初体験!冒険者ギルド(三)
「あ…ごめんなさい。あの、泣くつもりはなかったんですけど…あれ…おかしいなぁ」
いきなり泣いてしまったことで、雷蔵ちゃん含め皆さんを驚かせてしまったようだ…。
でも、なんと言うか勝手に出てきてしまったので、ぼく自身も困惑しちゃってる。
後から後から溢れてくる涙を手で強引に拭うけれど、止まらない。
折角お父さんとお母さんのこと知ってる人に出会えたのに。
強かったらしい両親の子供なのにこんなことで泣いちゃ、呆れられるかもしれない。
そんなのは嫌だ。
涙、止まれ!止まれったら!
ぐしぐしと擦ってるのに止まらない。
「わぷっ!?」
突然顔面に何かを叩きつけられた。布!?
ごっしごっしと乱暴に拭かれたのでてっきり副ギルド長さんとか雷蔵ちゃんか思って、拭かれてたけど、目を開けた時に見えたのはつみりんだった。
後ろにはそっとハンカチを出そうとして固まってたこんぶさんがいる。
えぇ~。豪快で力強かった~。
ちょっと恥ずかしい~。
「男の子が泣くものじゃないでち!…ほら!」
ちょっと恥ずかしげに視線を逸らしながら両手を広げるつみりん。
「えーと?」
「つみりんの胸を貸してあげるから泣き顔を隠すでち!!ほら!アイドルつみりんがこんなことしてあげるのそうそうないでちよ!?」
…行動が男前の方向に行ってるんですけどつみりん。
違う意味でモテそう。参考にさせていただきます。
「ぷっ!あは!あははははは!」
ダメだ笑っちゃう。
「な、なんで笑うんでちか!?」
「あはははは~!かっくいいねつみりん!つみりんのお陰で涙引っ込んじゃった!」
「そ、それならいいでちが、間違えてるでちよ!?つみりんは『カワイイ』んでち!」
「え~?じゃあカッコカワイイで」
「む~納得いかないけど…それでもいいでち…けど解せぬでち。女の子がハンカチを貸してあげて、胸で泣いていいよってトキメキシチュじゃないんでちかね…解せぬでち」
ほら、つみりん、アイドルなんだったら眉間にシワを寄せない。
今のは兄貴とか姐さん!って対応だったと思う。
笑い過ぎてまた…涙が出てきたけど。
そう。笑い過ぎてだ。
それはつみりんの貸してくれた…お宿の貸しタオルで拭き取った。
ハンカチでもなかったよつみりん。
「おはぎさん…それ…タオ…」
「しーっ。今は突っ込まないでおいてあげて。雷蔵ちゃん」
「…つみりんって面白い子でちね」
「うん。なんか仲間になってくれて良かった」
「でちね」
目尻にじわりとまた出てくる何かを、ぼくはまた貸しタオルで拭った。
「ねぇ、それハンカチじゃなくてタオルじゃない??あ!あそこのお宿のじゃないか!」
あ!副ギルド長さん!突っ込んじゃだめ!
シュバッとぼくの手からタオルが奪われたので、行方を追うと、つみりんが耳を真っ赤に染めながらカバンに仕舞いこんでいるのが見えた。
「こ、これはあれでち!間違えて持ってきちゃっただけでち!普段はもっと可愛いのが!えーとえーと」
カバンはそんなもの入りそうにない小さなものなのに、洋服やら食器、果てはテントまで出てくる。
某未来型の猫型からくり仕掛けかな?
ぼくらはネズミだから皮肉な感じになっちゃうけど。
…んまた変な知識が…。
考えようとしたけれど、つみりんがどんどん荷物を積み上げるので慌てて止める。
「つみりん!もういいから!タオルの方が吸水性いいもんね!助かったよありがとう!さすがつみりん!」
「そうでち!さすつみでち!!」
「ヒュー!マジックバッグ持ちだったんだ。君…案外やるねぇ」
「…ま、まぁそれほどでもあるでちけど??」
「チョロいでち…」
「雷蔵ちゃん!しーっ」
副ギルド長…やまとさんはそういう意図はなかったんだろうけど、結果つみりんのご機嫌がなおったのでよしとしよう。
皆で出てきた荷物を片付けてると、ギルド長のこたけさんが、つみりんに近づいて小声でお説教してた。
あ~。また不機嫌になっちゃってる。
漏れ聞こえた感じだと、そもそも空間が広げられてるマジックバッグは貴重なのに、これだけ容量が大きいものだとかなりレアらしい。
それがこんなところでわかるように使うな、と言うことのようだ。
怒られてあからさまにむっすーとした顔をしているつみりんに、こたけさんは構わず言葉を続ける。
「まったく…腕に覚えがあるかもしれないが、君みたいな若くて可愛い女の子は、それだけで狙われるかもしれないんですから。気をつけなさい!!」
わ、珍しくつみりんが何も言わない!
顔を真っ赤にしてプイッと背けるだけだ。
まっすぐな褒め言葉には弱いんだろうか。
まぁでもこたけさんかっくいいもんね。
「知的系イケメンキター!?これはこれでアリ!?」
何かをブツブツ言ってるようだけど、不機嫌なオーラは消えたので大丈夫かな。
意外なつみりんの弱点がわかっちゃったかも。
あ、こんぶさんからハンカチをもらってる。
なんか可愛い刺繍がされてるみたい。
また耳を真っ赤にしてそっぽ向きながら何かを言ってる。
でも最後に綺麗に畳んでカバンに仕舞っていた。
そういうとこ可愛いよね。
こんぶさんもニコニコして見つめてた。
ぼくのなんとも言えない気持ちと言うか涙もどっかに行っちゃった。
ありがとう。つみりん。




