いざ!冒険に出発だ!(三)
つみりんと別れてしばらく行くと、木々の間から、少しだけ開けているような場所が見えてきた。
野営地でもあるのかな?
薬草があんなところに群生しているとは考えにくいけれど、なんだかふらふらと惹かれるように近付いてしまう。
雷蔵ちゃんも同じようだ。
先が明るくなっているのはわかるのに、具体的な光景が見えない。
一体どういうことだろう。
途中何か肌にまとわりつくような空気を感じ、その膜のようなところを抜けると、いきなり空気感が変わった。
なんというが肌がピリつくような厳かな空気だ。
自然と背筋が伸びてひげもピンッと張っちゃう。
「…泉??」
目に飛び込んできたのは、清らかな水が湛えられている泉だった。
ん?いや泉かな?
「噴水…があるように見えるでち」
「だよね。真ん中…噴水あるよね。ここ…公園??」
な、わけないよね。
こんな街道を外れた森の中にそんなものがあるわけがないよね。
野営地にしては綺麗だし、誰かが使ったような気配もない。
水源地だろうが?
それにしても…滾々と湧き出る清水があったとして、
湧いている水面は多少盛り上がってるならわかる。
でもこれは完全に噴水。
てっぺんからちょろちょろとお水が流れ出て、その下にお水を受けるお皿みたいなものが三段ついている。
でも泉自体は自然のままって感じで人の手がはいっていない。
なんかお洒落な庭園でありそうなやつ。
この空気感で噴水ってなんかツッコミたいのに、ツッコミ辛い。
なんなんだろここ?
「おはぎさん…らいぞー…気になるんでちが…」
「どうしたの?」
「この水…どこからきてどこに流れてるんでちか?」
「え?湧き水とかじゃ…」
そう言ってから気付いた。
噴水から滾々と湧き出ているのは見てわかる。
でもその湧いて出たお水は、溢れた分はどこに行ってるんだろう?
循環?
こんな自然の中で?
不自然なこの空間に今更鳥肌が立ってきた。
「雷蔵ちゃん!ここ、変だ!帰ろう!!」
「おはぎさん…泉が…」
雷蔵ちゃんを見た時、視界の端に泉が光っているのが映った。
「え?」
ぼや〜っとした光は段々強くなり、やがて噴水も飲み込んで光り輝きだした。
眩しくて目を開けてらんない。
どうしよう。
「これは…何かのイベントでちか!?」
雷蔵ちゃんが何か言ってるけれど、何故か音が遠くに聞こえる。
思わず目を閉じて強烈な光に耐えていると、ふと、光量が落ちたことに気付いた。
恐る恐る目を開けると、噴水のてっぺんの少し上に丸い光が浮いている。
その光る玉の中には、うすーく光る、シナモンカラーの女の子がいた。
額には蒼い石のサークレット、頭から足先まであるような長い薄いヴェールのようなものを羽織、同じような透け感のあるひらひらとした衣装を身に纏っている。
背中にはウスバカゲロウのようなキラキラと光るガラス細工のような羽根が見える。
「綺麗…でちね」
「うん…綺麗だね。まるで妖精さんみたいだね」
女の子は閉じてた瞳を開けると、ぼく達を視界に入れた。
「はじめまちて。待ち人様。私は精霊の、『つくね』と申しますでち」
つくねと名乗るその子、精霊さんは僕たちを見て、優しく微笑んだ。




