75 害虫駆除
お待たせしました、暴れる場がほしくて痺れを切らしている圭子ですが、果たして今回こそはその鬱憤を晴らすことが出来るでしょうか・・・・・・
「圭子、そんなに突っ走ってもお前場所を知っているのか?」
圭子はその声で急に立ち止まってしばらく考え込む。
「人相の悪い連中は片っ端からぶっ飛ばせばいいんじゃないの?」
「それでは効率が悪いだろう、行き当たりばったりで肝心な相手を取り逃がすことになるぞ」
「なるほど、一理ある」
タクミの話に合理性を感じて頷く圭子、考え無しに勝手に体が動くので上手く宥めないと作戦自体が破綻することになるからタクミも真剣だ。
先走る圭子を何とか押し留めたところで、タクミは案内役のシェンブルグの兵士を5人選抜する。彼らの案内でゴロツキ共の拠点を虱潰しに殲滅していく方針だ。
街の中にある拠点は大きな所が3箇所、子爵の兵士たちが入り浸っている酒場とマフィアの時代から拠点にしていた屋敷、そして子爵の館の順で片付けていく。他にも小さな拠点があるそうだが、頭を潰してしまえばあとは烏合の衆に過ぎない。
一つ目の拠点となる酒場は街の目抜き通りの最も目立つ所にあった。兵士とは名ばかりのゴロツキが昼間から酒を煽り、2階の部屋に無理やり女性を連れ込んでは暴行を働いているらしい。
「圭子、わかっているとは思うが中には罪も無い被害者も含まれるから慎重にやってくれ」
「大丈夫よ、見掛けで判断するから!」
自信満々な圭子だが、本当に大丈夫だろうかと一抹の不安を隠せないタクミ、その横で美智香はすでに諦めた表情をしている。ここまで来たらもう彼女の好きなように遣らせるしかないとでも言いたそうだ。
幸い店の連中もグルなので遠慮する必要は無いそうだ。案内役の兵士たちを入り口に配置して、完全に店への出入りを封鎖する。
タクミを先頭にしてドアを開いて3人が中に入ると、きついアルコールとタバコや一部では麻薬の匂いまで立ち込める退廃した空間が現れた。
「何だ、オメーたちは!」
粗野な言葉が入り口近くの店員らしき人物から発せられるが、タクミは全く無視をする。
「美智香、空気の入れ替えをしてほしい」
タクミのリクエストで彼女は展開済みのタッチパネルを操作して、風魔法で外の空気を室内に送り込む。
「これで少しはお前たちの臭い息もましになるだろう。美智香、こいつらを制圧してくれ」
美智香は無言でパネルの一箇所に触れると、その瞬間室内には電気の嵐が吹き荒れる。雷鳴とともに室内を駆け巡る稲妻が、そこにいるゴロツキどもを次々に巻き込んで黒焦げにていく。叫ぶ間もなく男たちは床に倒れて絶命した。
「えーっ! 美智香私に残してくれないの!」
圭子は不満に頬を膨らませているが、タクミが『まだ2階が残っている』と言うと、一気に階段を駆け上がっていく。その目は完全に肉食獣の獰猛さを湛えて煌いている。
2階に上がった圭子は一番端の部屋のドアを開けて、中で女性の上に覆いかぶさっていた男を床に引き摺り降ろす。
「死ね!」
凄まじい嫌悪を込めて裸の男の腹を思いっきり踏みつける。
「グエー!」
男は何が起きたかも分からないままに、内臓が破裂して口から血を吹き出す。しばらくは何とか逃げ出そうともがいていたが、やがてその動きは止まって動かなくなる。
「さあ、次ぎ次ぎ!」
圭子には人を殺す罪悪感など全く無い。むしろ女の敵の害虫を駆除しているくらいの感覚だ。日本だったら適当に痛めつけて警察に引き渡すくらいで止めるが、この世界に来てからは『裁きは自らの手で行う』と心に決めていたのだ。
次の部屋にも彼女は押し入って、同様に不必要な害虫を駆除していく。だが、その騒ぎを聞きつけて部屋で女性相手に狼藉を働いていた男たちが素っ裸で次々に廊下に出てきた。
「うへー! キモッ!」
股間の汚い物をブラブラさせている者やまだ威切り立ったままの物を晒している者など、その姿は圭子の嫌悪感を増長する。
「汚物は消毒に限るわね」
中にはナイフや剣を手にしている者も居るが、圭子は全く怯む様子は無い。むしろその方が多少でも楽しめると心の中でにんまりしている。
「テメー、何者だ!」
「おい、よく見ろ! 中々の上玉じゃないか!」
男たちの間では圭子を巡って警戒する声と獲物が遣って来たと歓迎する声が交錯するが、彼らが余裕も持っていられたのはそこまでだった。
ゆっくりと男たちに接近していた圭子が不意に速度を上げると彼らの反応は遅れる。せっかく手にした武器を振り上げる間もなく、その拳を叩き込まれ、ローキックで膝を破壊され、あっという間に4人の男が床に転がっている。
「ガキの癖にいい腕しているな」
唯一圭子の動きに反応して素早く後ろに下がった男は、油断無く剣を構えて圭子を見ている。
対する圭子は床に転がる男たちの首の骨を踏み砕きながら、その男とも距離を徐々に詰めていく。
「どの道死ぬんだから無駄な抵抗をしないほうがいいわよ、その方が楽に死ねるからね」
圭子は男に対して最後の忠告をする。抵抗するだけ苦しむぞという宣告だ。
「素手で俺に敵うとでも思っているのか、バカなやつだな! 半殺しにしてお前を犯しながら殺してやるよ」
剣を構えながら男は不適に笑う。多少は腕に覚えがあるようで、その構えは圭子から見てもまあまあ合格点だ。
無防備に接近する圭子に対して男は剣を上段に構える。そこからわずかに右に体を開いて圭子から見て斜め右から剣を振り下ろした。
『ふむ、一応フェイントくらいは掛けられるんだ。でもそんな手には引っかからないよ!」
圭子は相手の剣に合わせて素早く体を開いて剣先を寸前でかわすと、その剣が戻らないうちに男のガラ空きの脇腹に右の拳を叩き込む。咄嗟の事で力の加減が出来なかった圭子の拳は、男を壁まで吹き飛ばして壁のシミに変えていた。
「念のため他の部屋も見ておくか」
各部屋のドアを開けて中を覗くが、そこには怯えている女性がベッドで身を震わせているだけだった。
「ああ、ゴロツキたちは全部始末したからあなたも自分の家に帰りなさい」
一言彼女に声を掛けてから圭子は1階に降りていく。
「終わったか?」
タクミの短い問い掛けに圭子はひとつ頷いて2階に居た者の処分が済んだ事を報告する。
「では次の拠点に向かおう」
タクミの号令で外に出る3人、外に居る兵士たちはタクミたちの掃討の間特に異常が無かった事を知らせる。まだ子爵たちにはこの酒場での異変は耳に入っていないはずだ。
次は子爵がマフィアだった頃に使用していた館で、館内には今でも50人以上のゴロツキが居るそうだ。
「全く統制が取れていないわね、これじゃあ私たちが一方的に虐殺をしているみたいでなんか気分が悪いわ」
進んでこの作戦に参加している圭子だが、相手があまりにも歯応えが無くて弱い者苛めをしているように感じている。もっともそれはタクミをはじめとしてこの世界に召喚された者が感じてしまう宿命のようなものかもしれない。
ましてやタクミたちは他の日本から召喚された生徒たちとは更にかけ離れた科学技術を使用出来るのだ。
だが圭子だけは『大地の篭手』の力はあるにしても、その身一つで魔族すらも倒すのは一体どういう体の作りをしているのだと突っ込まざるを得ない。
「よーし! 気を取り直して次ぎ行ってみよう!」
こうして圭子を筆頭に次の弱い者イジメに向かう3人だった。
読んでいただきありがとうございました。次回はいよいよ子爵の本拠地に乗り込むタクミたちのお話になりそうですね。このところ貴族たちとの話ばかりで中々目的地の火山が遠いです。あと5話までには何とか辿り着きたいと思っています。感想、評価、ブックマークお待ちしています。次の投稿は日曜日を予定しています。




