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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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無私の助け合い

(かしこ)い狼だ、人間が食べられる木の実だってちゃんと分かってる)

恐らく、この森へ狩りに来た人間を観察していたのかもしれない。

互いに顔を合わせて数分が過ぎたが、一向に襲いかかって来る様子もなく、ずっと友好的な態度なので不思議な狼である。

「おまえ、仲間か家族はいないの?」

狼は群れで行動する生き物だ。

しかし、この狼は仲間がいる気配はなく、周囲を見回しても家族すら存在しない。

「……一匹狼ってやつか」

狼をよくよく見ると、全身の毛が真っ白で、森の中でも非常に目立つと思われた。

神々(こうごう)しさすら感じる風貌(ふうぼう)だが、自然界ではこの毛並みが不利に働くかもしれない。

「目立つから仲間外れにされたのかな? 僕を助けたのは寂しいからとか?」

そんな心の内を見透(みす)かしたかのように、狼はブフォン! と一度だけ鼻を鳴らすと、付いて来いという感じで森の中を歩き出した。

ロハンは慌てて狼の後を追う。

そしてしばらく歩くと、大人が入れるような横穴が現れ、狼はその中へ入るようロハンに(うなが)した。

(助かった……ここなら安全に休むことができそう)

狼のことを全面的に信用したワケではないが、体の痛みと疲れが(ひど)いため、ロハンはすぐにでも休みたい心境であった。

もう食われてもいいやと思いながら、穴の中へ足を踏み入れると、獣の骨のようなものが地面に落ちていたが、人間の骨は見つからなかったため、ロハンはホッと胸を撫で下ろした。

その安心からか、急に倒れるように眠ってしまう。


――五時間後。


ロハンは慌てて目を覚まし、周囲を確認すると、(そば)では先ほどの狼が寝息を立てて眠っていた。

「……すっかり眠ちゃった。この狼も全然僕を襲わないし、久しぶりに安心して寝ることができたな〜」

しばらくは、この狼と一緒に暮らすことになるかもしれない。

逃げることも考えたが、すでに外は夜だし、暗闇の中を歩き回るのは無謀(むぼう)とも言えるだろう。

(この狼……ホントに警戒心がないな。僕だけ特別なんだろうか?)

そんなことを考えながら、狼の寝ている表情を見ていると、怖い動物であるはずなのに、なんだか可愛いとすら思えるようになった。


――そして三ヵ月が経過した。


ロハンと狼はすっかり家族となり、毎日の日課である狩りへ一緒に出掛けた。

狼は研ぎ澄まされた嗅覚で、遠くに隠れている獲物を捕捉(ほそく)できる強みがある。

一方で、人間には道具を使いこなす知識があるため、縄張りにいくつか罠を仕掛け、ロハンは捕まえた魚などを食べて生活していた。

お互いに良きパートナーとなり、この三ヵ月間は無難に過ごすことができ、ロハンの脅威(きょうい)となる村の者や原生種に襲われることもなかった。

「よしよし、今日はウサギを一匹と魚を三匹捕まえたよ! 焼いて一緒に食べよう」

ロハンは狼にそう告げると、狼は嬉しそうに一度だけ吠えた。


――だがその時である。

背後でパキリと木の枝が折れるような音がした。


あまりに小さい音だったため、ロハンは気付かずにウサギを肩に抱えて立ち上がろうとしたが、次の瞬間、鋭い痛みが後頭部(こうとうぶ)に走り、そのまま気を失ってしまう。

異変に気付いた狼は、すぐにロハンの近くまで駆け寄ったが、何故か彼の姿は消えていた。

狼はロハンの(にお)いを頼りに探そうとするも、いくら地面を()いでも匂いの痕跡(こんせき)が完全に消えている。

まるでロハンを(つか)んだまま、その場から空へ飛び去ったような不可解さである。

だが狼は(あきら)めず、必死で周囲の匂いを確認すると、獣のような異質の匂いを感じ取ったため、その痕跡を辿(たど)りながら、森の奥へ向かって駆け出した。

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