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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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ヴァジュラ

「それから……ほらよ、おまえさんの愛用している日本刀と銃だ」

ラファエルはテーブルの上に日本刀『兼佐陀・紫電』と、リボルバー『カスタムBSR』を乱暴に置いた。

「ちょっと! もう少し大切に扱ってください」

「わざわざ日本にまで行って探したんだからな。それに、この時代にはそぐわないが、銃も復元(ふくげん)しておいてやったぞ。金を請求(せいきゅう)されないだけでも感謝しろよ」

ロハンは隣でブツブツ文句を言っているラファエルを無視して、テーブルの上に置いてある日本刀を(さや)から引き抜いた。

「お、重い……」

「ギャハハハ! おまえさんの身長よりも刀の方が長いじゃねぇか」

「失礼なっ! そんなに背は低くないです」

「だがよ~、サマになってないんだな、これが」

ラファエルの言う通り、今のロハンにはこの日本刀を使いこなせそうにないと思われる。

銃も同様に、一発撃つだけで精一杯という感じであり、射撃による反動は予想以上に大きかった。

「どうしよう……これじゃあ戦えないや」

「やれやれ、もう少し鍛錬(たんれん)すれば使いこなせるかもしれんが、身体が幼いから困ったもんだよな」

「で、でも、小さいナイフとかでも衝撃波は出せますから」

「そうか、それならおまえさんにピッタリな武器がある」


――そう言うと、ラファエルはテーブルの上にダイヤで形成された奇妙な武具を置いた。


「何これ……めちゃくちゃ高そうな工芸品ですね」

「こいつはインド神である、インドラが愛用した武器『ヴァジュラ』だ。日本じゃ金剛杵(こんごうしょ)と呼ばれている仏教の法具だぞ、見たことないのか?」

「いえ、インドラはヒンドゥー教の神なので知ってますけど……武器のことまでは」

「まあインドじゃ有名な神様だよな。そいつが使っている神器なんだよ」

ロハンはヴァジュラを手に取って、細部までじっくりと見る。

両端にはモリ状の装飾が施され、中央には持ち手が備わっており、そのすべてがダイヤモンド(金剛

で形作られている、まさに「神器」の名に相応(ふさわ)しい装飾品である。

(凄い……全部ダイヤモンドだ。売ったらいくらになるんだろ?)

そんなロハンの考えを見透かすように、ラファエルの表情が途端に曇る。

「おまえさん……まさか売ろうとか思ってるんじゃないだろうな? 神様のありがたい武器だぞ、このバチ当たりが」

「ままま、まさか。しょ、しょんなこと思ってませんよ」

「分かりやすい男だな。しかも今は10歳だろ。とんでもねぇ欲深な大人になりそうだ」

ロハンはラファエルに説教され、(うつむ)いて黙ってしまう。

「……まあいい、そいつがおまえさんの新しい武器だ。あの日本刀よりは軽くて使いこなせそうだろ」

「これってどうやって使うんですか?」

「そいつは知らん」

「ええ~!? そんな無責任な」

「うるせぇ! 使ってりゃ分かると思ったから渡したんだ。後は自分で考えろ」

ラファエルの言葉に、ロハンはガックリと肩を落とす。


「……まったく、天使がこんなに性格が悪いなら、悪魔と呼ばれた僕はどんだけ性格が悪いんだろ?」

「なんか言ったか?」

「いえ、なんでもないです」

ロハンは近くにいた狼の頭を()でながら、引き()った笑顔を浮かべた。

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