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夫婦別姓  作者: 双葉紫明
ひかるの場合
1/3

 まただ。

 何で?

 シラけた空気、みんなの白い目。

 笑うでしょ?普通。

 みんながクスリともしない方がおかしい。

 それとも、わたしひとり、どうかしちゃったのかしら。

 彼が転校してきたその日から始まって、今に至る。

 その度人格を疑われるもんだから、わたし、彼の居ないとこで暮らしたい。

 どおしてかな?

 彼が、超イケメンで、優しくて、勉強もスポーツも出来る、絵に描いた様な王子様キャラだから?

 お金持ちで、お金配ってそうしてるんじゃないかしら?

 困った事に、彼とは中学から大学まで、そして、就職先のその部署まで一緒だ。

 しかも、隣のデスク。

 モニタリングされて、全世界に放映されてるんじゃないかな?

 そんな風にさえ思っちゃう。

 だから、その瞬間は不意に何度も訪れる。 

 課長が「ハゲヤマ、ちょっと一瞬ズラしてみてくれないか?これ。悪いな。」

 表情を変えないその下で、腹筋が引きちぎれそうだ。

 さすがにしゃっくりみたいなへんな音が微かに。

 ほらまた、みんなの白い目。

「どうした?白石、具合悪いか?」

 八景山房雄。

 彼の名前。

「う、うん、だ、いじょ、、ぶ」

「ハゲヤマ!おまえ、ピカ一だ。今月の成績!」

 係長が真顔で畳み掛ける。

「すげー!ハゲ、光ってるう!」

 同期の宮崎まで。

 もう、限界だ。

 ひゃ、ひゃ、ひゃっ

 ナメるなよ。

 この10年近くの苦行に耐えて来たわたし、表情筋と腹筋や声帯の連携を断ち切る事に成功したのだ。

 無表情に、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ

 ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ

 ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ

「白石さん、大丈夫?」

 福田先輩。

 みんな発作だと思って心配する。

 それでもあの白い目よりはましよ。

 気味悪がられて、彼氏も出来ない。

 わたし、ブスな方じゃないのに。

 ぜんぶ八景山くんのせいだ。

 責任取ってよ!

 たぶん八景山くん、わたしの事好きだ。

 結婚、いやいや。

 そしたらわたし、一生この地獄を生きる事になるわ。

 わたしも八景山くんが好きだ。

 かっこいいし、かわいいし、優しくて色気もある。

 抱かれたいとさえ思う。

 彼がわたしの事好きなんて、天にも昇るわ。

 告白めいたのは、された。

 だけど、ダメよ。

 ダメなの、それだけは、絶対ダメ。

 だって、わたしの名前、白石ひかるなんだもん。

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