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チンチラクエスト  作者: 鈴葉
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精霊さんとの遭遇(一)

「よくぞここまで辿り着きましたでち。人の子よ」

「…人って言われると微妙というか…チンチラの子だしね〜ぼくら」

ボソッとぼくが言うと、雷蔵ちゃんもボソボソ言い出した。

「よくぞって…なんかまっすぐ来たら辿り着いたでちよ?」

「あ〜、特に魔物とかもいなかったよね〜」

「精霊さん…綺麗だけど、見た目はそんなにらいぞーたちと変わんないんでちねぇ」

「チンチラの子よ…この泉は選ばれし者だけが辿り着ける聖域なのでち」

「言い直したでち!?」

「選ばれし!?わりと序盤の村にそんな重要な場所が!?」

「…なにを言ってるのかわからないでちが、話を進めてよいでちか?」

あ、やばい。ちょっと精霊さんを怒らせちゃったかもしんない。

優しい笑顔だったのに口の端がひくひくしてる。

というか、威圧感を感じる。

笑顔なのに怖い雰囲気でてる!

「す、すみません!どうぞ!」

手のひら…肉球に冷や汗をかいてじっとりしてしまった。

汗をかくのここなんだよね。

多分この精霊さん…つくねさんはつおい。

逆らわない方がよいと気付いた。

隣を見ると、雷蔵ちゃんの尻尾がへにょんと下がってる。

足元の地面が微妙に色が変わってる…。

足裏からも汗をかいてるようだ。

うんうん。わかる。雷蔵ちゃんも威圧を感じたんだね。

一緒だ。

視線を感じたのか、こちらを見た雷蔵ちゃんに、目を細めて頷く。

雷蔵ちゃんも小刻みにカクカクと頭を動かした。

改めて二人で頭を下げる。

「「精霊さん、すみませんでした。どうぞ(でち)」」

「つくちゃん」

「「え?」」 

「つくちゃんって呼んでもいいでちよ?」

え〜?距離感がいきなり近い。 

ん…なんかこのノリどこかで見たような。

「つくちゃんって呼んでいいんでちか?」

「つくから言ったんでち。だから大丈夫でちよ」

「わかったでち!よろしくでち!つくちゃん!らいぞーでち」

「雷蔵ちゃん強!?あ!ぼくはおはぎです!」 

「二人とも、この泉の聖域によく来ました。歓迎するでち」

「あの、あの、なんでらいぞー達が聖域に入れたんでちか?」

「それを説明しようと思ったら、あれこれ話をされちゃったんでちよね〜」

にっこり、と笑ってるけど、また冷たいオーラ?が出だしたので、ぼくらはもう一度謝って、お話を聞い…伺った。

「つくは、『お告げの精霊』でち」

「お告げ…でちか?」

「そうでち。この世を救う勇者を導く者。それがお告げの精霊の役割でち」

「勇者!?じゃ、じゃあぼくらは勇者なんですか!?」

「それが…わからないんでち」

「わからない?」

「勇者ではないんでちか?」

ぼくとらいぞーちゃんはそれぞれに首をかしげる。

「貴方がたは…いずれ勇者になるかもしれないでちが…」

「ならないかもしれない?」

「そうでち。この世に魔王が誕生すると、対になっているように勇者も誕生するんでち。定期的にではないにしろ、今まではそうだったから、つくも勇者と、そのパーティーメンバーをお告げでサポートしてきたんでちが…今回は…なんだかいつもの違っていて…」

「違う?」

「勇者の気配が希薄なんでち。だからまだ勇者として誕生していないのか、可能性がある者が多くて絞り込めてないのかとか…今までにないことなので、つくもはっきりとした事がわからなくて…気配がある者を感じたらその時々でサポートをしようかと思って探していたんでち」

「ぼくらにはそれがあると??」

「おはぎさんでちよきっと!らいぞーはそのパーティーメンバーでち」

「らいぞー君?貴方もでちよ?」

「らいぞーも?」

「そーでちよ?」

雷蔵ちゃんも、お告げの精霊さん、つく…つくちゃんも首をかしげた。

あ〜なんだろこの可愛い空間。

よだれ垂れそう。ご馳走様です。

ご馳走様じゃないよ!また変な自分が出てきちゃった。

…ご馳走様って…え?食べるのかな?ぼくたちを?

やめてやめてぼくらは美味しくありません!

変な事考えないでね!!

いや、どっちもぼく??

落ち着け!ぼく!

「ぼくらから勇者の気配がするってこと?」

「そうでち。ただそれがさっきも言った、勇者になる人なのか、勇者になる可能性がある人なのか、もしくは勇者の血をひく者なのか。その辺りはつくでもわからないんでち。」

「なるほど…つ、つくちゃん」

「つくにつつかないでほしいでち」

「ちょっと噛んじゃっただけだよ〜!つつかないよ!」

「ならいいでちが、はい、どうぞ?」

「ほくは…ぼくの大切な人たちを村を魔王から守りたいんです。強く、強くならなきゃ」

「おはぎさん…」

「ぼくは、強くなれますか?」

「それは…」

つくちゃんは一度目を伏せると、再びキリッとした顔でぼくをじっと見る。

何を言われるのだろうか。ゴクリと喉を鳴らす。

「わからないでち」

一瞬足の力が抜けちゃった。

「わからないんですか〜」

「あの!完全にわからないとかじゃなくて?今回の魔王出現はイレギュラーが多くて、未来が確定し辛いんでち!だから、こうして面と向かって会えた人には次の目的地とか、レアアイテムを入手するヒントとかそういうのをせめて教えられたらって」

「それだけでちか〜?」

「それだけでも大変なんでちからね!?勇者の気配してる人達めちゃくちゃいるんでちよ?毎回その人達の前に聖域だして現れるの疲れるんでちよ!?未来も確定しないし、ある程度しっかりできるお告げがそれ位でつくだって頑張ってるんでちのに!探して来てってお願いしたあの娘もどこほっつき歩いてるんだかだし!」

やばい!つくちゃんの目が潤んできた!

「わ〜!!!つくちゃんごめんね!大丈夫!ヒントだけでもくれると嬉しい!ぼくたち漠然とした目標しかないから、次に進むべき場所を教えてもらえるだけでもほんと助かる!」

「ご、ごめんでち!精霊さんってすごく万能?強いってイメージしてたんでそんな大変な状況とか知らなかったでち!らいぞーが悪かったでち!!」

何かストレスが溜まってたみたいだったつくちゃんを、ぼくたちは必死で慰めた。

傷つけるつもりはなかったんだよ〜。

「えっと、ちなみに、この泉はここだけしかないのかな?」

「…ここをどこだと思ってるのかわからないでちが、ここはどこにでも繋がってるでち」

「繋がってる…」

「つくと、相手…例えばおはっちたちがお互い必要って思った時繋がってここに来られるでち」

「おはっち」

「おはっちとらいたん」

「おはっちとらいたん」

うん。距離感〜。独特なあだ名つけられてる〜。

でも泣く子と精霊には勝てぬ。

ダブル役満のつくちゃんには勝てないからこれはスルーしておく。

「もしかして、セーブ…記録をここに残したり、回復できたりとかは?」

「よく知ってるでちね。記録というか、ここにいた事を記憶させていつでも戻ってくる言は可能でち。ただし、もう一度ここを出る時は、最後に記憶させた出口にしか行けないでち。で、このお水は飲めば体力と魔力の回復効果があるでち。この聖域じたいも回復効果がすこーしついてるので、ここに一晩もいたら体力と魔力全回復できるでち」

「えーと、ここから王都に向かったとしても、それまでに記憶してなかったら、もう一度ここにきて出てもドゥーブル村になっちゃうでち?」

「そうでちよ」

「記憶の仕方は?」

「泉に祈りを捧げるでち」

「使い所を間違えなければすごい役立ちスポットでちね?」

「今後は勇者の気配がする者には開放する予定でち。まずはそれぞれにご挨拶中なんでち」

セーブポイントと回復の泉だ。なんて便利なんだろう。こまめに記憶させておいた方がいいよね。

「つくちゃん、差し当たってのお告げはある?」

そう質問すると、つくちゃんが目を閉じて淡くひかりだす。

すごい神秘的な光景だ。

「ここを出たら右に折れて少し行って転んだ場所に探しものがあるはずでち」

「転ぶの?」

「転ばないとみつからないでち」

「え〜?」

「運命とはいろんな事象の積み重ねで先が決まるでち。無理に転ばなくても注意しても転ぶ事実は変わらないでちが、お告げがあることにより、そこに探しものがあることに気付けるんでち」

「必然でちか…果たしてどっちでちかね?おはっち?」

「らいたんまでやめてよ〜。どっちにしろ痛くないといいね」

「おはぎさんも呼んだでち」

「ぼくたちは慣れないから今まで通り呼びあお?」

「でちねぇ」

顔を見合わせ、くすりと笑うと、つくちゃんにお願いして泉の水を飲ませてもらった。

見た目は公園の噴水だったけれど、お水は綺麗な湧き水なようで、冷たくて美味しかった。

回復効果もばっちりで、疲れもとれたし体が軽い。

つくちゃんは最後にまた綺麗に微笑んで見送ってくれた。 

ぼくらはお礼を言い、手を振りながら泉を後にした。

また会いに来ることを約束して。

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