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チンチラクエスト  作者: 鈴葉
13/41

いざ寄り道!?

ぼく達、ぼくと雷蔵ちゃんは修行の為に旅立った。

強くなりたい。

ただそれだけだったから、具体的な目的地もない。

どこかで修行できる場所や…し、師匠と呼べる人に出会って師事できたらなって思う。

とにかく何をするにも、まずは情報収集が肝心だ。

こうしてる間にも魔王が何かしているかもしれない。

逸る気持ちはあるけれど、色んな村や街に行って、情報を得ようという事になった。

「おはぎさん、これは…らいぞーの勘なんでちが、らいぞー達が何かしない限り、魔王は動かない気がするでち」

「雷蔵ちゃんも?何だかぼくもそう思う。何て言うのかな?セオリー?でそういうものって思っちゃう…」

「不思議でちね。誰かに教わったものじゃないんでちが…」

「不思議だよねー?」

二人で首をかしげつつ歩いていく。

早朝ファスタの村を出発したら、隣のドゥーブル村へは歩いて大体1日がかり。

走ればもう少し早く着く。

でも、ある程度村でも鍛えてたとはいえ、初めての遠出。

無理がないように、歩いてゴールを目指す。

村を出る時に大人達に口を酸っぱくして、無理をするなと注意されていた。

実際ぼく達は村の外が初めてで、ただ道を歩くだけでも、目に映るものが全て新鮮で、楽しい。

何の変哲もない草原でもキラキラ輝いて見える。

ぽかぽかと気持ちいい陽気、友達と一緒に、初めての旅。

これで浮かれない方がおかしいと思う。

なんだかむずむずしちゃう。

「おはぎさん」

「どうしたの?雷蔵ちゃん」

「しっぽ…ぶんぶんしてまちよ?」

「!おっといけない!ついうっかり!わくわくするとしっぽが勝手にぶんぶんしちゃうんだよー」

「わかるでち。らいぞーもぶんぶんしたい位でち!」

「だよねー。あー…そろそろお昼だねー。…雷蔵ちゃん」

「…おはぎさん」

ぼくらは目線を交わし、ニヤリと笑って目標を定める。

「あの大きな樹がゴール!勝ったら…えーと、勝ったら」

「にんじんクッキー1個負けた方からもらうでち!よーい、どん!」

「あ!ずるいよ!待って!!」

逃げ足の雷蔵と駿足のおはぎと呼ばれていた。

どちらも足の早さには自信がある。

お昼ごはんを食べるのに、丁度良さそうな大樹に向かってぼくらは駆け出した。

雷蔵ちゃん結構荷物があるのに早い。

負けないぞ!おばさんのクッキーはぼくも大好物だ!

最初は足だけで走っていたけど、つい本気になって手足を使って思いっきり走る。

お互いにゴールしか見ていなかった。

こんな駆けっこ久しぶりで楽しい!

二人とも子供みたいに笑いながら走っていた。

もう少しでゴール、ってところでら進行方向の草むらの中に何か動いたのが見えたけれど、時既に遅し。チンチラは急に止まれない。

上に飛び上がって避けようとしたけれど、足が引っ掛かってしまった。

「うわぁ!?」

「でち!?」

「むげらふっ!?」

「んぎゃでしっ!?」

雷蔵ちゃんも引っ掛かって転んでしまったようだ。

「いててて…」

ちょっと打った位で済んだと思うけど、何に引っ掛かったのか。

声が四人分聞こえたけど…まさか?

よく見るとフードを被った旅人風の二人が草むらで悶えてた。

「いちちち…あんたたち大丈夫でちか!?」

二人ともそれぞれぼくらに蹴られちゃったみたい。

「ご、ごめんなさい。こんなところでこんな時間に寝てる人がいるって思わなくて…」

フードの二人はあわてて身繕いをしてこちらを向く。

「こっちもごめんなさいでし!ぐ…むぐっ!?」

一人が何かを言いかけたけれど、もう一人が口をふさいだ。

「いやいやいやどーもどーも~!こいつは口下手なもんで、変わりに謝りますわ~いや、こっちも寝っ転がってたのが悪かったんで、えーと怪我は?」

妙に愛想のいい人みたいだ。

行商人かもしれない。

「ぼくは大丈夫よー雷蔵ちゃんは?」

「らいぞーも大丈夫でち。ちょっと打ったかも、って位でちよ。あんたたちは?」

「こっちもびっくりして転がっただけで、怪我はしてませんよ。ほんとにすみませんねぇ」

フードで隠れて顔は見えないけれど、手足から皆スタンダードグレーのようだ。

揉み手っていうのかな?初めて見た。

「怪我がなくてよかったです」

ぼくは皆が怪我をしていないことにほっとした。

雷蔵ちゃんは荷物が散らばったみたいで慌ててかき集めている。

フードのもう一人が手伝ってくれてるみたいだ。

うん。多分二人ともいい人っぽい。

「して、こんなところでお二人はどうされたんです?我…我々は、ちょっと疲れたんで昼寝をしてたんですわ」

「そ、そうでし!」

「そうなんですね!」

「らいぞー達は、お昼ご飯をあの樹の根本で食べようかなって思って移動してたんでち」

「あ~さようですか~。いいですよねぇ大樹の根本。安心しますよねぇ」

愛想はいいんだけど、なんでこの人ずっと揉み手してるんだろう?

「我…われは、商いをしながらあちこち回ってましてね、おたくさん達はどちらへ?」

「あ、ぼくはおはぎで、こっちが雷蔵ちゃんです。ファスタから隣のドゥーブルへ移動してるとこなんです」

「あ~はいはい。あそこもいいところですよね!もうあとすぐですからお昼もゆっくりなさったらいいですよ」

「そうなんでちね。ありがとうでち」

「えー…我…われは…ほら!」

「ひぇっ!?す…スッタカと、ぐ、グルンでし!」

「ちょ!?…スッタカと申します…ぐぬぬ」

愛想のいい方に小突かれて、もう一人が自己紹介してくれたけど、変な名前。本人には言わないけど。

気にしてるといけないしね。

「スッタカさん、グルンさん、ほんとにごめんなさい」

改めて謝ると、やっぱり揉み手をしたままスッタカさんが言う。

「いえいえ~大丈夫でしたしね、これも教訓にしますわ~。あと、お近づきの印で、いいことを教えて差し上げますわ~」

「な、なんですか?」

スッタカさんはぼくの耳元にめちゃくちゃ近付いてきたのでちょっと体が強張ったのは許して欲しい。

「最近、魔王が出現したって知ってます?」

ぼくは思わずスッタカさんを見た。

やはり顔が見えなかったが口許が弧を描いている。

「その魔王がね…南東のほこらにいるって噂なんですよ!!」

「「えぇっ!?」」

ん?振り返ると雷蔵ちゃんと、グルンさんが二人して聞き耳立ててた。

目が合うと恥ずかしそうにお耳を伏せた。

二人とも可愛いなぁ。

いやだからその趣味はないんだってば!

「聞きたいなら普通に聞けばいいんじゃないかなぁ」

「まぁ今は我…われしかいませんからな」

スッタカさんはなんで我々って言うのに一々突っかかるんだろう?これも不思議。

「見たところあなた方は随分お強そうだ。魔王も生まれたばかりじゃまだ力もそんなにないはず。やっつけるなら今なんですわ~」

「え?そうなんですか!?」

「あれで?」

「魔王は時が経つ程強くなりますからねぇ。やるなら今。しかも魔王を討ったとなれば、英雄ですよ!勇者かもしれないですわ~。ね、行くなら今なんですよ」

スッタカさんは揉み手のままでにこやかに話す。

「え…えっと…あの…」

「…情報ありがとうでち。腹が減ってはなんとやら、でちからね。まずはらいぞー達はご飯食べてからにするでち」

「雷蔵ちゃん…」

「おはぎさん、後で南東に向かってみるでち!」

「うん…雷蔵ちゃんが言うなら…」

「おおーー!!そうですか!行かれますか!さすが我…われが見込んだ方だ!いや~吉報をお待ちしてますぞ!さ、ちょっと我…われは先を急ぎますんでね、ちょっと寝すぎましたな。では、これで失礼!!」

スッタカさんはグルンさんの首根っこを掴んで風のように去っていった…。

「雷蔵ちゃん…南東のほこらってわかるの?」

「いや?知らないでちよ?」

「え?だってさっき行くってスッタカさん達に…」

「だーれが行くでちか!!あんな胡散臭い情報に乗るわけないでち!」

「あれ、やっぱり胡散臭かった?」

「下手すると罠でちよ!いかにも偽名ぽいし、普通の商人ならあんな情報ただで渡すわけないでち」

「最初はいい人っぽかったんだけどなぁ」

「分かりやすく怪しかったでち。あんなの放って置くでち。らいぞー達はドゥーブルへ行けばいいんでち」

「…そう、そうだね。もし本当だとしても、魔王のあの力を見た以上、ぼくらでは太刀打ちできないのは、わかってる…」

「悔しいでちけどね…」

一先ずお昼ご飯を食べて、気分を変えて出発しようと言うことになった。

無知ってことはそれも罪。

知識がないと悪い人に食いものにされる可能性もある。

さすがにあのスッタカさんコンビには騙されることはなかったと思うけど…もっと巧妙にこられたら…わからなかった。

雷蔵ちゃんも一緒でよかった。

改めて道中も含め、気を引き締めよう。

でもまずはお昼ご飯だ!

実はさっきからお腹が鳴っている。

「よーい、どんでち!」

「あ!ずるい!」

「勝負はまだついてなかったでちからね~!!にんじんクッキーいただきでち!」

「負けないぞー!!本気出すからね!!」

ぼくらはすぐ先にある大樹に向かってまた駆け出したのだった。


※※※※※※※※※


大樹の根本近くの木陰で、ごそごそもそもそと毛布の影がでてきた者がいた。

昼寝を邪魔されたせいか、少し不機嫌そうだ。

くしゃっと顔を歪めながら目をこする。

もう周りには誰もいなかったが、風にのって聞こえてきた会話は覚えている。

「…ほこらでしか…準備して行ってみるでし…」

ぼそりと呟くと、彼は荷物をゆっくりまとめ、準備の為に近くの村へ足を向けた。

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