~sideピノ~
ピノは田舎の村で生まれたんでしゅ。
ピノが賢者という珍しい職業を持っていたことがわかると、王都の王立学園に入学することが決まってしまったんでしゅ。
ある程度成長するまでは待ってくれたんでしゅが、
よく遊んでた幼馴染みとも別れて王都へ行くことになったんでしゅ。
正直魔法の使い手は少なくて、攻撃魔法も使えるとなると、もっと少ないので、国で保護、と言う名の管理が必要だから、強制的に学園に通わされましゅ。
学園に通ってる間に愛国心とか、色々国に不利益を被らないように教える一面もあると思ってましゅ。
ピノとしてはお勉強は好きだし、学園に入ること自体は構わないんでしゅが、村の皆と離れる事がすっごく寂しかったでしゅ。
知り合いのいない王都で一人。
周りは貴族が多くて、田舎の平民であるピノが通う事に少なからず抵抗があったみたいでしゅ。
クラスメイトの人達とも仲良くなってお友達を作り作りたかったんでしゅが、職業の珍しさと有用性、成績の良さの為か、寄ってくるのは一部の高位貴族の人達。
周りを取り囲まれて友達らしい友達はできなかったでしゅ。
お勉強自体は楽しくて、知らないことを学べるのは良かったんでしゅが…思い出はそれだけでしゅ。
とっても寂しい学校生活だったんでしゅ。
卒業式前から、あちこちから婚約の話や仕事の話ばかりでうんざりな毎日でしゅ。
これからピノはどうなるのか…。
今も困った人に捕まってどうしようか悩んでたんでしゅが…。
急にくらっとしたと思ったら、ぐるぐる回るような感覚に襲われたんでしゅ。
ぐるぐるがおさまった時、声が聞こえたでしゅ。
「ふっふっふっふっ!わが召還によく応えてくれたな!」
不適な笑みを浮かべた…あれは…スター君と、
もう一人…ぐりたんでしゅ!!
「スター君とぐりたん?久し振りでしゅね!!ここどこでしゅか?」
急に見覚えのない所にきちゃってびっくりしたんでしゅが、お友達がいるなんて!!
でも今の魔法は…誰が?
それにしても。
「二人ともなぜいきなり土下座してるんでしゅか??」
思わず首をかしげちゃいましゅ。
「こ、ここは魔王城だ!これは…わ、我はしなくてもよいと言ったのだが、ぐりが!」
「…あ~。ピノは召還されたんでしゅね?契約付なんて、いつの間にそんな魔法使えるようになったんでしゅか?…スター君でしゅね?ピノより強くなってましゅ」
かけられた魔法を分析すると、契約召還術で呼ばれたみたいでしゅ。
召還者がピノより弱ければ、契約なんて弾き飛ばせたんでしゅが、感じる間もなく、なんてかなり強力な魔法でしゅ。
ピノはこれでも賢者でしゅ。魔法が使える職業の中でも上位職でしゅ。そんなピノを簡単に契約させられるなんて。どんな職業でしゅか?気になりましゅ。
無意識下でも同意がないと契約できないってのはあるんでしゅけどね。
ぐりたんと、ぐりたんに頭を押さえられたスター君はまだ土下座をしたままでしゅ。
土下座は、謝る時の最大級の形で、足とお腹をペタンと地面にくっつけて、両手は揃えて鼻先辺りに伸ばし、お耳をペタンと倒しておくのが礼儀でしゅ。
ぐりたんは綺麗にできてましゅね。
…謝り慣れてるんでしょうか?
別の世界で言うごたいとーちに近いかもしれないでしゅ。
ごたいとーち…?ピノはどこでそれを調べたんでしゅかね?
ともかく、このままじゃスター君のお鼻がつぶれちゃいましゅね。
「ぐりたん、大丈夫でしゅよ。頭をあげてくだしゃい。むしろ久し振りに会えて嬉しかったでしゅよ」
ピノがそう言って、ようやく、渋々、ぐりたん達…ぐりたんは頭を上げてくれたでしゅ。
スター君は即ガバッと頭を上げてお鼻を気にしてましゅ。
潰れてないでしゅよ。大丈夫でしゅ。
「…土下座してた理由を聞いたら、いくらピノちゃんでも…おこるでしよ。ぐりも巻添え喰らったようなものでしが…」
「やっぱりスター君でしゅね?どうしたんでしゅか?」
「ピノよ!我は魔王になったのだ!ふっふっふっ」
「スター君…ごっこ遊びはそろそろ卒業した方がいいでしゅよ?早い子は就職もして番も見つけてるんでしゅよ?お隣のお宅の息子しゃんは主任になったんでしゅって!」
「ぐはぁっ!女子の現実を見た冷静なツッコミ!!胸が痛い!オカンみたいなことを言わないでほしい!お隣の息子さんて誰だ!!」
「まぁおふざけはさておいてでしゅ。…スター君はほんとに魔王様になったみたいでしゅね…」
スター君の内包する魔力は桁違いにあがってましゅ。
きっとその気になれば、ピノでも対抗できないでしゅ。
「ひとまずはおめでとうでしゅ。職業がなかったこと…ちょっと気にしてたんでしゅよね?」
「な!そ、そんなことはないぞ!?我は我だからこそ我であって、特に職業とかそういうのは関係ないのだ!それよりピノよ!改めて召還によく応えてくれた!共に世界を征服しよう!我の配下、四天王の一人として迎えよう。さぁ!我に仕えよ!!……あ~、その、協力してくれると嬉しい…ぞ?」
「何だかんだでスター君は変わってないでしゅね。女の子に弱いところとか。ふふっ」
「ピノちゃん…魔王しゃまを止められなくてごめんでし。我が儘をいうでしが、できたら魔王しゃまを一緒に支えてあげてほしいんでし。ぐりだけじゃ…足りなくて。捲き込んでごめんでし…でも…」
「ぐりたん、大丈夫でしゅって!魔王様、よろしくお願いしましゅ。ただ、ピノは悪い事を考えるのは苦手でしゅよ?」
「む?そこが気になるか!我が考えるぞ!得意だからな!ピノは計画に穴がないかの確認や、いざとなった時、ぐりの補佐をしてくれればよい!あと四天王が一人な?四天王!」
スター君、ううん。魔王様の言いたいことがわからずに、首をかしげちゃうのは仕方ないでしゅ。
「う…無垢なきゅるるんとした瞳で見られると…我は溶けるかもしれぬ!!」
「溶けないでしよ!けどなんとなく気持ちわかりまし。罪悪感があるでし。ピノちゃん…魔王しゃまは、配下に『四天王』が欲しくてピノちゃんを呼んだんでし。賢者で有能だからって…」
「ピノはそれだけで呼ばれたんでしゅか!?」
うるうるした瞳で見つめると、二人ともギシッと固まって、壊れかけのマリオネットみたいな動きになったでしゅ。
「そ、それだけではないぞ?ぐりも言っただろう?有能だからだ。それに…幼馴染みだからな。一緒に遊びたかったのもある」
「魔王しゃまには内緒でしが、暴走を止めるにはピノちゃんにも協力してほしいんてし。ぐりだけでは難しくて。スター君は何とか勇者にたおされちゃうような魔王しゃまになってほしくないんでし。勝手なお願いでしが…ピノちゃんが頼りなんでし!!」
ギクシャクしながらも、偉そうにふんぞり返る魔王様。
目が泳いで変な汗をかいてそうでしゅ。
そんな魔王様に聞こえないよう、小声でピノを気遣いながらも魔王様が心配でどうにかしてあげたいぐりたん。
男の子って、面倒臭くて…可愛いでしゅね。
「ベビチラの時を思い出しましゅね」
唐突な言葉に二人が止まりましゅ。
「ピノね、学校を卒業して、王族の相談役にならないかってスカウトされてたとこだったんでしゅよ?」
「王族より、魔王の相談役の方が有意義だぞ!!」
「ひぇっ!?ピノちゃんほんとごめんでし!!あの、ダメだったらゆってくだしい!魔王しゃまにどうにかさせましから!!」
変わらないでしゅね。二人とも。
強くなったけど、根っこは昔のまま。
ピノは学校でも高位貴族の男の子達に囲まれてて、その子達はピノがというより、ピノの職業である賢者を欲しがってたんでしゅ。
俺様系の第二王子様、クールな宰相ご子息、熱血魔剣士見習いや、年下の天才魔道士くん。
一杯いたけど、ピノのことを見てくれた人はいなかったでしゅ。そんなの寂しいし、ピノをバカにしてましゅ。
…あれ?よく考えたらどこの乙女ゲームの主人公でしゅかね?
ん?おとめげーむってなんだったでしゅかね?
スカウトの話も、
「オレ様に興味を持たないなんて、おもしれーオンナでちゅ。オレ様の相談役として、まずは側近になるでちゅ。…オマエがその気なら、妃も…考えてやってもいいんでちゅぜ?」
なんて
第二王子様からの、半ば強制に近いお誘いがあって困ってたんでしゅ。
はぁ。できの悪いおとめげーでしゅ。
恋愛に絡めて来るのはやめて欲しいでしゅ。
女の子が皆王子様に惚れると思わないで欲しいでしゅ。
そもそも恋愛もまだよくわかんないでしゅのに。
はぁ。それに比べて…二人とも力が強くなったのに、何故か安心感がありましゅね。
「…そうでしゅね。こっちの方がやりがいがありそうでしゅ。魔王様、よろしくでしゅ」
魔王様はほっとしたのか、嬉しいのか、ポップコーンジャンプを繰り返してましゅ。
反応が可愛いでしゅね。
「ぐりたん、魔王様を、スター君を、二人で守りましょうね。ピノも考えましゅ。賢者でしゅから」
ウインクをしながら小声でぐりたんに伝えると、瞳をうるうるさせて、小さく「ありがとでし」と言ってくれたでしゅ。
…あれ?たまにぐりたん、女の子みたいに可愛い時があるんでしゅ。不思議。
なんかこのシチュエーションもアレでしゅね。
『幼馴染み(♂)がいつの間にか魔王様になっていて、側近にならないかと迫ってきます』
なんてラノベでしゅかそれ?
いやラノベってなんでしゅか!?
ともかく、ピノは幼馴染みの彼らが不幸にならないよう頑張りましゅ。
歴代の賢者だってしたことないお仕事にチャレンジするんでしゅ!
まずは再会を祝して乾杯から。
新しい関係を始めましゅよ!




