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チンチラクエスト  作者: 鈴葉
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遠方より来る影、あり。

その日、ファスタの村の入口に影がさした。

そもそもここは旅人なら必ず通る村。

次の村まであとわずか、というところなのだが、何故かこの村に訪れる者は装備や手持ちが心許なくなっているので、通りすがる事はなく、買物をしていくことが多い。

意味もなく村人に話しかけ続ける者もいる。

そんなこの村に誰かが訪れるのはいつもの事ではあるのだが、それでも普段とは異なるような気がする。

「よう!ここはファスタの村だ!のんびりしてて、いい村だから、ゆっくりしていきな!」

「…急にどうしたの~?かど丸君~?」

「ん~?いや、なんだか言わなきゃいけないような気がして」

「旅人さんがくると、かど丸君率先してご挨拶してくれるよね!」

「それが僕のお仕事なんだぞ!」

「えら〜い!」

ぽかぽかといい天気で、のどかな村は今日も平和だ。

せっかくご挨拶したというのに、それで満足したのかかど丸、ピックロ、ポコリは3人でわちゃわちゃしている。

「ここが…ファスタの村でちか…とうとう…辿り着いたでち」

やや濃い目のスタンダードグレーの毛並み。

きゅるんと丸い瞳の可愛らしい顔をしているが、どこか油断ならない空気感を醸し出している彼は、脇に見慣れぬ形の刀を差している。

冒険者でも、騎士でもない。独特な雰囲気がある。

「僕の感覚だと近づいて来ている気がするでち。きっとこの国のどこかに…」

「ややっ!旅人さんでぷね!めっずらしい〜☆」

スタンダードグレーの彼は突然目の前に現れた者を睨めつける。

「お主…なにやつでち?」

(気配に敏感なはずの僕が気付けなかった…一生の不覚でち)

「ぼくちん?ぼくちんは、『しらす』っていうんでぷ!よろしくでぷ☆」

くるりと一回転をして敬礼のようなポーズをした、モザイクカラーの彼、しらすは陽気に自己紹介をする。

そのあっけらかんとした空気に、暗器を飛ばす事をやめた。

「君は?」

「僕は…」

思わずいつものように偽名を名乗ろうとして、この国ではわざわざそんな事をする必要がないと思い返す。

何より自分の名前があちこちに伝われば、いつか探し人まで辿り着けるかもしれない。

そう思い、久方ぶりに自分の名を名乗ることにした。

「僕はマーロウでち。東の國から人を探してやってきたんでち」

「へぇぇぇ〜!?東の國だって!?名前しか聞いたことがないようなところでぷ☆ずいぶん遠くから来たんでぷね?」

「そうでちね…この大陸の東の端っこ…陸の孤島のようなところにある國でちからね。意外と旅をしてみたらそんなに距離があった気がしないんでちが」

「そんなものかもね☆ぼくちんも姉弟の為にあちこちに仕入れや営業に回ってるんだけど、いつか東の國とかもっともっと遠くにも行ってみたいんでぷ☆」

しらすは軽い話し口調の割にはかなり真面目な青年のようである。

「姉弟の為に…偉いでちね。じゃあ…今も遠くに離れて…」

「いんや、隣村にいるでぷ☆走れば半日☆」

「僕の気持ち返してほしいでち」

「え〜?なんでだよぅ☆たまたまこれから帰るところなんでぷよ!早く会いたいんでぷが、どうしてかこの村の近くまで来ると薬草とか持物が心許なくなるんでぷよね…買物してさっさとドゥーブルに帰るでぷ☆」

「僕も先を急ぐでち。買物して移動するでちかね」

「あぁそれならあそこの雑貨屋さんに行けば大概のものはあるでぷ☆」

「それはかたじけないでち。では…」

「良かったら隣村まで一緒に連れてってあげるでぷ☆というか、うち、お宿なんだけどお風呂とスープが売りなんでぷ☆これから移動したらちょうど夕方だし、泊まってくといいでぷ!」

「…本音は?」

「珍しいお客さんだし、一泊してお金落としてってほしいでぷ☆」

「くふふふ。素直な君には負けるでちね。じゃあ…お言葉に甘えるでち。急がば回れでち」

「え〜?なぁにそれ☆」

「なんでもないでち。さ、さっさと買物して移動するでちよ!」

ここ最近塞ぎ込んでおり、どこか張り詰めたままの彼は、少しだけ力を抜くことができた。

自分ながら珍しいが、それでもそれが彼の才能かもしれないと思った。

「しらす氏は営業や接客に向いてるでちね」

「え〜?ほんと〜?照れるでぷ☆弟からはたまに怒られるんでぷけどね〜」

「…?普通兄や姉から怒られるんじゃないんでちか?」

「ん〜最終的に怒らせたら怖いのは姉ちゃんだけど、普段怒るのは弟でぷ☆」

「ほ、ほう…」

姉弟関係にちょっとだけ興味がでてきた。

(我が友…早く…会えまちように)

昼間の見えない星に祈りを込めて。

次の村へとマーロウの心は逸るのだった。




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