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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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78 停戦交渉

お待たせいたしました。最後の兵力の問題にタクミが乗り出します。これで無事に紛争が終わるのでしょうか・・・・・・


そういえば街中でチョコの安売りをしていますね。あれは一体何のイベントの跡だったんでしょうか? 世の中にはまだ知らないことがたくさんありますね。

 門の外に戻ったタクミはシュエンブルグの兵士を集めて矢継ぎ早に指示を出す。兵士たちはタクミにその権限が全く無い事に気がついていないのか、彼が言うままに動くだけだった。


 実際彼らもタクミがどのような立場でここに居るのかわかっていないのだが、実際に彼が言う通り子爵の手勢のゴロツキたちを始末して子爵の身柄まで拘束してきたのを見て、逆らう訳にはいかないと思って従っている。


 それに彼の言葉に従っていれば故郷に帰れるのだから、どちらかというと自発的に従っている兵士がほとんどだった。


「交代で街の治安を維持するとともに、子爵の拠点の死体の片付けと住民へ子爵一派はもう居ないことを伝達してくれ」


 タクミの指示に隊長は頷いて、兵士たちを編成してそれぞれの任務に振り分けていく。さらにタクミは残った兵士たちからゲーラ川まで子爵を護送する者を募る。


 せっかく撤退の目処がついたこの場を離れてわざわざ戦場まで赴く役目だ、それほど希望者は居ないだろうとタクミは考えていたが、そこで兄弟や友人が戦っているのでぜひ彼らを助けたいと言って50人近くの兵士が名乗りを上げた。


 中々勇敢で根性のあるやつらだなと彼らの事を見直したタクミは志願者全員を率き連れて翌日出発する。


 無事に停戦の話がまとまったらすぐに再びこの街に戻ってくるので、女子は馬車ごと残してタクミは一人で彼らを率いてゲーラ川に向かう。


 子爵は馬に括り付けて絶対に逃げられないように騎馬と徒歩の兵士全員がその周りを囲んで厳重に警戒しながら進んだが、彼を取り返そうという動きも無く一行は無事に川が見渡せる小高い場所に到着する。


 ここから見た範囲では、川に架かる橋を巡って両岸で軍勢が睨み合って膠着した状態のようだ。


 タクミは出発の号令をかけてこちら岸の子爵の軍勢の本陣に近づいていく。


「タンネの守備隊がどうしてここに居るんだ?」


 本陣からその様子を不審に思った騎士が出てくる。どうやら彼がこの戦場の責任者なのだろう。


 タクミは彼の前に立って収納から一枚の書類を差し出す。


「俺は国王陛下の命を受けてこのたびの戦いの調停にやって来た者だ。無益な争いの原因を作ったシェンブルグ伯爵はすでに罰を下し、子爵はこの通り捕縛した。速やかにこの場から兵を引け! 俺が向こう岸に行ってあちらの兵も引かせる」


 タクミが差し出した書類はシェンブルグ伯爵を懲らしめるためにギルドを通して交わした契約書から国王のサインと紋章を偽造してタクミと空が作り出した偽の命令書だ。こんな物はスキャンすればいくらでも作り出せる。国王には事後承諾を得るつもりだ。


「国王陛下からの命令書! うむ、確かにこの紋は本物に違いない」


 騎士は先代の子爵に仕えていた頃、政府が発行した公文書を何度も見たことがあった。その時の文書と体裁はやや異なってはいるが、どう見てもサインと紋章は本物だった。


「陛下の命によって子爵家は取り潰し、タンネは陛下の直轄地になる。お前たちはこれから子爵の軍勢ではなくて陛下の直轄軍となるから心せよ!」


 有無を言わせない口調のタクミの言葉に驚きを隠せない騎士。元々今の子爵に義理立てする気は無く、ただ領民を守るためにここで戦っていた。それが一転して国王の権威が守られればどこの貴族もタンネには手が出せなくて領民は守られる。


 その上自分たちも王の直轄軍に取り立ててもらえるとなればこの上ない名誉だ。


「喜んで陛下の命に従います」


 深く頭を下げて感謝を示す騎士、彼も今までマフィアに子爵家を乗っ取られて臍を噛む思いでここまで耐えてきた。残念ながら子爵家の再興は出来ないが、それでもこれで街と領民は安泰だ。


「ではこのまま軍勢を岸から1キロ下げろ。俺が向こうに行って話をしてくる。むこうが強情な事を言ったら力尽くで言う事を聞かせるから心配するな」


 タクミの言葉を信じて騎士は全軍の後退を指示する。それに合わせてゾロゾロと下がっていく兵士たち。



 反対側の岸ではオットベルン伯爵の本陣が慌ただしい動きに包まれていた。今まで睨み合っていた敵が急に後ろに下がりだしたのだ。『今が攻める絶好の機会!』と逸る者や『何かの企みかもしれない!』と慎重になる者まで様々な意見が飛び交っている。


 とりあえず橋の近くで偵察をしていた者の意見を聞こうという事で一旦話は落ち着いたが、見張りの者が思わぬ情報をもたらす。


「国王陛下の使者を名乗る者が紛争の調停にやって来ております!」


 再び本陣は意見は飛び交い蜂の巣をつついたような騒ぎだ。この場に居るのは前線指揮官程度の者ばかりで、国王の使者の相手を努めるような大物は一人も居ない。


「と、とりあえず、その使者と会ってみるしかないだろう」


 最も位の高い指揮官がかなり取り乱しながらもそう判断した事でようやく落ち着きを取り戻す本陣。


「それでは使者殿をこの場にお連れいたします」


 見張りの者はそういい残して去っていく。いくら王の権威が然程高くないとはいえ地方貴族の家臣からするとそれは遥か雲の上の存在だ。その使者にどう対応しようかと様々な議論が白熱しかけた頃、その使者はついにやって来た。


「この天幕は小さ過ぎて入れないから、すまないが外に出できてほしい」


 入り口から声が響く。幕僚の一人が入り口の幕を撥ね上げて外の様子を覗いて立ち尽くしている。


 そこには高さ2メートル半を超える白銀の鎧に身を固めた巨大な物体が聳え立っていた。もちろんパワードスーツに身を固めたタクミだ。彼の姿を見た外に居る一般の兵士たちも口を空けてその姿を見ている。


「使者殿に間違いは無いでしょうか?」


 おずおずとした態度で指揮官はタクミに話しかける。こんなゴーレムのような者が暴れだしたら大変な事になるのは目に見えているからだ。


「間違いない、これが陛下の命令書だ。それから此方はオットベルン伯爵宛の手紙だ。すぐに伯爵に届けろ」


 完全な命令口調で用件を伝えるタクミ、ついでに縄で引き摺りながら連れてきた子爵の身柄も引き渡す。


「タンネは今から陛下の直轄領となる。一切の手出しは無用だ。もし陛下の命令が聞けないというのならばこうなる」


 タクミは周囲の兵士を左右に下がらせて、本陣の後方100メートルにある高さ10メートル程の崖にレールキャノンの狙いを付けて躊躇う事無く発射した。


『ドーーン!』


 演習場で砲をぶっ放すような轟音とともに崖は跡形も無く消えて土の山や木の残骸が周囲に飛び散っている。


 タクミのデモンストレーションはこれ以上ないくらいに効果的だった。あんな威力の魔法を見せ付けられては逆らう事など到底出来ない。


 もっともタクミは魔法など一切使えない。ただ単に手持ちの武器をぶっ放しただけだが、その場に居る者たちには恐ろしい高等魔法にしか見えなかった。


「すぐに伯爵に知らせます。街まで往復で2日かかりますがお待ちいただけますか?」


 指揮官の言葉に構わないと頷くタクミ、やはり力の裏付けがある外交交渉は話が捗る。


「子爵たちの兵は今からタンネまで撤退させる。お前たちも街まで戻れ」


 兵力の引き離しを強引に推し進めるタクミだが、指揮官たちに逆らう術は無い。彼の思うままに事が運んで交渉はまとまった。ただこれが果たして交渉と言えるのかは微妙な問題だ。


「陛下の仲裁を受諾する意思があれば、タンネまで使者を送って来い。安全は保障する」


 タクミはそれだけ言い残して川の反対岸に戻っていく。残された伯爵の兵士たちも慌てて撤収の準備を始めた。



 子爵側の兵士たちが待っている所に戻ってきたタクミ、本当に話がまとまるのか不安だった兵士たちが一斉に注目する。


「話はまとまった、戦いはこれで終わりだ! 文句があるやつは俺に言って来い!」


 元より誰も文句があるはず無い。皆が肩を叩きながら喜んでいる。


「このままタンネに撤収する!」


 タクミの号令に合わせて街を目指す兵士たち、その足取りは希望に溢れてとても軽かった。


読んでいただきありがとうございました。次回はたぶん最北の街に舞台が移ると思います。そこからいよいよ火山に向けた旅が始まるといいんですが、どうせ一悶着起こるのでしょう。ブックマークありがとうございました。引き続き、感想、評価、ブックマークお待ちしています。

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