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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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94 白銀の戦士

お待たせいたしました。ダンジョン救出編の最後になります。追い込まれた勇者たちに対してタクミたちは間に合うのか・・・・・・


ブックマークありがとうございました。

「何よ! 一体あれは・・・・・・」


 風子が言葉を失う。魔物を引き千切りながら近づいてくる白銀のロボットはどう見ても魔物よりはるかに危険な存在だった。風子だけでなく芳樹や利治もその姿に目を見張りつつも最大限の警戒をして身構えている。


 そしてそのロボットが目の前に立ちはだかって3人を見下ろした時、その背中から圭子がひょっこりと顔を出して手招きをする。


「早くこっちに来なさい!」


 その思いがけない再会に腰を抜かすほど驚いている3人に早くしろと圭子の声が飛ぶ。同じように立ち竦んでいる茜の腕をとって全員がタクミのパワードスーツの陰に隠れた時、そこには女子一同が待ち構えていて暖かく彼らを出迎える。


「何なの一体これは?」


 頭の上に盛大に???を浮かべた風子がそこにいる女子たちに問いかける。


「まあ何でもいいじゃない。あなたたちが予定を過ぎても戻らないから迎えに来たのよ」


 圭子の言葉にようやく事情を理解した4人、すぐに空が彼らもシールドで包み込み、具合の悪そうな茜の様子を見る。


「呼吸器や循環器の動きを制御する神経の働きを阻害する毒にやられている。これが解毒剤、すぐに良くなるはず」


 小さなアンプルを風子に手渡して彼女が飲ませると、茜の容態は見違えるように回復する。それはそうだ、3000年後の解毒薬なのだから。


「ありがとう、助かったわ」


 本来なら何らかの後遺症が残るレベルの毒素だったが、空のおかげで以前と同じように元気を取り戻した。


「気にしないでいい、それよりも早く此処を出るのが先決」


 空はこれから繰り広げられる戦いの行方を注視している。彼女の視線に釣られて勇者パーティー一同がその方向に目を遣る。



 そこではすでにタクミが勇者に近づいている。彼の出現によって戦いの場の空気が一瞬止まったかのように双方とも手を止める。


「邪魔だ、下がっていろ」


 比佐斗の肩を掴んで後ろに放り投げるタクミ、勇者はその勢いに吹き飛ばされて『ガシャーン』と金属製の大きな音を立てて地面に転がっている。


「お前は何者だ!」


 突然現れて自分を放り投げた白銀の物体が敵か味方か判断がつかない比佐斗は声を上げたが、後ろから現れた岬の怪力で両腕を掴まれて何の抵抗も出来ないままにパーティーメンバーと同じようにシールド内に収容される。


「一体どうなっているんだ?」


 最初に風子が感じたように大量の???を浮かべた勇者が、周囲を見渡すとそこにはクラスメートの顔が並ぶ。


「決まっているでしょう! この程度の敵を蹴散らせない弱っちい勇者様を助けに来たのよ」


 感謝しなさいというプレッシャーをかけながら圭子の超上から目線での説明がなされる。タクミに対しての言い方はずいぶん柔らかくなったが、他の男子に対しては相変わらずのようだ。


「そうか、助かったよ」


 彼女にプライドも何もかも粉々にされた比佐斗の小さな言葉がシールド内に伝わった。



 その頃タクミは魔族たちの魔法をその体に平然と受けている。どれだけ受けてもその頑丈なボディーはビクともしないがいい加減ウザクなってきた。


「岬、すまないがアスカロンを貸してくれないか」


「はい、ご主人様」


 岬はシールドから出て、収納から取り出した刃渡り2.5メートルの聖剣を片手でブンブン振り回しながらタクミの傍らまで届ける。彼女に向かって飛んできた魔法は全てその剣が生み出す衝撃波で霧散していく。 


「ご主人様、どうぞご武運を」


 剣を手渡しながらタクミの健闘を祈る岬、こういう古風なところがタクミのハートを引き付けるに違いない。パワードスーツに隠れてわからないがタクミは『やられた!』という表情になっている。


 ほんの一時の甘い時間が終わり岬がシールドに戻るのを確認してタクミは聖剣を肩に担いで堂々と宣言する。体高2.5メートルの白銀の怪物が丁度釣り合う長さの大剣を肩にしている。その姿だけでどれ程までに危険な存在なのか伝わるのだろう、魔族たちの全身が粟立ち震える。


「さて、ここからは全部俺のターンだ。一切の反撃は認めない。」


 タクミにとって剣は本来の武器ではないが、本人は戯れに使ってみようというつもりで軽く素振りをしながら言い放つ。相手が魔族のエリートだろうがそんな事を歯牙にも掛けてはいない。



 相対する距離は約20メートル、タクミはパワードスーツの出力を最大にして一気に詰めると横薙ぎに聖剣を振るう。刃渡り2.5メートルの範囲にあった全ての物がほぼ同時に刈り取られて、魔族の首がまとめて5つ地面に転がった。恐るべき切れ味だが聖剣の持つ力はそれだけではない。その後方にいた魔物たちをその衝撃波で尽く微塵切りにしている。


「貴様、たびたび我らの邪魔立てをしおって!」


 憎々しげな表情で睨みつける魔族たちだが、もうこの時点で負け犬の遠吠えに成り果てている。後は殺される順番待ちをしているに過ぎない。


「安心しろ、俺にとってもお前たちは邪魔者だ。こうやって理不尽に殺していこうが一切気が咎める事はない」


 無情な宣告がタクミから発せられる。エルフの村で残忍な手口でサラナの姉を爆殺して以来タクミは魔族たちに指の先ほども情けを掛けなくなっていた。それは自業自得で今更謝ったところで取り返しがつかない出来事だった。


「眷属ども一斉に掛かれ!」


 魔物がタクミに向かって押し寄せようとするが、聖剣の一振りで数十体単位で消し飛ばされていく。タクミが10回も聖剣を振らないうちにフロアーに密集していた魔物たちはきれいに細切れになっている。それらの死体はダンジョンに吸収されて瞬く間に消え去る運命だ。


「おのれ、もっと眷属たちを呼び出せ!」


 焦った魔族が命令を出すがそれは彼らにとって命取りに他ならなかった。詠唱を始めた魔族たちの前にタクミが人智を超えた速度で接近する。


「どうやらお前たちが消えれば面倒な魔物たちももう出ないという事だな」


 眷属召喚の呪文を唱えていた魔族の顔が盛大に引き攣る。直後彼らは術式を唱える姿のままその頭部が次々に地面に落ちていった。




「あれは一体何者なのよ!」


 シールドの中では戦いの行方を見つめていた風子がそのあまりにも一方的な展開に呆然としながら、魔族を全く問題にしない白銀のロボットのようなものを指差している。突然現れたその正体を知りたいのかもしれない。


「あれはタクミ君ですよ」


 メンバーが教えていいものかどうかと迷っている時に春名が真実をペロッとばらしてしまう。全くこの令嬢は口が軽いにも程が有る。


「タクミ君・・・・・・剣崎君の事?」


「その通りです」


 自分の最愛の人の雄姿を自慢出来て鼻高々な春名だが、後ろにいる圭子からゴツンと拳骨が入る。春名は涙目で頭を抑えて蹲っている。


「このバカ令嬢! 口が軽いにも程があるでしょう!」


 春名はなぜこんなに圭子が怒っているのか意味がわかっていない。あれがタクミだとしたら色々と説明しなければならない事情が山ほど出てくるというのに全く考えが至っていないのだ。


「それで、何で剣崎君があんなロボットみたいな格好をしているのよ?」


 そら来たと圭子は思った。春名が口を滑らせたせいで面倒になりそうだと覚悟を決めた時に、横から美智香の発言が飛び出す。


「あれは自衛隊が極秘に開発していた戦闘装備、まだ試用段階のもの」


「そんなのがあったんだ!」


 美智香の口から出任せをどうやら信じてくれたらしい。当時自衛隊は秘密裏に核兵器を開発しているとか、戦闘ロボットを量産しているとか、東京都庁が変形して動き出すとか有りもしない噂が実しやかに囁かれた時期だったのも幸いした。


 仮にこの話が本当だとしても何で自衛隊の試作装備をタクミが持っているのだという話になるはずだが、途方もなく大きな嘘の前では小さな事柄は霞んでしまうものだ。風子もあまりに美智香の話が現実離れしていたので逆に疑う余地も無く信じてしまった。そもそも異世界に召喚された時点で大概の事は信じざるを得ない心理状態になっているせいもある。 



 女子たちがそんな話をしている間にタクミと魔族の戦闘は最終局面を迎えている。タクミが剣を振るうたびに魔族たちは切り伏せられて、残りは指示を出していた一体のみしか残っていない。  



「我らは貴様たちの事を絶対に許さんぞ。一人ずつ必ずや地獄に落としてやる。精々それまで足掻くがよい」


 その言葉を残して転移しようとする魔族だが、タクミがそんな時間を与えるはずが無い。


「言う事はそれだけか、じゃあ死ね」


 無造作に振り下ろされた聖剣がその体を脳天から両断する。きれいに二つに割られてその体は支えるものを失い血飛沫を撒き散らしながら地面に崩れ落ちた。




「はいはい、お疲れさん」


 それを見届けてから圭子を先頭に全員がシールドから出てくる。


「ご主人様、見事な剣捌きでございました」


 岬はタクミから聖剣を受け取って軽く一振りして表面の血糊を飛ばしてから収納に仕舞い込む。


 タクミもパワードスーツを解除して元の姿に戻るとそこに風子が駆け寄ってくる。


「春名ちゃんの言う通り本当に剣崎君だったんだ。助けてくれてありがとうございました」


 まだ信じられないものを見たという表情は隠し切れないがそれでも丁寧に頭を下げる。


「気にするな、ギルドからの依頼で来ただけだ」


 素っ気無い言い方だがそれは彼女に余計な気を使わせないための配慮で、タクミなりに一応気は使っているのだ。


 その後他の勇者パーティーのメンバーもタクミに口々に礼を述べて、一行はすっかり魔物の姿が消え去ったフロアーを階段に向かって歩き出すのだった。

何とか間に合ったタクミたちです。次回は救出後のお話になりますが、話はそう簡単に終わりそうもありません。感想、評価、ブックマーク引き続きお待ちしています。次回の投稿は木曜日の予定です。

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