初体験!冒険者ギルド(二)
ぼくらの前の人達はそれぞれ空いた受付嬢の方へ流れていった。
あんまり見えなかったけど、受付嬢は三人位で回してるみたいだ。
そして、ぼくらの担当をしてくれたのは先ほど華麗なるドロップキックを見せてくれたおねえさん。
名札をみたら「こんぶ」って書いてあった。
こんぶさんが正しいお名前なんだね。
「お見苦しいところをみせちゃったでちね」
苦笑しているこんぶさん。
「改めてまして、ドゥーブルの冒険者ギルド受付のこんぶでち。こんぶでも、君たちならきょんぶちゃんって呼んでもいいでちよ」
ウインクしながらおどけるこんぶさんはとても殺気を出すような人には見えなかった。
「きょんぶちゃん、今日はこの二人の登録をお願いしますでち~」
「あらつみりん!どうしたの?こちらの少年たちは」
「訳あってパーティーを組むことにしたんでち。と言ってもしばらくは彼らのレベル上げメインだからつみりんは見守りでちかね~」
「ふふ、こんなに可愛い子達三人もいたら絡まれちゃうでち。つみりんがいくら破壊し…強くても、気をつけるんでちよ?」
「そんなこともあるんでちね~気おつけるでち!」
あ、破壊神だってこと知ってるんだね。
二人ともこうしていると可愛らしいんだけど、
怒らせてはいけないってのは共通事項だ。
肝に銘じておこう。
「じゃあ早速新規登録するでち!」
こんぶさんは何やら水晶のようなものを取り出してきた。
「おーぉ!俺様を放置していちゃいちゃしやがってーぇ!おぅおぅ!嫌味なのかーぃ??」
丈夫だ。すごく丈夫だ。
ドーガス?とかいう冒険者が、よたよたとこちらに向かってきた。
どこにイチャイチャ要素があったんだろう。
あれだけの蹴りを受けたのにそれでも立ち上がってこんぶさんへの理屈のわからない嫉妬をしてるのは、ある意味尊敬する。
迷惑だけど。
「俺様のことーぉ、バカにしてんのかーぃ?おぉう?てめぇらみたいなガキは、お家に帰ってねんねして…ぶぁっ!?」
ドーガスがぼくに掴みかかって来ようとした途端、今度は真横に吹っ飛んで行った。
目の前の光景が何故かスローモーションのようにドーガスの顔の形が、ぐんにゃりとかなり歪んで飛んでいったように見えた。
あれ…生きてるんだろうか…。
「まーったく!僕達がいないとすーぐこれだ!」
「ギルドで朝っぱらから騒いでいるお馬鹿さんがいると思ったら、またアナタですか。ドーガスさん」
恐らくドーガスさんを殴ったかなにかしたんだろう。両手でパンパンと払う仕草をしている人と、もう一人。
それぞれカラーがシナモンで似ている。
兄弟だろうか。
「やまと」
この一言だけでわかったのだろうか、やまと、と呼ばれた人が、吹っ飛んでギルドの隅っこで丸くなっているドーガスを片手で引っ張り上げた。
「や、やまとーぉ、お、俺様なーんにもしていないんだぜぇーえ?」
「いーや!僕はこの目で見ちゃったよ!そこの少年達に掴みかかろうとしたのは!その前にうちの看板娘にもしつこい声掛けがあった。これはもう事案だね」
「いい加減学習しなさいと言ったはずです。再三の忠告を無視したため、ドーガスさんのギルドの出入り禁止3ヶ月と、今の水晶級から、黒耀級へ降格です。もう一度最初からやり直しなさい」
「そんなぁーあ!ギルド長ーぉ!!」
「精霊の顔も四度まで。反論は許しません。それが嫌なら…ギルドから除名してもいいんですよ」
氷のような目でドーガスに冷たく伝えるギルド長さん。
ドーガスはそれまでの勢いがなくなり、しおしおと床に座り込んでしまった。
おお!かっくいー!!
ドーガスか「ギルド長」と言っていた。
恐らく冒険者ギルドのギルド長なんだろう。
精霊の顔も四度までって言葉聞いたことがないけれど、多分仏の顔も三度までと同じような意味なんだろう。
一度多い分優しいね、精霊さんは。
「君たち…新規登録者なんだね。すまないね。いきなりこのような者に絡まれてしまって」
「間に合わなくてごめんなぁ?今日はゆっくり来る日だったんだ」
ギルド長さんもやまとさんも、二人してこちらに謝ってくれた。
偉い人なのに頭を下げるってすごい!
「大丈夫でち。いきなりでビックリしたけど、まだ何もされてなかったでち」
雷蔵ちゃんの言葉にぼくもうんうんと頷いた。
「そっか、ならよかった」
と、やまとさんがぼくたちの頭を乱暴に撫でていく。
つみりんにも、と手が伸びたけれど、フッと手がそれて行った。
やまとさんは自分の手を見てワキワキさせてからつみりんを意味あり気にみるけれど、つみりんはニコニコ笑顔のままだった。
…ひょっとして手をいなしたのかな??
でも何も見えなかったし…うん。無かったことにしよう。
「こちらはギルド長のこたけさんと、副ギルド長のやまとさんでち。ご兄弟なんでち!これからお世話になると思うから挨拶しとくでちよ」
こんぶさんが先程の喧騒など無かったかのように穏やかに説明してくれる。
「は、はじめまして!おはぎです!」
「ら、らいぞーでち!はじめてでち!」
ん?…雷蔵ちゃん…なんか違わないかな?
横目で見ると、あ、耳が赤い。うん。これも見なかったことにしておいてあげよう。
「あぁ、私がこたけだ。こっちが…」
「僕がやまとだよ。よろしく!」
改めてお二人と握手をして挨拶を交わす。
わぁ。力強い手だ。なんだか強そう。
「おはぎさん、ギルド長と副ギルド長は元金剛級の冒険者だったんでちよ。」
「こ、金剛級!?スッゴい強いんですよね??」
具体的なランクはわからないけれど、それがすごく強いレベルだってのはわかった。
「今は引退しているから関係ないがな。こんぶ嬢」
ギルド長のこたけさんがこんぶさんに流し目を送ると、さすがのこんぶさんもちょっとドキドキするようだった。
「ぼ、冒険者ギルドのレベルについても説明するから、ちゃんと聞くようにするんでちよ」
動揺をごまかすようにこんぶさんが言った。
いざ契約を、となったところでギルド長、こたけさんが待ったをかける。
「おはぎ…君と言ったね?」
「え…はい。そうです。」
「兄さん、どうしたの?急に」
こたけさんはぼくをじろじろと全身を眺めだした。
「似てる…君…ご両親は?」
「あ…今は…世界を回っています。多分。…そう、聞いてます」
「世界を?…そうか」
「あの…なにか?」
「あぁ…いや…。君になんだか雰囲気…なのかな?似ている人達がいたんだ。ひょっとして…関係者かなと思ってね。違ってたらすまない。」
「いいえ…そんなに似てるんですか?」
「うーん。外見が瓜二つってことはないけれど、もしあのお二人の子ならと思うと、それぞれどちらにも似ているところがあるね」
「あの…その人達の名前は…?」
「おこめさんと、あずきさんと言う。おこめさんが剣士、あずきさんが魔導士。彼らは…ある時から姿を消してしまったからその後はわからないんだが、当時は、虹金剛級に一番近いと言われていた冒険者コンビだよ」
「虹金剛!?すっげーでち!…おはぎさん!?どうしたでちか!?」
雷蔵ちゃんが慌ててぼくを覗き込む。
「あ…それ…おこめと…あずきは…ぼくの両親です…」
いつの間にかぼくは…涙を流してしまっていた。




