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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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74 タンネの街

戦場に踏み込んだタクミたちは次に子爵の本拠地を目指すようです。どうなりますか・・・・・・


ブックマークありがとうございました。

 たったの一撃で200人もの子爵の手勢を全滅させた事に驚きを通り越して顔面蒼白になっているシェンブルグの兵士たちに、陣地の死体の片付けと兵糧の確保を命じるタクミ。


 彼の言葉に抗う術の無い彼らは無残にバラバラになった体のパーツを掘った穴に投げ入れる。


 だが彼らは次第に熱心にその仕事に取り組み始めた。これには理由があって、死体には価値は無いがその近くに落ちている武器や防具にはまだ価値があるためだ。


 もちろん使えそうな装備は全て勿体無いからリサイクルする。どうせ元手は子爵から出ているのだから、適当な所で売り払って雀の涙程の給料の足しにするのだ。


 彼らはこれで家族に土産の一つも買って帰れると言いながら嬉々として働いている。この世界ではこのような行為が全く当たり前に行われており、立場が代われば明日は我が身だ。



 一通り片付けが終わったところでタクミは他の部隊が何処に展開しているか地図を見ながら確認する。シェンブルグの街からはおよそ3000人がこの一帯に駐屯していたが、そのうち800人が戦死や怪我などですでに居なくなっており、残りの2200人のうち半数がタンネの街に、半数がゲーラ川沿いに居るそうだ。


 特にゲーラ川はオットベルン伯爵の軍と直接睨み合っている場所で、多くの犠牲者もここで生まれているらしい。


 位置的にはここから半日の所にタンネの街があって、さらに半日進んだ所にゲーラ川がある。


「順番で行くとタンネから手を付けた方がよさそうだな」


 地図を見ながらタクミが提案すると女子たちも頷く。


 特に圭子は『今度こそは自分に出番をよこせ』と自己主張が激しい。


 岬も『もし手が足りなくなったら声を掛けてください』と言っているが、全員が青くなって彼女を押し止める。


 兵士たちにはこの場に留まって橋を守る振りをしながら、残りの部隊が合流するのを待って全ての部隊がひとまとまりで撤退をするように指示をすると彼らは大喜びでその指示に従う。何しろここは元々敵が来る心配がほとんど無い上に、無法者たちが姿を消したおかげで気楽に過ごせるのだ。


 早く故郷に帰りたい気持ちはあるが仲間の事も心配だし、それに人数が多い方が何かと安全なのでここで前線に居る部隊を気長に待っていると口々に言う兵士たち。その表情は緊張の糸が切れたようにすっかり元の平民に戻っている。彼らは皆この戦乱さえ無ければ街で普通に暮らしていたのだ。




 手を振って見送る兵士たちを残してタクミたちの馬車はタンネの街に向かう。


 タンネまでは半日だがもうすでに昼を過ぎているので途中で1泊野営をする。岬に危ない兆候が出掛かっているので、その晩はタクミが思いっきり可愛がって彼女を心行くまで満足させた。岬は幸せいっぱいでもう戦いの事など頭からすっかり抜け落ちている。


「ご主人様、大好きです!」


 ニッコリ笑いながら一言だけ告げて彼女は目を閉じる。その天女のような表情はタクミもつい見蕩れてしまう程魅力的で、彼は自分からその唇にダメ押しの口付けをするのだった。




 午前中のうちに馬車はタンネの街に到着する。


 当然門番がいるのだが、なぜかシェンブルグの兵がその役割を任されている。実はゴロツキどもは門番などという面倒な事は彼らに押し付けて、昼間から酒を飲んだり博打をしたり好き放題していた。


 日本でも明治時代に徴兵制が敷かれて試しにヤクザだけの部隊を作ってみた事があったが、これが全く役に立たなかったという嘘か真かわからない話がある。軍隊にとって規律を遵守するというのは最も重要な事だが、それが出来ない部隊というのは戦力として当てにならない。


「お前たちはシェンブルグの人間か?」


 タクミはズカズカと番をしている兵士に近づいて話を始める。兵士はいきなりの事に戸惑っているが、素直にそうだと認めた。


「そうか、俺は伯爵から頼まれてお前たちの撤退を支援するためにやってきた冒険者だ」


 タクミは彼の耳元で声をひそめて告げる。話している内容はでまかせもいい所だが、この際細かい事を気にする必要はない。


「何だって! 本当か?!」


 門番はタクミの言葉に驚いたように声を上げる。元々撤退の指示が出ている事は彼も知っているので、タクミの話がいかにも真実のように聞こえる。


「声が大きいぞ。ポーターテール川にいた子爵の兵は俺たちが全滅させて、仲間がすでに撤退の準備をしているぞ」


 タクミはもうこの門番は自分の話を完全に信じている事を確信している。ダメ押しに彼が助け出した隊の隊長名の手紙を見せる。これは本人に書かせた本物の手紙だ。


「間違いない! 本当に俺たちは帰れるのか?!」


 門番の顔が希望に輝いている。ムサイおっさんの喜ぶ様子などあまりタクミの趣味ではないが、この際贅沢は禁物だ。


「だからお前たちの責任者を呼んでほしい。お前からある程度事情を説明しておいてくれ」


 慌てて詰め所に飛び込んでいく門番、その間番をする者が誰も居なくなるがこの際そんな事はどうでもいいらしい。


 しばらくすると詰め所から隊長らしき人物が出てくる。


「話が聞きたい。中に来てくれるか」


 彼は丁重な物腰でタクミを詰所に案内する。馬車もいつまでも門の前に置いておくと怪しまれるので詰所の厩舎に引き入れておく。



 詰所で話を聞いていくと、やはり彼らも子爵の兵たちの横暴に身動きが取れなくて難儀をしていた。そこでタクミはあるプランを彼に告げる。


「承知した。この街に居る全ての部隊に知らせるので一日待ってほしい」


 隊長はタクミに頷いて協力を約束する。


 決行は明日の正午として、タクミたちは怪しまれないうちに馬車に乗り込んで、街から少し離れた所でこの日も野営した。




 翌日の昼前の時間、街の人間は何も知らずにいつものように昼食をとったり屋台に並んだりして思い思いに過ごしている。


 そこへシェンブルグの兵士たちが5人ずつで小隊を組んで街に触れ回る。


「正午から敵襲に備えて訓練を行う。訓練だから皆慌てないように!」


 街の各場所で大声で告知を行って街の人たちにはこれから訓練がある事を周知徹底しておく。もちろん子爵にも同様に訓練を行う旨は伝えてあるが、彼らはそんな事には全く関心は無かった。




 そして正午の鐘が響くと街には兵士たちの声が響く。


「敵襲! 敵襲! 南門に敵が来たぞ! 全部隊南門の外に集結せよ!」


 大真面目な顔で敵の襲撃を告げる兵士たち、だが予め告知した通り訓練なので街の人たちは全く不自然に感じていないし、敵襲と聞いて慌てる者もいなかった。


「どうやらうまく行っているな」


 タクミは門の外からその様子を見て門の外に兵士が終結するのを待つ。


 点呼を取って全員が門外に出たことを確認したらタクミたちが行動を開始するお時間だ。


「よーし! 今度こそ思いっきりやってやるわ!」


 圭子と美智香を引き連れてタクミは子爵邸に向かっていく。すでにパワードスーツは展開済みで、その白銀に輝く巨大なシルエットにシェンブルグの兵士たちは目を丸くしている。


「油断するなよ」


 タクミの注意にも拘らずいつものように暴走気味に先頭を走って突っ込んでいく圭子だった。

次回は子爵邸に突入になると思います。圭子が先頭を切って向かっていますが、一体どれだけの血の雨が降ることやら・・・・・・


感想、評価、ブックマークお待ちしています。次は金曜日の予定です。

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