突然、魔王になるように言われた...
「はぁー、今日も疲れたなー」
「おう、今日もお疲れ。後は引き継ぐから、先に上がって。」
「了解です、では、お言葉に甘えて…お先に失礼します!」
今日も中々の激務だったが、何とか仕事も終えて、帰宅の途に就く…
「さて、今日も帰ったら溜め撮りしている番組みるぞー!」
と、その前に、溜め撮り番組のお供となるものを買いにスーパーへ
「さて、今日の特売はなーにかな?」
いつも通り自宅の最寄り駅近くのスーパーで、タイムセールの物色をしている…
「確か味噌と醤油がなかったなー、それとお買い得の卵もこの分で行けそうだから…それと、やっぱお酒だよな~、ノンアルだけど…雰囲気だけでもだからな。今日は、おつまみも買っていこう…」
そう、今日は、金曜日、いわゆる花金だ。
俺こと、一宮翔太の密かな楽しみの一つ…あまり外食をしないので、普段から宅飲みがメインだ…
そして、おつまみもいつもは出来合いの物だが、今日は晩御飯のおかずついでに唐揚げと芋でも揚げて、冷奴と冷やしキュウリに、みそ汁と家で余っているキャベツ辺りで決めようかな?今から楽しみだな♪」
と、色々考えて早速、半額シールが付いている物を中心に買っていく…そう、せっかくの料理だがなるべく抑えておきたい…たまには豪遊したいのだが、ついついここでいつもの買い物の癖で、シール商品を買ってしまう…
そうして、買い物ミッションをいつも通り満足いく買い物が出来た。
帰宅後、早速取り掛かる…芋は、ジャガイモをシンプルに素揚げする形に…鶏肉は、ニンニク醤油と、もう一つ、コチュジャン等で味付けしたピリ辛にすることに…
「うわぁ~、芋だけでも、ノンアルの梅酒で流し込みたい…それに今日は梅酒以外にも、レモン、ホワイト、カシス…最近のノンアルは種類豊富になったなー。」
と、揚げ物をしつつ、他の当ても並行して調理していく…
もうそろそろで、料理が完成するところで、インターフォンが鳴る…
ピンポーーーン
「ん?この時間に誰だろう…。はーい、どちら様ですか?」
「あのー、すいません、一宮様のお宅でしうか?」
「は、はい、そうですけど…どちら様でしょうか?」
「私、貴方に合うように伝えられたリーンというものなのですが…」
(リーン…そういや、どっかで…ゲームのキャラの名前にそんなキャラの名前がいたが…気のせいだろう…)
「名前を名乗ってもらって申し訳ありませんが心当たりが…」
「そ、そうですよね…は、クション」
「今日は少し冷え込みますもんね、中で続きは話しませんか?あんまり知らない人を上げるのは良くないですが、流石にこんな寒い日ですし…」
と言って、俺は、いきなり訪問してきたリーンという女性を家に招き入れることに…天気予報では、今日は普段の季節に比べ少し冷えるみたいと言っていた。そして今の時刻は22時を過ぎたところ…
最近は色々と物騒なのもあるので見ず知らずの人だが、朝まで位なら家に泊めてあげてもいいだろう…そう考えていた俺だが…まさかこの後とんでもない展開になるのも知らずに…
俺は、台所で、客人用に熱い緑茶を入れていると…
「突然押しかけるようなことをして申し訳ありません。」
「いえいえ、にしてもなんでこんな夜遅く…って、え?」
そう、俺の目の前には、現実世界では見たことない光景が…
「すいません、それはコスプレですか?」
「い、いえ、これは本物ですよ?触ってみますか?」
人間の耳とは違う耳が付いている、しかもモフモフだ…
そして、フードで隠れていたが、これまたフワフワのしっぽまである…あれ?ここは、ゲームの世界じゃないよな?と一瞬疑った…
「まぁ、最初見た人はそう反応しますよね、これはコスプレではありません、本物の耳としっぽです。そして、私は、この世界とは別の世界から来たものです。」
「は、はぁ…」
いきなりそんな非現実なものを言われてもなんて返していいか…そして、困惑する姿を見て…
「まぁ、最初はそんな反応しますものね、申し訳ありません。」
「い、いえ、こちらこそ。あ、粗茶ですが…緑茶でよろしかったのでしょうか?」
「まぁ、緑茶は大好きなんです♪ありがとうございます。」
リーンは、俺が出したお茶をすする…
「ふぅー、やはり緑茶は落ち着きますね。っと、まったりした所で、改めて自己紹介をしますね。私は、アルバトール公国の外交官、リーンと申します。御覧の通り、獣人族です。」
「私は、一宮翔太です。会社員です。」
「では、翔太様、単刀直入に言います。翔太様、貴方様に魔王をしてみませんか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「へ?魔王…ですか?」
「はい…魔王です。」
どうやら、リーンは冗談でもなく真面目だった…
「魔王って、あの…悪い…?」
「いいえ、貴方様の世界観での魔王とは違い、こちらでは、魔王は良い方なのです。魔王様は様々な方と友好的な関係を築いているのですが…最近は、仕事量が増加してしまい、さばききれなくなってきておりまして…そして、魔王様が…たまたま、見かけた翔太様に目を付けたのです。」
「なんで、俺なんでしょうか?」
「それはですね…」
「そ、それは…」
「勘です♪」
「勘かい!」
「あら、するどいツッコミありがとうございます。」
「で、本当の理由は?」
「実は、選定をしていたところ、たまたま翔太様が目に留まり、魔王様が一目会ってみたいとおっしゃったので…」
「それは、ありがたいのですが…会社員なんですけど…」
「翔太様、最近お仕事お疲れではないでしょうか?」
「た、確かに…ここん所業務的には、しんどくなってきたような気が…」
「そうなんですね、私たちがお助けしましょうか?」
「助けるとは一体…?」
俺は興味本位で聞いてみようと思った。今の職場には不満があるとすれば…仕事量に尽きるかな。
人間関係でのトラブルは特にないが…なんせ自分に回ってくる量が中々の量で、ここ数日は残業も続いていた。
「私たちと一緒にお仕事をしませんか?いわゆるヘッドハンティングってやつですね。」
「ヘッドハンティングですか…因みに内容は…」
「実は…翔太様には、魔王になっていただきたいのですが…」
「ほう、魔王ですか…って、ま、魔王!?」
「良いリアクションですね、流石ですね。そうです、正確には代理という形にはなります。」
「魔王の代理とは…?何か事情が?」
「そうなんです、魔王様の仕事量が増えてしまい、魔王様や配下の皆様、私も含めて色々適任の方を探しておりました所…翔太様のお姿を拝見しまして、魔王様が是非一度お会いしたいと…」
「何で俺なんでしょうか?適任する方何か他にもいるはず…」
「まぁそこは魔王様です、何をお考えなのかは私には分かりませんが、きっと翔太様には何か良いものを持っているのかも知れませんね。」
「そうなんですね…でも今の会社もあるので…」
そう言って貰えるのは、嫌じゃないが…会社員の俺には、中々厳しい…
「そうですよね、では、こう言う形ではどうでしょうか?異動やヘッドハンディングとかならどうでしょうか?」
「ふむふむ…でもそんな簡単に…出来るものでしょうか?」
「はい、私たちの力を使えば、問題ありません!」
自信を持って言ったリーンさん…でも一体どうやって?
「そうですね、その辺は、他の人を交えてお話ししないといけませんね、それに、職場も見てみたいと思いませんか?」
「そ、そうですね。いきなりOKの返事は出来ませんし、知らない所に行くのも勇気が…」
「それはごもっともです、翔太様。では、まずは職場見学といきましょうか?引き受けてもらえるかはその時にでも良いかと。と、ちょっと連絡しますね。」
そう言うと、リーンさんは、携帯を手に何処かに電話をかける…
しばらく、リーンさんが相手と確認を電話をして…
「翔太様、お待たせしました。今、魔王城と連絡をしまして、明日行けるか確認を取っておりました。許可がおりましたので明日、改めて職場…もとい魔王城に向かいましょう。」
色々とトントンと話が進んでいったが…どうやら明日、俺は魔王城に行くみたい…他人事みたいに言うが、いきなり過ぎて考えが追いつかない…魔王城ってあの異世界作品では定番のあの魔王城…何で俺が選ばれたのかも魔王様の意図も分からず、色々とツッコミたいことは山ほどあるが…まずは明日その魔王様とやらに会えるかも知れない…しかし得体の知れない場所へ行くのは、怖いな…
「ちなみに何ですけど、この場所はご存知でしょうか?」
そう言うとリーンさんはスマホの画面を見せる、画面には地図アプリが映っていた…
「え?この場所って…」
何と場所は会社が入っているビルのお隣だった…
「まさかご近所だとは…」
「あら、私も翔太様がお隣のビルにお勤めだったとは…偶然ですね。では、明日とか言いましたが、週明けの時でも合わせましょうか?翔太様のご都合に合わせますわ。」
「うーんそうですね、でも、明日はお出かけする予定がありますので、そのついでにでも宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません、お手数をおかけいたしますが、では、今日は、そろそろお暇いたしますね…クシュン!?」
「今日はもう遅いので、良かった家で泊まって行きませんか?風邪を拗らせてもいけませんし…(ってこんなのいきなりこんなの言って大丈夫なのか!?)」
「え?宜しいのですか、いきなり来た私を?何の疑いをせずに?」
「そんな、疑ったりはしませんよ、今までのやり取りを見ても、何も悪者に見えるような素振りも無かったですし、どう疑うって言うんですか?」
「ふふっ、それもそうですね♪では、お言葉に甘えまして、お世話になりますね。」
こうして、なんだかんだで新たなフィールド?で戦う事になりそうな…一体どんな事が待ち受けているのか…でも、まずは、この状況を乗り越えなくては、初めて女の人を部屋に入れて一晩を過ごす状況に…