精霊さんとの遭遇(二)
聖域から抜ける時、なんだかもわんとした妙な感じがした。
行く時は気付かなかったけれど、どうやらそこが現実と聖域と境なんだろう。
後ろを振り返って見たけれど、変わり映えのない、森の中でしかなかった。
「雷蔵ちゃん、ここで右かな?」
「そうでちね。行ってみるでち」
こんななんとなくで探しものが見つかるのかどうかわからないけれど、お告げの精霊さん、つくちゃんが言うんだから、やってみて間違いはないとだろう。
しばらく行くと、木の根本になにか葉っぱの塊があつた。塊?
近付いてみるとそれは…つみりんだった。
なんで葉っぱまみれ!?
「つみりん?何してるんでち?」
雷蔵ちゃんが声をかけたけれど、つみりんは気付かずに葉っぱと戯れてる。
なんだろう。
いじったりむしったり、たまにブワッと葉っぱを巻き散らかしたりしてる。
そりゃ葉っぱまみれになるよね。
「…ぶちぶち。つみりんだってさぁ〜?頑張ってるんでちのにさぁあ〜?いや、楽しいんでちけど?でもさぁあ?ワリに合わないってゆうか〜ぶちぶち」
「ほんとにぶちぶち言ってる子始めてみたねぇ〜」
「つみりん…何をいじけてるんでちかねぇ?」
「…つみりんにはつみりんでなにかあるんだろうねぇ。ぼくらにはわかんない何かが…ちょっと…そっとしといてあげようよ…」
「そうでちね」
しばらく生温い目で見つめていると、数度目の葉っぱだまりにばふんと倒れ込んでもだもだしてるつみりんと目が合った。
つみりんは一瞬固まって、耳やお口の周りがじわじわと赤く染まり、予備動作なくぴょーんっ!と飛び上がった。
「な!ど!あ!な!!」
慌てすぎて何言ってるのかわかんないよ〜。
最初はぼく達を指さしてたけれど、徐ろに葉っぱをわっさり抱え込んで、こっちに走ってきたかと思ったら、投げつけてきた。
「わっぷ!何にも見えないでち!」
「ぺぺぺっ!お口にも入っちゃった!」
僕たちが葉っぱを払って、ついでにくしくししてから見ると、いつの間にか、毛繕いも終わったと思われるつみりんが楚々として立っていた。
「どこに行ってたんでち?探したんでちよ?」
ぼくらがじっとりした目で見てしまうのは仕方ないと思う。
「誤魔化せないでちよつみりん」
「ぎっくぅ!?」
「あ〜…雷蔵ちゃん。こういう時はそっとしとこう。お母さんに教わった。めんどくなるからね」
「よくわからないけれどわかったでち」
流石雷蔵ちゃん。空気が読める男。
さすライ。
「ごめんね、つみりん。ちょっと…ん〜。精霊さん出会ったんだ」
「せ!!精霊さんでちね…そ、それはすごい体験…?したでちね!」
一瞬言って良かったかなと迷ったけれど、特に口止めはされてないし、信用できるメンバーならば教えても良いかなと思って伝えてみたんだけれど…。
つみりんが挙動不審過ぎる。
「どうしたの?つみりん…」
「な!何でもないでちよ?さ、さ!薬草探さなきゃでち!」
右足と右手が同時に出ているけれどどうしたんだろうか。
「変なつみりんでちねぇ。いやぁしかし精霊さんは初めて会ったでちが綺麗だったでちねぇ〜」
「そうだね〜。神秘的と言うか、不思議な空間だったねぇ」
「綺麗??」
つみりんがピクリと反応してぼくらを見る。
さっきまでギクシャクしてたのに。
「精霊さんって淡く光ってて、すごく綺麗だったんだよ」
「な〜!!!綺麗なのはつみりん!可愛くて綺麗で!せくち〜だいなまいつなのもつみりんなの!!」
「お、おん」
つみりん…どうしたんだろまじで。
その後雷蔵ちゃんと二人でつみりんのご機嫌を取って、どうにか事なきを得たようだった。
変なオーラ出しかけてたもんね。
恐怖。
「いや〜しっかし、中々薬草が見つかんないでちねぇ〜♪」
ご機嫌を取り戻したつみりんが頭の後ろで手を組んで(組めてないけど)、後ろのぼくらを見ながら歩いている。
「おはぎさん…らいぞーね、ちょっと女の子が怖くなったでち…」
「雷蔵ちゃん。ぼくもだよ。聞いてたけれど感情の直下型地震は本当に大変だ」
「ごめん。おはぎさんのこともわかんなくなったでち」
「イメージだよ、イメージ」
「もう!何をボソボソ言ってるんでちか!?早く薬草を探さないと宿代が……ぎゃんっ!」
「あ!つみりん!危ない!」
「転んだあとで言っても遅いんでち!!」
まぁご想像の通り転んだよね。
木の根っことか葉っぱに隠れて何があるかわからない森の中を後ろ歩きしてたらそうなるよね。
ん?転ぶ?
「雷蔵ちゃん!!」
「おはぎさん!!」
ぼくらはつみりんに駆け寄った。
つみりんが転んだ周辺に注目すると、草むらの中に沢山の薬草が紛れている事に気付いた。
「探し物!確かに探し物だ!!」
「すげぇでち!こんなに沢山まとまって生えているの見たことないでち!!」
「精霊さんのお告げは本当だったんだね!」
ぼくらは夢中で薬草を摘んでいった。
そのせいで気付かなかったんだ。
つみりんが助け起こしてもらおうと手を伸ばしていた事に。
大量の薬草を摘んでホクホクして振り返ったぼくらが見たものは、鬼のようなつみりんで。
そこからしばらくは、正座をしてつみりんから「女性の扱いとは」を、足が痺れるまでこんこんと説教されたのだった。
でもごめん。つみりん。
正直高度過ぎてぼくらにはできそうもない気がする。
「ほんとに男の子って子供なんでちからぁ〜〜!!!!」




