~sideぐり~
とりあえず草原の中を走り抜け、途中でぐいんっ!と急カーブで曲がり、背の高い草むらの影でようやく立ち止まったでし。
「んぐえぇぇぇ~~~!!」
ぐりはずっと首根っこ掴まれてたからちょっと落ちてたかもしんないでし。
魔王しゃま酷い。
そんなぐったりしたぐりなのに、魔王しゃまは草むらへぽいっと放り投げて、草影からこっそりおはぎさん達の方を覗いて、満足気にニヤリと笑ってまし。
白髪がちょっと増える呪いでもかけてやりましかね!
そんな呪い知らないでしが。
「ふっふっふっ。これで奴らも洞窟に来るに違いない!」
「いや、来ないでしよ…」
ぐりがじっとりとした目でみると、魔王しゃまは心外だ!という顔をしたでし。
「心外だぞ!!」
あ、言うんでしね。
「いや、あれだけ推したんだから来るはずだぞ!?」
「がっつり怪しまれてたでしよ?」
「心外だぞ!?」
二回目いただいたでし。
「逆に何でそう思えたか聞きたいでしね」
「いや、だって二人とも笑顔だったし!」
「ひきつってたでしよ?」
「行くって言ってたし!」
「口だけでしよ!雷蔵って子、笑顔だったけど目が笑って無かったし、ずっと警戒されてたでし」
「ま…まさか…我が…騙されてたと言うのか…!?我の完璧な演技を上回るすごい才能だ!!」
「いや…え?…あー…胡散臭い商人を演じてたら上手だったでし!」
「誠実な善意の第三者な商人だ!」
「まず我って言ってたでし」
「何!?上手く誤魔化したはずだぞ?」
「なんで我…われって毎回つっかかるでしか!そういうのは二、三回で慣れてくだしい!!」
「おかしい…誤魔化せてない?…む!何か嘘を見抜くような異能が全員に!?」
「ないでし。バレバレでし」
「むぐぅ!それを言うならぐりよ、貴様の名前の誤魔化方の方が酷かったと思うぞ!」
「ぐぬぅ!!黒歴史!急に振るからでし!!とっさに出てこなかったんでし…打合せしとくべきだったでし…そんなのより!魔王しゃまの演技でし!今時あんなニマニマしながら揉み手する商人なんていないでし!何を参考にしてたんでしか!?」
魔王しゃまが手を顎に当て、小首をかしげて思い出そうとしてまし。
黙ってれば可愛いんでしけどね…。
「…越後屋?」
「…そちも悪よのうでし」
「いえいえ、お代官様こそ」
「時代劇でしか!!いや、時代劇でもそんなじゃねぇでしわ!!」
突っ込んだは良いけれど、越後屋ってなんでしかね?
魔王しゃまも言うだけ言ってノッておいて首をかしげてまし。
ぐり達は「時代劇」と言う物がわからないのに何故か知ってまし。
さっきのノリも「お約束」ってやつでし…でも今まで二人でそんなことをした覚えがないのに…何故でし?
「ま、まぁよい。後は南東のほこらで奴らを待ち受けるぞ」
「え~?来ないと思いましよ?」
「絶対か?100%そうだって言いきれるか?確実なのか?そうじゃなかったら責任とれるのか?地球が何時何分何秒何回回っても誓えるのか!?ああん?」
「うぇぇ~魔王しゃまが小学生か輩みたいになってまし~…そこまで言われると…可能性は…ゼロではないわけ「だからどうだって話しをしているのだぞ!!」食い気味に言わないでほしいでし!」
「ぐりが悪い」
「…はいはい。ぐりが悪かったでし」
最終的にいつもの流れでしね。
「反省したならよし。さぁ行くぞ!」
「待ってくだしい!!」
またいきなり転移しようとする魔王しゃまを、ぐりは慌てて止めたでし。
「む、何故止める?ぐりよ」
「魔王しゃま…忘れちゃダメでし!ピノちゃんがはぐれてるでし!!」
「むむ!そう言えば!ずっとついてきているのだと思っていたぞ!」
正直魔王しゃまは転移がまだ慣れてないのがちょっとズレるんでし。
最初に花火を打ち上げると(雷だったでしが)言った時も、魔王城から転移した際にぐりだけ変なところに落っこちたでし。
今回も、何故か魔王しゃまが気にしているおはぎさん達のところに、「いい作戦を思い付いたぞ!」と言って説明なしに転移させられて、草むらに落ちたと思ったらおはぎさん達に踏まれたでし。
ピノちゃんも近くにはいたと思うんでしが…多分はぐれてまし。
踏まれるよりは良かったでしが。
その後のダッシュでしからね。
ピノちゃんが追い付くなんて難しいでし。
「多分さっきのおはぎさん達とお話してた辺りの近くにはいると思いまし」
「なんと!いないならいないと言わんと!」
「誰が言えるんでしか。ピノちゃんは勿論言えなかったでし。ぐりもいきなりの遭遇で誤魔化すのに精一杯だったでしよ」
「そこはぐりだな」
「すみませんでし」
とりあえず謝っとくでし。
早くピノちゃんを探さないと!
と思ってたら光に包まれてフワッと浮くような微妙な気持ち悪さが襲ってきたでし。
「魔王しゃま!転移するときはするって言ってほしいでし!心構えが…ぎゃん!」
「ん?おお!気をつけるようにするぞ!」
これはしないやつでしね。
しゃべってる間に転移も終わってて気を付けてなかったぐりがバランスを崩して転んじゃったでし。
「だ、大丈夫でしゅか?ぐりたん」
今回は成功したようでしね。
ピノちゃんが目の前にいまし。
ぐりは慌てて草やホコリを払って立ち上がり、怪我をしてないアピールをしたでし。
「あっ!ほら!ピノちゃん!ぐり大丈夫でしよ?怪我してないでし!だからそんな回復魔法出さなくていいでしよ!?」
なんだかすごい魔力が発動しかけてて、このエリア一帯対象になりそうな勢いでし。
「ちょっと待ってね?今すぐ回復…」
「大丈夫でし!怪我してないでしよ!元気でし元気!」
その場でポップコーンジャンプをすると、ピノちゃんはほっとした様子で胸を撫で下ろしたでし。
魔王しゃま!ニヤニヤしてない!
「良かった~!怪我がなくて」
「ぐりのジャンプは相変わらず下手だのう」
「魔王しゃまほど上手な人はあんましいないでしよ…」
「それより、ピノちゃん大丈夫でしか!?」
「あ…ごめんでしゅ…ピノも転んじゃって…気がついたらちょっと離れたところで魔王様達がもうお話してて、ついていけなくて…ピノ…動けなかったんでしゅ…」
ピノちゃんはみるみるうちにその瞳がうるうるして涙が溢れだしそうになったでし。
「ピノちゃん!今回は魔王しゃまが悪いでし!ピノちゃんだけズレたとこに転移させちゃったし、向こうと即時エンカウントだったでし!」
「ピノよ!泣くな!ピノこそ怪我はないか?大丈夫か?あとぐりは黙れ」
「ピノちゃんはその場で待機してて良かったんでしよ!流石の判断力でし!」
「ぐりはちょっと後で話がある。ピノ!痛いところがあったら回復かけろ!な?」
男二人してあわあわしてたらピノちゃんがポカンとして、そして少し滲んだ涙を拭ってクスクス笑いだしたでし。
「もう、相変わらずでしゅね。ピノの怪我はしてないんでしゅよ。ただ人の転移って初めてでびっくりしただけでしゅ」
「おぉ、そうか!大丈夫か。ならば早速南東のほこらに行くぞ!」
「え?魔王しゃまピノちゃんの為にも少し休憩…」
魔王しゃまはピノちゃんに行くぞと声をかけながら、背中を向けてしゃがんだでし。
「ん」
「え?どうしたんでしゅか?」
「ほれ、おぶさるがよい。我が運んでやる。驚いたかなんだかで歩けんのだろう?それにこうしてたら絶対にはぐれん。ぐりはわからんがな」
ニヤリと笑ってピノちゃんを促す魔王しゃま。
ピノちゃんは一瞬戸惑ったんでしが、小さく頷いて魔王しゃまの背中にのったでし。
「ごめんでしゅ。スター…魔王様」
「ん?何がだ?」
「あの時より…ピノ…重いでしゅよね?」
ピノちゃんはちょっと耳を赤く染めて魔王しゃまのマントをキュッと掴んだでし。
「何にも変わらんぞ?昔のままだ!軽い軽い!」
「そ、そんなことないでしゅよ…もう!」
魔王しゃま…そういうとこでしよ。
ぐりは何を見せられてるんでしかね?
お砂糖を口から吐いていいでしかね?
「腰が抜けて歩けないのも昔のままだ!毎度我がおぶって逃げたっけな。懐かしいなぁ!ふっふっふっ」
それで残されたぐりが大体怒られてるんでしよね。
遠い目しちゃうでし。
「!?もう!!」
「あいてっ!?何故叩くのだ!?」
「知らないでしゅ!!ほら、次はどこに行くんでしゅか?何をするのかちゃんとピノ達に説明してから移動するでしゅ!!」
「わかった!わかったから!やめよ!上からだと攻撃が見えぬ!次は南東のほこらに行って、剣士達を待ち伏せするぞ!もし来なかったら…あれだな、ピノの力も貸してもらおう」
「ピノも?」
「ホムンクルスを用意しようと思う」
「「ホムンクルス!?」」
「ふっふっふっ面白くなりそうだな。ふっふっふっ。転移するぞ!って言えばいいのか?ピノ」
「そうでしゅ。ぐりたんも一緒でしゅよ」
「はいでし!」
「さーてと」
魔王しゃまが一歩踏み出した時だったでし。
「ん?やっぱりピノ、少し重くなったか?成長したなぁ!くははははは…はぶっ!?」
「スター君なんて知らないでしゅ!!!ぐりたん!行くでしゅ!転移ならピノだってできましゅ!!」
ピノちゃんは魔王しゃまに平手打ちとキックをかまして、ぐりの手を掴んで転移を始めたでし。
「な、何故だ?何故我が殴られ蹴られるのだ!?」
やや放心気味な魔王しゃまを尻目に。
…魔王しゃま、そういうとこでしよ。




