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第四夜・ハナのはなし。

 我が家では猫を二匹飼っている。おばあちゃんの三冬(みふゆ。通称ナプ)と、新入りのハナ。今回はハナについて話そうと思う。

 そもそもこの猫、初めはカラスに襲われて、食われるところだったらしい。そこを小学生の女の子ふたりに助けられて、我が家にやってきたのである。

 なぜ我が家だったのか? 答えは、『家に猫が群れていたから』。母が野良にえさをやっていたために、一時期我が家周辺には、猫がつくだ煮にするほどいたのである。そこを見こまれて、(あそこなら飼ってくれそうだ)と考えた、面識のなかった小学生が助けを求めてきたのである。

 はっきり言って、これには困った。なんせ猫は自力でミルクが飲めないほどに小っちゃいのだ。しかも両の後ろ足にケガをしている。結局ミルクはスポイトを使って飲ませ、ケガは動物病院に二日にいっぺん通うことで落ち着いた。ミルクや下の世話は、妹がほぼ一手に引き受けてくれた。

 この猫に関しては、きもの冷えたことがある。何回目かの病院の帰り、何か気に食わなかったらしく、足の包帯を食いちぎったのである。当然血がだっらだら出て、車内の母とわたしは(こいつもしかしたら死ぬんじゃないか)とまで思った。

 だがこいつはそれが元で死ぬこともなく、うなぎのようににょろりにょろりと成長した(普通の猫より体が細長いのだ。しっぽもかなり長い)。今は先住猫のナプにちょっかいを出しては『ハーーッッ!!』とか怒られながら、家猫生活を満喫まんきつしている。

 ちなみに『ハナ』とは、父が名づけた名前である。連ドラの『花子とアン』からとったらしい。『こんな絵に描いたような貧乏暮らしの女の子が、こんなお嬢様学校入れるわけないだろー』とか言いながら、けっこう気に入っていたようである。

 しかし、無事に成長したのは良いのだが、このハナにはだいぶ参った。食べ物と見れば電光石火でかぶりつき、『ウー』と全力でうなるのである。食べ物を引きはがそうとすると、その人の指が血まみれになる。今はだいぶ落ち着いたが、一時期は猫のくせしてカレーを盗み食いするほどであった。

 ちなみにこのハナ、遊び道具には事欠かない。一番スタンダードでよく遊ぶのは、ペットボトルのキャップ。放っとくと夜中まで遊んでいる。かしゃかしゃかしゃかしゃうるさいので、そういう時は戸棚なんかに隠してしまう。そうすると、おとなしく寝るか……というとそうではない。たいていの場合、寝てる人の足にタックルをかましてくる。三回に一回くらいの確率で、足に乗っかって『ふみふみ』してくることもある(※ふみふみとは、子猫が母猫のおっぱいをまさぐる時のなごりらしい)。かなり可愛い。

 今ハナのマイブームは、母が庭の畑で育てたアズキである。小さい豆を追っかけて追っかけて飽くこともなく、疲れすぎるとその場にへたりこんで燃えつきたりしている。あと、冷蔵庫の下にアズキがはまりこむと取れなくなるので、放置してよそに行ってしまう。おかげでたまに冷蔵庫をずらしてみると、アズキが十個くらい発掘できる。

 ハナは弟が好きである。特に『風呂場にいる弟』が好きらしい。弟が風呂場のとなりにある洗面所に行くと、ごろごろ言いながらすり寄ったりしている。だが昨夜は弟の買ってきたビタミンウォーターのふた(普通のペットボトルのキャップより二まわりくらいでかい)に夢中になって、『風呂場にいる弟』をガン無視していた。弟は『俺はふたに負けたのか……』とか軽くショックを受けていた。

 あとこの猫は、寝言が多い。起きてる時はあんまりしゃべらないのだが、寝てるとしょっちゅう『ううん……』『うーん』とか小さく鳴いている。これも可愛い。

 起きてる時しゃべらない分しっぽはおしゃべりで、いっつもふりふりふりふり振っている。『しっぽをすばやく大きく振る時は、かえって不機嫌』とかある本に書いてあったが、それも個人差(個猫差?)があると思う。ハナはあんまりいじくられると嫌がるが、抱き上げてるのを開放してもぴゃっと逃げてはいかないのだ。で、しっぽをぶるんぶるん振り回しながらこっちを振り向くのである。『もう終わりなの?』と言いたげに。

 そんな訳で、カラスに食われるところだった猫は、人間さまの夕食の鶏肉をもらったりしながら、今日も元気に生きている。


 追記・最近はだいぶ猫らしくなりました。

 もう野良根性が抜けたらしく、食べ物ののったテーブルの上でも『待ってれば誰かくれますね。無理やりとってかなくても食いっぱぐれはないでしよね』とばかりにしっぽを振って待ってます(たまにから揚げダッシュしていったりしますが)

 最近は寒いらしく、毎晩のように布団の中に入ってきます。十時半ごろになると『早く寝ろや~布団の中入れろや~』と言わんばかりにタタミをばりばりひっかいてます。可愛いです(親ばか)

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