~sideぐり~
ピノちゃんと合流したぐり達は、南東の祠に向かったんでし。
ぐりはあんなやり取りで彼らが来るとは思わないんでしが、魔王しゃまったら自信満々でし。
どこから湧いて溢れるのか。ある意味羨ましいでし。
「ぐりよ!奴らを迎えるにはどうしたら効果的だろうな?『ふはははは!よく来たな!歓迎するぞ!』とかこう…笑って」
「お茶菓子と、チモシーティーを用意するでしゅ」
「そうそう。あれだな、今流行りのヌンティーとかいうやつで、白いレースのテーブルクロスに、あの…例のなんかわくわくする段々になった食器にあれこれのせて、優雅に会話を…しないんだぞ?」
「男の子達だからお煎餅とかの方がウケるかもでしね?」
「ねぇ待って?なんで普通に歓迎する話しになっているのだ?」
「魔王しゃまが歓迎するって言ったでしゅよ?」
ピノちゃんがきゅるるんとした純粋な目で小首をかしげる。
「う、いやまぁそう言ったのは我だが、そういう歓迎ではないのだぞ?ピノよ」
「もっと歓迎するでしゅ?皆でご飯を食べるんでしゅか?何かゲームも用意した方がいいでしゅか?」
「…いやもうそうじゃないんだが…そっちの方向にしか行かないのか…」
ピノちゃんを背負ったまま、魔王しゃまがぶつぶつ何か言ってまし。
ここはぐりが言ってあげないと。
「魔王しゃま。ピノちゃんに魔王しゃまの言う歓迎するところを見せたいんでしか?」
「当たり前だ!ピノにも我が側近としての…」
「えい!」
「ぐぉげっ!?」
「さぁ!ピノちゃんの目を見て言うでし!」
ぐぎっ!と音がしたでし。
大丈夫でし。魔王しゃまは丈夫でしから。
背中のピノちゃんが見えるように無理矢理捻ったから、ちょっと痛かったかもしれないけど、まぁそこは必要な痛みってことで。
「さぁ、魔王しゃま!ピノちゃんにその心の内を言うんでし!!」
「う…」
「どうしたんでしゅか?魔王しゃま?」
「ううう…」
唸る魔王しゃまにピノちゃんは小首をかしげたままでし。
「ピノの歓迎の仕方…間違ってましゅか??」
ピノちゃんグッジョブでし!
ちょっと哀しげに潤んだおめめ。
これで落ちない魔王しゃまじゃないでし!
「ぐ…あ、合ってる…ぞ」
「よかったでしゅ!!皆でお茶会するでしゅね?」
パァァッと効果音が聞こえそうなピノちゃんの笑顔に、魔王しゃまとついでにぐりもちょっとだけ召されそうになったでし。
あれ?ピノちゃんって聖女だったでしか?
いや、魔導師でしよね??
あ!ぐりは魔に染まってないはず!はずでしよね??
危ない危ない。ちゃんと魔王しゃまを止めて行かないとでし。
「ただ…その…な?う…そ、そうだ!我は予定を思い出したのだ!ゆっくりお茶会などできぬぞ!よし、ピノよ!ホムンクルスを召喚するぞ!」
「え?お茶会できないんでしゅか!?」
「ピノちゃん!突っ込むとこそこじゃないでし!」
「お茶会…美味しいお菓子とお茶を皆で楽しみたかったんでしゅ…」
しょ、しょんぼりしすぎでしよ!
というかホムンクルスってなんでしか!?
「そ、そうだ!我らは近くの町に行って、評判の店の菓子とかお茶を楽しもう!奴らの相手はホムンクルスに任せて!な?」
「招待したお友達に会えないのは寂しいでしゅが…皆でカフェとかでお茶したいでしゅ!」
「そうだな!よし!我がホムンクルスを呼ぶから、ピノが使役して、勇者の残滓らを歓待するのだ!」
「歓待…わかったでしゅよ」
ピノちゃんは本当に歓待するつもりでし。
魔王しゃま…伝わってないでしが、まぁいいでし。
でもホムンクルス…なんだかいやな予感がするんでしよね…。
ぐりの勘…外れてほしいんでしけど。
「…あのね?魔王しゃまと、ぐりたんと、皆でお洒落なカフェ行くの…夢だったんでしゅ。ピノ達は…子供の頃…お店とか行けなかったでしゅから…美味しいご飯も皆で食べられたらなって…大人になったらきっとできるって思ってたんでしゅ。楽しみでしゅね!ふふっ」
ピノちゃんが静かに、噛み締めるように呟いて、小さく笑ったでし。
…これは…ダメでしね。
めちゃくちゃ心にクるでし。
ぐりはそっと魔王しゃまに目線でお伺いを立てたでし。
魔王しゃまは全然ぐりを見てくんなかったでし。
ちょっと!そこは見合って意志疎通するとこでしよ!?
「よぉし!ピノよ!祠はちゃっちゃと終わらせて評判のカフェとかに転移するぞ!」
「え…でも用事が…」
「なぁに!そんなものは後からにできる!先にカフェだ!側近の夢を叶えられずして何が魔王か!!任せろ!サーチもするからな!」
ああもうずるい。魔王しゃまそういうところでし。
こういうこと言うからうっかり着いていっちゃうんでしよね…。
「転移!」
軽い目眩がして、景色が一気に薄暗い洞窟のようなところに変わったでし。
「魔王しゃま!転移する時は一声かけてくだしい!!」
「おおすまん!ぐりよ!転移したぞ!」
「事前にでし!」
「ん?まぁ気を付けようと思う!」
「やんない人の台詞でし!」
なんでもう残念さがすぐ出てくるんでしかね。
こういうところでしってば!
「召喚!ホムンクルス!」
着いて早々に召喚されたそれは…何とも言えない形状をしてたでし。
「ま、魔王しゃま…それは…なんでしゅか?」
「カッコいいだろう?我を模したスター君一号、二号だ!」
ドヤってるとこ申し訳ないでしが、ピノちゃんも、ぐりも引いてるでし。
光のない瞳、妙に厳ついのか柔らかいのか、少しブレたようなよくわからない輪郭。
なにやら不気味な雰囲気がでているのに口元なんかは可愛いピンク色をしている。
「スター君…独特なお絵かきしてたでしゅね…そういえば…」
「なるほど、元はそこからでしか…」
遠い目をしながらピノちゃんとぐりは生ぬるい笑顔になってしまうでし。
笑うしかないでし…。
「ほら、ピノよ、はよ!はよ!」
ぐり達とは対照的に、魔王しゃまはキラッキラした目で早く動かせとピノちゃんに要求してまし。
「魔王しゃま…もう降ろして大丈夫でしゅよ」
そう。今までずっと魔王しゃまはピノちゃんを背負ったままだったでし。
そうか、普通は突っ込むところだったでし。
いつものこと過ぎて違和感が仕事しなかったでし。
まぁ二人がいいんだし、別にいいでしよね。
ピノちゃんは深呼吸をすると、呪文を唱え出したでし。
ホムンクルス達が一瞬淡い光に包まれ、光が消えた時、少し身じろぎをしたでし。
「ホムンクルス達よ。ピノが魔王しゃまの代行として命令するでしゅ。この祠にやってくるものを歓迎し、対応せよ」
「ワ…カリマ……シタ……パパ……ママ…」
「ふぬぉっ!?そ、それは我らの事か!?」
「……ピノそんな命令してないでしゅ」
あ~ぁ。なんでしかねこの空気。
ぐりはお邪魔でしかね?
お邪魔でしょうけど離れないでしからね~。
はいはい。そこ、赤面してない。
あ~食べたことないけどお砂糖が口からでそうってこういうことでしかね~。
そんでホムンクルス、岩を加工してテーブルっぽいもの作り出してる気がするでしが、今突っ込むとめんどくさいことになりそうでしからスルーでし。
スルー。
「はいはい。カフェ?でしか?行くんでしよね?さ、OK魔王しゃま、評判のお店に転移してくだしい」
「うぬ!?我をなんか便利な調べもの屋みたいな扱いをするでないぞ!?」
「ホムンクルスの仕事の邪魔でし。招待客が来る前に退散しておくでしよ」
彼らが来ない事がわかってましが、いつ他の誰かが来るかわからないでしからね。
魔王しゃまがこれ以上余計な事をしない内に移動しておくのが無難でし。
ぐりは苦労性のチンチラでしね…。
少しため息をついて、魔王しゃまの転移に備えるでし。
一先ずは童心に帰って、三人で美味しいお茶とお菓子を楽しむでしかね。
※※※※※※※※※※
魔王様は何を考えてるのかわかんないでし。
何か壮大な悪いことをしようとしているように思う。
でもボクは、魔王様と一緒に美味しいものを食べて、お友達になれば、きっと話を聞いてくれる。
そういう余地があると思ったんでし。
祠に行くって聞いたボクは、近くの村におやつや果物とか美味しいものを仕入れに行った。
ひょっとしたら話し合いができない場合、最悪闘いになるかもしんない。
その時は…ボクもレンジャー。
やり合いたくはないけれど、どうしてもの時は頑張る。
そう覚悟を決めて、例の祠にたどり着いた。
「ごめんくださ~い!!」
キリッと表情を引き締めて声をかけるけれど、誰も何の反応もない。
「おかしいでし…まさか!?もう彼らが何かされちゃったんでしか!?」
「おまえさ~ん!こんなところ~でなにしてる~んだ~い?」
祠の入口にどう見ても木こりのような格好をしたおじさんがいた。
まさか…この人が魔王??
咄嗟にボクはどうとでもなるよう構えつつ、おじさんに答えた。
「魔王がここに来るときいて、差し入れにきたんでし」
「あんれぇ~!魔王?最近の子~たちは魔王ごっこするんだね~ぇ。でもここはおっちゃんが休憩に使ってる場所で、奥には枝があっから~。勝手に入っちゃダメだ~よ~」
枝が!?そう言えばさっきからちょっと気になる匂いが奥からしてた。
おじさんの案内で見てみたけれど、本当に誰もいないし、りんごやブドウ、柿に栗、様々な枝が並んでいた。
おじさん曰く、ここは大人向けの枝から、ベビチラ向けのかじれるおもちゃまで作れる材料の枝を保管しておく場所なんだそうでし。
1本分けてくれたでし。優しい。嬉しい。美味しい。
(もうかじっちゃった)
お返しに持ってた果物をお裾分けしたでし。
これもウマウマ。
「この、東の祠には誰も来てないだ~よ?」
「東の祠??」
よく聞いたら、南東にも祠があるんだそうでし。
…あれ?ひょっとしたらそっちだったかも…。
…………。
よし、気を取り直して、思わぬ時間ロスしちゃったケド、きっとまだ間に合うはずでし!
きっとお友達になれるでし!
ボクは新たに決意して、南東の祠に足を向けた。




