表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第一章 穂積海斗 22歳
11/146

善き者

倒れている海斗へ近付いたフギオールは、胸ぐらを掴んで身体を持ち上げた。

そして平手で何度も海斗の頬を引っ(ぱた)き、意識を失う一歩手前まで激しく痛め付ける。


「貴様も過去の栄光を追い求めず、永遠の眠りに就いたらどうだ。 こうして痛め付けるのもいい加減に飽きたわ!」


フギオールは手を離して海斗を地面へ落とすと、その巨大な足で海斗の頭を踏み付けた。


「返す言葉もないか……では早々に葬ってやろう。この幻異界の空気を吸うだけでも吐き気を(もよお)すからな」


――ドォオン!


海斗は最後の力を振り絞り、ホルスターからリボルバーを引き抜いてフギオールの足を撃った。

……少しだけよろけたフギオールだが、致命の一撃にはならず、(かす)り傷程度しかダメージを与えることができない。

一方で頭から足を離したことで隙が生まれ、海斗はビルの外へ逃げることができた。


(……この銃でさえあの男にはまったく効かない。それに巨大な原生種よりも力が強いとか冗談キツイぜ)


海斗は痛む腹を押さえながら必死で街の中を逃げたが、すぐにフギオールに行く手を阻まれてしまう。


「くそっ!」

「観念せい穂積海斗。我は貴様が18歳の世に生きる幻異界を支配する者。抵抗するだけ無駄であると分からないのか」

「じゃあ4回は転生に成功したってことだよな?」

「……何が言いたい」

「簡単には(あきら)めないって意味だよ!」


海斗はリボルバーを撃ちながら建物の陰に隠れる。

だがフギオールは銃による攻撃にも(ひる)むことなく、その場に仁王立ちして海斗の行方を冷静に追っていた。


「ふんっ!」


フギオールは近くにあった巨大なオブジェをその手に掴み、隠れている海斗へ向かって放り投げる。

オブジェが頭上から落ちて来たため、海斗は慌てて飛び退いて避けようとする。

幸いなことにオブジェが建物の隙間(すきま)に引っ掛かり、押し(つぶ)されることはなかった。


(なんて怪力だよ……ミゼラムのように原生種を使うもんだと思ってたけど、あいつには必要なさそうだ)


フギオールは不服そうな顔をしながら海斗の近くに歩み寄る。


「我に物理的な攻撃は一切効かぬ。日本刀だろうと銃だろうと傷一つ負わせることができない。それでも戦うと言うなら、お望み通り五体を引き裂いてやろう」


そう言うとフギオールは海斗の隠れている場所の壁を拳で破壊する。

壁に背を向けて隠れていた海斗は、その衝撃で数メートル吹き飛ばされ、完全に動けなくなってしまう。

容赦のないフギオールは気を失っている海斗の首を掴み、ギリギリと締め付ける。


「……さあ死ぬが良い」


海斗はフギオールの締め付けで朦朧(もうろう)とした意識となり、次第に視界が暗闇に包まれる。

……もう駄目かと海斗は思ったが、空を見上げて太陽を見ると不可思議な光景を目にする。

それは太陽の中にある巨大な眼球がこちらを睨んでいたのだ。


(あいつは……なんだ?)


するとフギオールは異変に気が付き、海斗と同じく太陽を見上げて驚愕する。


「あ……あ……あ……あれは善き者の刺客かっ!」


フギオールは突然手を離したため、海斗は()き込みながら意識を取り戻す。


「違う……違うのだ! 我は決して戒律違反(かいりついはん)をしておらぬ……力を……力を奪うな!」


フギオールの慌てぶりは尋常(じんじょう)でなく、すぐにでもこの場から逃げ去る様子である。

だが遅かったのか、太陽の中に現れた眼球は強烈は光を放ち、その光はフギオールをすっぽりと包み込んだ。


ブォォォ―――ォォォ―――ォォォ―――ンンン!


周囲にハウリングのような騒音が響き渡り、海斗は思わず耳を(ふさ)ぐ。

その音がしばらく続くと、目の前にいたフギオールの体がどんどん(しぼ)み、ついには海斗よりも(はる)かに小さくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ