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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第七章 八重野奈波 17歳
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東京と大阪

(とりあえず、二人と会話を合わせよう。大阪へ来たのなら好都合だ、メモヴェルスの欠片を探すことができるし)

奈波は二人と一緒に大阪旅行を楽しむことにした。

そしてメモヴェルスの欠片を探すため、周囲の歩行者に意識を向けながら大阪の街を散策(さんさく)する。

(う~ん、東京へ出張に来たサラリーマンは何処に勤めてたんだろ? 大阪の中心街でメモヴェルスの光に触れた人を見掛けないし、違う地域に落ちているのかな)

奈波は大阪の地理に詳しくないため、千里にこれから何処へ行くのか聞いてみる。

「ねえ千里、これから何処へ行くの?」

「せっかく来たんだし、吉本新喜劇でも観ようか。それから、アメリカ村とかも行ってみたいな」

「あんまし大阪に詳しくないんだけど、かなりの都会だし、高校生3人がブラブラ歩いても大丈夫なの?」

「何それ、物騒(ぶっそう)だってこと?」

「うん、まあ……」

「それなら安心しといて、あそこにマッチョな男の人が立ってるでしょ」

奈波は千里が指差した方向を見ると、サングラスをした体格の良い男性が、建物の陰からこちらを(にら)んでいた。

「だ、誰よ?」

「私のお父さんが警察の偉い人だから、腕っぷしのいい人を呼んでくれたんだよ。ボディガードってやつ」

「それは凄いな……」

「さっきも道頓堀の橋の上で30代くらいのオジサンに声を掛けられたけど、あの人に捕まって軽くボコられたみたい」

千里の言う「軽く」の程度は分からないが、ボディガードがいれば確かに安心ではある。

しかし、常に監視(かんし)されているため、不審(ふしん)な動きをすると怪しまれそうだ。

(これだと、二人と一緒にメモヴェルスの欠片を探すのは無理そう。でも繁華街(はんかがい)で見つからないし、大阪の郊外へ行く必要があるから困ったな……)

奈波はしばらく考えたが、やはり二人から離れて単独行動することに決めた。

(二人とも、ゴメン!)

心の中でそう謝ると、奈波は二人の目を盗んで反対の方向へと歩き出した。

そして、人混みに紛れながら小さな路地へ足を踏み入れ、物陰へ隠れて二人をやり過ごそうとする。

(よし……()いたみたいだ)

奈波は周囲を確認しながら表通りへ出ると、近くにある地下鉄を目指して歩き出そうとしたが、急に誰かに腕を(つか)まれてしまう。

「どうしました? 一人で行動するのは危ないですよ」

見ると、先ほど見たボディガードである。

「あ、あの……ちょっとこっちに用があったんです」

「ダメダメ、そんなことしちゃ。もしお嬢さんの友達に何かあったら、私の責任になります。二人と一緒に行動してください」

ボディガードの男は、奈波の手を引いて二人が歩いている場所まで戻ろうとした。


「ぐわっ!」


――だがその時、男の頭部から鋭い刃物のようなものが突き出し、凄惨な光景を見た歩行者は次々と悲鳴を上げ、一目散(いちもくさん)にその場から逃げ出した。

そしてボディガードの男は地面へ倒れ、二度と起き上がることなく絶命する。


「……やれやれ、連中の酔狂に付き合わされるのは御免被(ごめんこうむ)る」


背後で声がしたため奈波は振り返ると、そこには二本のレイピアを手にしたソルトニスが立っていた。

「おまえは……確かソルトニスと名乗った刺客だな」

「左様でございます。どうですか進捗(しんちょく)は? メモヴェルスの欠片は見つかりましたかな?」

「おまえが隠したんだろ! これから探すところだ」

「そうですか。では、面倒なので種明かしをしましょう」

ソルトニスは、懐からメモヴェルスの欠片である一枚のカードを取り出す。

「それは……メモヴェルスの欠片じゃないか! おまえが持っていたのか」

「その通り。これで見つからない理由が分かったでしょう、私が隠し持っていたからですよ」

ソルトニスはギャハハハと耳をつんざくような笑い声を上げ、奈波は思わず手で両耳を(ふさ)いでしまう。

「おや、これは失礼。私の声は10km先まで聞こえるほどの音圧ですからね。さぞかし(うるさ)かったでしょう」

「それを返してくれ。善き者も悪しき者も、メモヴェルスの欠片を所持することは戒律違反(かいりついはん)だったはずだ」

「左様。我々がメモヴェルスの欠片を手にするのは立派な戒律違反です。では、お返しいたしましょう」

ソルトニスは、手に持っていたメモヴェルスのカードを奈波に渡す。

「ずいぶんとすんなり渡すんだな。おまえの(たくら)みが読めない」

「企みだなんて……そんな大袈裟(おおげさ)な。単に時間(かせ)ぎがしたかっただけですよ。貴方がすぐに穂積海斗とコンタクトして、イーテルヴィータを確定するのは困りますからね」

「時間稼ぎだと?」

「ええ。お陰様で穂積海斗が死んだ回数が49回に増えましたぞ」

「49……? 前から聞きたかったが、この回数に意味はあるのか?」

「もうすぐ思い知りますよ。では、貴方を東京へ転送しますから、すぐにでも穂積海斗と会ってくださいまし」

ソルトニスは、目を閉じて呪文のようなものを叫ぶと、周囲の光景がグニャリと(ゆが)んで奈波は軽いめまいを起こす。


(大阪へ飛んだ時と同じだ……こいつがやったんだな!)


奈波は軽く頭を振って正気を取り戻すと、歪んだ景色は治まり、いつの間にか海斗の自宅前で立っていることに気が付いた。

「えっ……!」

見ると、海斗の家は炎で包まれている。

驚いたことに、家の中から叫び声のようなものが聞こえたため、おそらく人が残っている可能性が高いと思われた。

奈波は一瞬狼狽(うろた)えたが、すぐに頭を切り替え、炎の中に飛び込んで家の中を探そうとする。

「誰か! 誰かいますかっ!」

大きな声で呼んだが、返事はない。

ハンカチで口を押さえながら廊下を進むと、床に海斗らしき男が倒れているのが見えた。

「海斗っ!」

奈波は気を失って倒れている海斗を抱き起こし、何度も名前を呼んだが、一向に目を開ける気配はない。

「そ、そうだ! イーテルヴィータを確定すれば、超人的な力を取り戻して助かるかもしれない!」

すぐに懐からメモヴェルスのカードを取り出すと、海斗の手の平に置いてしばらく様子を見る。

そして1分後、閉じていた海斗の目がゆっくりと開いた。

「おい、しっかりするんだ! すぐにここから逃げるぞ!」


――しかし。


「うわああああああああああ―――っ!!」


海斗は目を覚ました途端(とたん)、狂人のような叫び声を上げた。

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