創造主
創造主という言葉を聞いて、ロハンは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「またその話ですか。僕が人間を創造したとかどうとか」
「なんだ? ずいぶんと疑ってるようなツラしてるな」
「そりゃ疑うでしょ。本当なら僕が神様みたいなもんだもん」
大男はふ〜っと大きなため息を吐くと、ロハンの目の前に粘土の塊をドン! と置いた。
「なんですか、これ?」
「こいつを握って、泥団子を作ってみろ」
「え? ど、どうして?」
「つべこべ言わずに、さっさと作りやがれ!」
大男に凄まれ、ロハンは涙目になりながら粘土を握って、1個の泥団子を作った。
「作りました……」
「おう、上出来だ。じゃあ、その泥団子を1分の間に100個作りな」
「えっ、無理ですよ! 無理無理」
「何が無理なんだ。おまえが今まで渡り歩いて来た世界で、泥団子を1分間で100個作れるような機械を見たことがあるだろ。泥団子じゃなくとも、例えば握り飯とかな。その機械を作りゃあいい」
「だから! 今は17世紀だって言ってるでしょ。そんな機械を作れる技術がないの!」
「何故だ? その機械はこの地球上に存在してたんだぜ。部品がないってのは分かるが、素材なら十分に揃っているはずだろ」
そう言うと、大男は目を細めながら顎の髭を撫でる。
「仮にだ、おまえさんが機械の構造を熟知していたとしよう。何年掛かるかは分からんが、似たような機械を生み出せるはずだ。コンピュータ制御じゃなくともな。それを見たこの時代の人間は、口々にこう言うだろう……まるで魔法のようだと」
「そりゃ機械が作れれば、驚かれるでしょうけど」
「スマホなんか見せりゃ気絶するかもな」
「だ・か・ら、この時代で作るのは無理なんですってば!」
「しかしだ、おまえの見た世界では確かにこの地球上にそれらは存在した。その事実だけは覆せないだろ?」
――大男との問答が続き、ロハンは頭を抱え出した。
「さっきから一体なんの話をしているのか、サッパリ分かりません!」
「作れるはずなのに作れない理由はなんだ? 技術の革新が劣っているからか? 人間の進歩が足りないからか? いいや違う、それは人の子らが持つ『意識』の差が圧倒的に開いているからだ」
「……意識?」
「この世のすべての創造物は、人の子が意識を向けることにより存在する。この1個の泥団子が存在できるのは、おまえが【泥団子を作りたい】という意識を向けたからだ。もしその意識が向かなければ、永遠に粘土の塊のままだろうな。また【1分間に100個の泥団子を作りたい】場合、生産する機械を作るのもいいが、ここに100人の人間を呼んで同時に握らせるのも正解だろ? それもまた一つの手であり、一つの意識だ」
「あっ、ズル~い」
「ズルかねぇさ。今の時代なら、後者を選ぶ者が多いだろうな。その程度の意識しかないからだ。だが、おまえは生産できる機械を見ているから、便利な方を選ぶ意識が少しでも働くはずだ。そうして人の子は進歩したように見えるのさ。文明の進化とは、その繰り返しだと言える」
「それと、僕が人間を創造したのと、どういう関係が?」
「おまえも含め、俺たちはこの世界や次元空間、人の子らの意識が集約した『核』と呼べる場所に存在する者なんだ。フッ……おまえさんは、とっくの昔に忘れちまってるようだがな。まあいい、こっちへ来い。創造するとはどういう意味なのか、実際に教えてやる」
大男は椅子から立ち上がり、ロハンと一緒に洞窟の入り口から外へ出た。
ロハンは久しぶりに外へ出たためか、太陽の眩しさに戸惑いを見せる。
「おうおう、大丈夫か? しっかり見とけよ」
「だ、大丈夫です。何を見せてくれるんですか?」
「おまえさん、今まで見て来た世界で、一番好きな都市は何処だい?」
「えっ……と、東京ですけど」
「そうか、じゃあ渋谷のセンター街をここに再現してやる」
「……は?」
すると、大男は持っていた杖を前に突き出し、目を閉じて集中する。
ゴゴゴゴゴ!
大きな音がしたのでロハンは顔を向けると、遠くの木々や山々が突然崩れ落ち、その破壊された木材や岩石が粘土のように形を変え、次々にビルや道路などの建設物を作り上げてゆくのが見える。
驚きの光景に、ロハンは口を開けたままポカンとしており、気が付くと『渋谷のセンター街』が目の前に姿を現していた。
そして一通りの作業を終えたのか、大男は満面の笑みでロハンにこう言った。
「……どうだ、これが創造するということだ。まるで魔法のようだろ」




