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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第九章 ロハン・カムダウル 10歳
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狼と少年

「はあ……はあ……はあ……!」


息を切らしながら全力で逃げたロハンは、低く(かが)みながら(くさむら)の中を走り続ける。

どうやら男を食らった原生種は追って来ないようで、恐らくロハンを探している村の者たちを襲っているのかもしれない。

しかし安心はできず、なるべく遠くへ逃げたいのがロハンの本音であった。

(こんなところまで村の人たちは追って来たのか……もっと遠くへ逃げないと、また捕まっちゃう!)

……そんなことを考えていると、突然、地面を踏む感覚がなくなった。

「あっ!」

叢を抜けた先に崖が現れたため、勢い余ってロハンは真っ逆さまに落ちてしまったのだ。

「うわあああああぁぁぁぁぁーーっ!」

ロハンは叫んだが、どうすることもできない。

だが、落ちた先が幸いにも川だったので、水がクッションとなってロハンは助かった。

そして、水面から顔を出して泳ごうとしたが、思ったよりも流れが速いため、しばらく流れに身を任せるしか方法がなかった。

(うわぁ、すごい流れだ。とても泳ぐことなんてできないぞ)

ロハンは溺れるように流されていたその時、運の悪いことに、前方から浮いている巨大な大木が近付いて来た。


ゴン!


大木と思い切り衝突(しょうとつ)したロハンは、頭を強打して、そのまま気を失ってしまう。


……。

……。

……数時間後。


ロハンは川岸で目を覚ました。

「うっ……くっ!」

フラフラとした足取りでなんとか立ち上がり、周囲を警戒しながら、近くの岩に腰を下ろす。

「よ、良かった……生きてるみたいだ」

強打した頭を(さす)ってみたが、コブができただけで深い傷はなさそうである。

(ここは何処だろう? もう人が住んでいる場所に戻れないほど、森の奥の奥へ来ちゃったのかな)

あまりの寂しさでロハンは泣きそうになったが、いつまでもグズグズしていられない。

森の更に奥地ということは、原生種の巣窟(そうくつ)に飛び込んだに等しいため、一刻の猶予(ゆうよ)も許されない状況である。

(もうすぐ夜だ……隠れられるような洞穴(ほらあな)を見つけないと)

そんなことを考えていると、背後で草木が揺れてガサガサと音が鳴った。

「だ、誰だっ!」

ロハンは慌てて身構えたが、見ると正面に立派な狼が一匹、こちらを(にら)んで立っていた。

(そんな……お、狼だ……)

その狼を見て、どうやら自分の命もここまでらしいとロハンは覚悟する。

少しでも動けば襲い掛かって来る可能性があり、首元を噛まれて一瞬で殺されてしまうからだ。


――だがしばらくすると、狼はゆっくりロハンに近付き、(くわ)えていた木の実を地面にパラパラと落とした。

「……えっ?」

ロハンは不思議そうな顔で狼を見つめる。

「もしかして食べ物をくれたの?」

狼は黙っていたが、ロハンが警戒心を解いたことは理解したようである。

あまりにお腹が空いていたロハンは、すぐに木の実を頬張(ほおば)ると、一気に胃の中へ流し込んだ。

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