第六夜・お店でつれづれ。
お店で買い物。
どこか遠くにお出かけした先ならまだしも、毎日の買い物は刺激が少ない。
いつものお店、いつもの買い物……代わり映えしない日課のひとつ……ではない! ちょっとアンテナを立てていれば、ちょいちょい愉快なことに出くわせるのだ。
例えば、近所のスーパーで目にする、商品の表記間違い。『クリスますケーキご予約受けたわまりマス』って、一枚いちまい印刷してショーウィンドウにはっつけた張り紙とか。一瞬思いません? 「え? 間違ってないだろ」って。よく見てください、違ってマス。
あと冬に見かけた、『寒い日はお鍋で温まりまりませんか』って広告とか。ちょっと見ると正しいように見えるけど、よく見ると『まり』が一つ多い。こういうのを見つけるのが趣味(?)なんである。
近所の個人商店も(今はそうでもないけど) 昔は誤字の宝庫だった。『キャヤベツメンチカツ』なんてのには笑った。かえって『キャベツ』って打つほうが楽だと思うけど。あと一番受けたのが『オイキムチ』ならぬ『おいキムチ』! 何かキムチに呼びかけてるみたいで大変に可愛らしく、肩を震わせて店先で笑ってしまったことがある。
あと、間違いでもないんだろうけど、見かけると微妙な気分になる表記がある。『生さんまの塩焼き』とか。焼いてる段階でもう『生』ではないだろう。『生でも食べられる、新鮮なさんまを塩焼きしました』ということなんだろうけど、ちょっとおかしい気がしてしまう。
ちょっと系統が違うけどツボにきたのは、二十七円の鳥皮に『五十円引き』のシールが張ってあったやつ。
(値段マイナスになっとるやんけ! 買ったら二十三円くれるのかぁああ!?)
とか思いつつ、必死で笑いをこらえながらそのままその場を去ってしまった。後学のために買っておくべきだったかもしれない。
表記間違いもさることながら、たまに出くわす面白いひとたちもツボにくる。
だいぶ前、今はつぶれてしまったスーパーで出会ったおじさんは可愛かった。「ん~ん~んんんん、ん~♪」なんて超ご機嫌で鼻歌を歌いながら、お菓子を物色してるのである。しかもその場にしゃがみこんで。
以前、大型スーパーで見かけたおじちゃんも面白かった。彼は文具コーナーで店員さんを相手に、何ごとか一生懸命訊ねていた。
「いやいや、そんなに大きくねえんだ、これくらいだ(手で大きさの身ぶりをしながら)これくれえなんだ、こんくれえの…………コーヒー!」
思わず吹き出しそうになった。
(コーヒーが欲しくて、何で文具コーナーにいるんだ! いくら何でも、このへんに求めるブツがないのは分かるだろう!)
と突っこみたかったが、私はやっぱり笑いをこらえて黙ってその場を後にした。
たまに出会うこういうことは、もちろん物理的には何の得にもならない。ならないけれど、出くわすとちょっとばかり嬉しくなる。
毎日出かけるスーパーやお店で、今日も『ちょっと笑える出来事』がありますように。