勘違いの何が悪い
「はぇっ?」
綺麗な夕焼けの下、間抜けな声が響く。
そう、俺は今小伊瑞に想像もできないことを言われたところだ。
まぁ、でも、べ、別に期待とかしてなかったし!全然ショックとかじゃないし!むしろ狩りに誘われることを待ってたみたいな。
いや、そんなことよりも。
「狩りに行くってどういうことだよ」
「そのままの意味よ」
よし、一旦整理しよう。うん、全然わからん。
「いや、狩りに行くって何をだよ。魚とか?」
魚を捕ることを狩るっていうのかな?言うわけないよな。
「なんで魚を狩りに行かなきゃいけないのよ。狩るのはモンスターよ、モンスター。わかる?」
ごめん。全然わかんない。わかったことは魚を捕ることを狩るっていうので伝わるアホな子っていうのはわかった。
「モンスターって、この世界にいるわけないだろ。そんなのアニメやゲームとかの中だけだと思けど?」
「何言ってんの?当たり前じゃない。ゲームの中だけど?」
「一言も聞いてないんですが」
俺がそういうと小伊瑞は「まぁ、いいじゃない」と言った。
やっぱりアホな子のようだ。
「つまり、どうゆうことなんでしょうか?」
俺が改めてそう聞くと小伊瑞は高校生にしては慎ましすぎる胸を張り得意気に話し出した。
「あなた、このゲームは持ってるでしょ?」
「そ、それは…!」
小伊瑞の手に持たれていたのはドラゴン狩人、略してドラ狩だった。
そして、ドラ狩は俺が一緒にできる人を探していたゲームだ。
「今日、あなたがこのゲームの話をしてるのを聞いてたの。あなた、このゲームを一緒にできる人を探してたんでしょ?」
教室で何かの視線があったのはどうやら小伊瑞のものだったらしい。
でも、今はそんなことどうでもいい。
「お、おう。えっ?それってつまり」
「そう、私も一緒にできる人を探してたの。だから一緒にできない?」
「よろしくお願いします」
俺は即決した。
クラスのカースト上位の人とは一緒にいたくない?知るかそんなもん。
そんなことを考えていたら小伊瑞はホッとしたような顔をしていた。
「良かったー。断られたらどうしようかと思ってたのよ。私、自分から遊びに誘うの初めてだったから」
「そうなの?」
俺の問いかけに小伊瑞は「うんっ!」と答えた。
小伊瑞は見た目が良いからいつも誘われてばっかりだったんだろう。
初めて人を遊びに誘うのって緊張するよな。自分のは覚えてないけど。
「じゃあ、何時にするっ?」
「うーん、そうだな。今日はもう遅いから明日とか大丈夫?」
「えっ…?大丈夫だけど今日じゃないの?」
明日と聞いて小伊瑞がシュンとなった。
しかし、こればっかりは仕方がない。その気持ちも凄くわかるけど。
「さすがにもう5時過ぎだしな。ということで、詳しいことは明日学校でってことで」
「うんっ、わかったわ!明日早く集まってゲームするからね!」
小伊瑞の顔がパァァと明るくなりそう言った。
喜怒哀楽が全部顔に出るなこの子。
「おう、学校終わってからの時間だけどな」
「わかってるって。じゃ、また明日ね」
「おう、また明日」
小伊瑞は小さく手を振りながら帰って行った。
それを見送った後、俺はワクワクしながら家路についた。
まだまだ、続くので宜しかったらこれからもご覧下さい。