ヴァジュラ
「それから……ほらよ、おまえさんの愛用している日本刀と銃だ」
ラファエルはテーブルの上に日本刀『兼佐陀・紫電』と、リボルバー『カスタムBSR』を乱暴に置いた。
「ちょっと! もう少し大切に扱ってください」
「わざわざ日本にまで行って探したんだからな。それに、この時代にはそぐわないが、銃も復元しておいてやったぞ。金を請求されないだけでも感謝しろよ」
ロハンは隣でブツブツ文句を言っているラファエルを無視して、テーブルの上に置いてある日本刀を鞘から引き抜いた。
「お、重い……」
「ギャハハハ! おまえさんの身長よりも刀の方が長いじゃねぇか」
「失礼なっ! そんなに背は低くないです」
「だがよ~、サマになってないんだな、これが」
ラファエルの言う通り、今のロハンにはこの日本刀を使いこなせそうにないと思われる。
銃も同様に、一発撃つだけで精一杯という感じであり、射撃による反動は予想以上に大きかった。
「どうしよう……これじゃあ戦えないや」
「やれやれ、もう少し鍛錬すれば使いこなせるかもしれんが、身体が幼いから困ったもんだよな」
「で、でも、小さいナイフとかでも衝撃波は出せますから」
「そうか、それならおまえさんにピッタリな武器がある」
――そう言うと、ラファエルはテーブルの上にダイヤで形成された奇妙な武具を置いた。
「何これ……めちゃくちゃ高そうな工芸品ですね」
「こいつはインド神である、インドラが愛用した武器『ヴァジュラ』だ。日本じゃ金剛杵と呼ばれている仏教の法具だぞ、見たことないのか?」
「いえ、インドラはヒンドゥー教の神なので知ってますけど……武器のことまでは」
「まあインドじゃ有名な神様だよな。そいつが使っている神器なんだよ」
ロハンはヴァジュラを手に取って、細部までじっくりと見る。
両端にはモリ状の装飾が施され、中央には持ち手が備わっており、そのすべてがダイヤモンド(金剛
で形作られている、まさに「神器」の名に相応しい装飾品である。
(凄い……全部ダイヤモンドだ。売ったらいくらになるんだろ?)
そんなロハンの考えを見透かすように、ラファエルの表情が途端に曇る。
「おまえさん……まさか売ろうとか思ってるんじゃないだろうな? 神様のありがたい武器だぞ、このバチ当たりが」
「ままま、まさか。しょ、しょんなこと思ってませんよ」
「分かりやすい男だな。しかも今は10歳だろ。とんでもねぇ欲深な大人になりそうだ」
ロハンはラファエルに説教され、俯いて黙ってしまう。
「……まあいい、そいつがおまえさんの新しい武器だ。あの日本刀よりは軽くて使いこなせそうだろ」
「これってどうやって使うんですか?」
「そいつは知らん」
「ええ~!? そんな無責任な」
「うるせぇ! 使ってりゃ分かると思ったから渡したんだ。後は自分で考えろ」
ラファエルの言葉に、ロハンはガックリと肩を落とす。
「……まったく、天使がこんなに性格が悪いなら、悪魔と呼ばれた僕はどんだけ性格が悪いんだろ?」
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでもないです」
ロハンは近くにいた狼の頭を撫でながら、引き攣った笑顔を浮かべた。




