからだ」


――ラファエルの話を聞き、ロハンは怒りで顔が真っ赤になる。


「なんでそんな勝手なことするんですかっ!」

急に背後で大声がしたため、老人が驚いて振り返る。

「ど、どうされたのです!?」

「あ、いえ……なんでもありません」

ロハンは困ったように頭を()くと、その様子を見て、老人は(いぶか)()な視線を向ける。

しかしロハンが落ち着いたことを確認すると、再び背を向けて廊下を歩き出した。

「おい、俺は行くからな。しばらく城の中で大人しくしてろよ」

「えっ、困りますってば」

「うるせぇ! いいか、バレるなよ。バレたら一発処刑になるぞ。おまえさんのイーテルヴィータが、人間に殺されて失敗になるとか、シャレにならんからな」


……そう言うと、ラファエルはフッと煙のように姿を消した。

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