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チンチラクエスト  作者: 鈴葉
32/41

とあるカフェにて(五)

ドン、と眼の前に置かれた、期間限定すぺしゃるパフェが四つ。

目線の高さまであるパフェなんて初めて見たでち。

可愛らしい見た目とは裏腹に、お値段はかなり可愛くない。

でもそれに見合うだけの新鮮なフルーツ、そのフルーツを使ったベリー系のソース、アイスクリームに生クリーム、ヨーグルトも入って甘い中にも酸味を程よく配置。中にはコーンフレークやウェハース、薄焼きクッキーなど、冷たさで味を感じにくくなった舌をリフレッシュする役割のお菓子も入っていて、光を受けてまるで宝石のように輝いている。

マスターの作った物でち。

見た目だけでなく、味も絶品に違いないでち。

なるべく表情に出ないように必死だけれど、中々味わう機会のないスウィーツにどうしても心が逸ってしまう。

けれど、あたちは貴族でち。

貴族としてのマナーもあって、どう食していくか…

「うまぁ〜〜〜いっ!!」

「ん〜!!お、美味しいでしゅ!スター君!美味しいでしゅよ!?冷たくてふわふわで甘くてちょっと酸っぱくて苦いのもアクセントでサクサクパリパリで…美味しいでしゅよ!?」

隣でピノちゃんとスターさん?が歓声を上げている。

二人とも目がキラッキラでち。

まるで犬が尻尾をぶんぶん振ってるかのように…

いや待って、振ってた。実際振ってたでち〜。

…イヌ?イヌって…何だったかしら?

…まぁ遠くの大陸なら、そんな尻尾を振る種族もいるでしょうね。

ピノちゃん…よだれが垂れそうな勢いでち。

淑女としてこれは…。

そっとハンカチを渡そうとして、ちょっと考えてテーブルの紙ナプキンを渡した。

あたちのハンカチは生クリームを拭くためのものではないでちからね。

というか、一枚では足りなさそうだったからってのもあるでち。

スターさんも口の周り真っ白に、所々赤いソースが付いてまちが、汚しながらも、それでも美味しそうに次々とスプーンを口に運んでまち。

「早くしないと溶けるでしよ?」

向かいのぐりさんが目でも食べるよう促す。

初対面の男性の前でパクつけというのだろうか。

でも…パフェはとてつもなく美味しそうでち。

ぐりさんは、迷うあたちの目の前で、パフェのてっぺんの生クリームにソースがたっぷりかかって銀の装飾のようなアザランにカラフルなフレークやカラースプレーをまとった一番美味しい部分を大きくスプーンですくい、大きく開けたお口でパクリと食べた。

直後のにんまりした顔!!

「ぁあ!?」

こ、声が出ちゃったでち…恥ずかしい…。

多分耳も赤くなってたと思うけど、そこにぐりさんが追い打ちをかけてくる。

「美味しいでしなぁ〜これは東ノ國でも味わえない甘味でし!マスターの腕がいいんでしなぁ〜」

ぐ、ぐぬぬ、ぐぬぬぬ…。

「ぐりたちは平民でしからね、マナーとかお行儀とかわからないでしが、同席している人達が不快にならないようにするのがマナーなんじゃないんでしかね?食事は作ってくれた人に敬意を払って美味しくいただければよしって思うでし。逆に言えば気にしないような事を頑なに守る必要はないでし。あ〜ウマーでし!!」

男の子なのにほっぺた抑えてなんか可愛いポーズしてるでし!

ピノちゃんはキラキラおめめが治らなくてスプーンも止まらないし、スターさんは大きいパフェグラスに顔を突っ込む勢いで食べている。

…不思議と不快にならない。

いつものお茶会ならばきっと眉を顰めてたのに。

でも、今は皆でそうやって頂くのがきっと美味しい食べ方!!

も、もうダメでち!

ここにはマスターと彼らしかいないんでちものね!

ここは覚悟を決めて…。

恐る恐る生クリームのてっぺんにスプーンを差し入れる。なんの抵抗もなく入ったスプーンを持ち上げると、それでもそこにある重量に、存在感を感じる。

どうしよう…思わずこんもり取ってしまった。

戻すことも躊躇われるし。

これは、行くしかない。

スプーンに盛ったクリームがはみ出さないように大きく口を開けて一気に頬張る。

途端に冷たかったクリームが口中で温度を取り戻してなめらかに溶けていく。

その甘さにフルーツの香りと、酸味を与えるフルーツソースと、ほんの少しのチョコレートがアクセントになっている。

カラフルなトッピングがカリッと歯ごたえでも彩ってくれる。

「ん〜!!!!」

思わず自分も頬を抑えて目を閉じてうっとりと堪能してしまう。

他のフルーツもどんな味わいなのか気になって立て続けにスプーンを口に運び、都度うっとりと咀嚼をしながら堪能していたけれど、ふと気付くと三人がニコニコしながらあたちの事を見ていた。

慌てて顔を伏せて口をハンカチで拭っていると、ピノちゃんが声をかけてくる。

「美味しいでしゅよね〜」

「美味そうに食べてくれると奢りがいがあるな!おかわりもいいぞ!」

「流石パフェを食べても品があるでしね」

「美味しいでちね、ピノちゃん。おかわりは流石に食べられないけれど、本当に美味しいでち。ありがとうございまち!ぐりさん嫌味でちか!?」

大口開けてたのに。

「スター君をみるでし。なんでおでこにクリームがついてるんでしかね?ってぐりもほっぺたについちゃってたでしが」

ペロリとピンクの舌を出して口周りを舐めてる…。

男の子達って…。

でも何故か今は下品とか思わなかった。

不思議でち。

「美味しいもの一緒に食べると、仲良くなれるでしゅ。これでポッセちゃんも、スター君とぐりたんとお友達でしゅね」

「…そうでちね」

いつもなら出ない素直な言葉がポロリとこぼれた。

ちょっとパフェに酔ったのかちら?

恐ろしい実力者達なのに、無邪気にあたちと同じものを食べて、同じように美味しいって言って、あたちと変わらない同じなんだって思ったからかもしれない。

「よし!ポッセ!我がぐむむぐっ!?」

スター君が急に立ち上がって何かいいかけたけれど、さっとぐりさんが紙ナプキンを丸めて口に突っ込んだ。

えぇ~…。

スター君は負けじと自分で紙ナプキンを口から取り出してたけれど、今度はぐりさんが鼻先で何かをふるような素振りをみせた。

「ばーっしょ!!!パッション!!!」

「情熱的なくしゃみで結構でしね、アイスクリームで冷えたかもでし。ピノちゃん、一度外に連れてってあげてくだしい」

「わかったでしゅ!スター君!さ、お外いくでしゅ。いつものリンゴジュースもあるでしゅよ」

「ピノちゃん…それ毒…パーッション!!」

不穏なセリフを言いながら二人は外に出ていった。

「さ、パフェを食べちゃうでし。美味しいものは美味しい内にでし」

そう言えばと見ると、あれだけあったのに、二人のパフェはとっくに無くなっていた。


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