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49 魔族の目的

魔族を急襲するタクミ達、どんな展開になるか・・・・・・

 魔族の拠点を襲撃する準備を整えたタクミ達、すでにパワードスーツを展開しているタクミの腕が振られた。


 美智香が打ち合わせ通りにアイスシャベリンを3発放つ。氷の槍は魔族が張っていた障壁にぶつかって砕けた。


 いきなり攻撃を受けた魔族達はやや慌てた様子で天幕から飛び出てくる。村を襲った魔族が話していた通りその数は6体。


 魔族の姿を認めるなりタクミと圭子が一気に左右から間合いをつめる。二人はそれぞれ両端にいた魔族に殴りかかった。


 彼らはその様子を見て慌てて防御体制をとろうとするがタクミ達の方が一歩早い。左側の魔族には圭子の手加減なしのパンチがその腹に突き刺さり、口から血を吐いて倒れこんだ。


 右側の魔族はタクミに殴りかかってこようとするが、そんな抵抗など歯牙にもかけずにタクミが一撃で葬り去る。


 両者とも体に障壁を張っていたようだが、村を襲った魔族達と同様にタクミ達の前ではその程度のものは全く役に立たない。


「間合いをとって態勢を立て直せ!」


 一際大きな体格の魔族が指示を出す。タクミ達の急襲で後手に回った魔族達は何とか距離をとろうとするが、左右はタクミと圭子に挟まれて、後ろには天幕がある。


 残るは前方しかないが、そこには美智香と岬が待ち構えていた。


「美智香ちゃん、私から行きます」


 岬が戦場とは思えないおっとりとした声で美智香に一言かける。美智香は余裕の表情で頷いてその様子を見ていた。


 岬は手にしているアスカロンを大きく左側に振りかぶる。その様子を見たタクミと圭子は慌てて退避した。


 そしてその剛力を全開にして一気に横薙ぎに振るう。刃渡り2.5メートルの大剣が空を切り裂き衝撃波を生み出す。


『バギバギバギ』  


 周囲の木を根こそぎへし折りながら衝撃波は魔族に向かう。大木をなぎ倒して自分達に向かってくる恐ろしいその波動に魔族達は障壁を最大にして耐えようとしたが、木々と一緒にまとめて吹き飛ばされたいった。


 岬がアスカロンを一振りしただけで、彼女が立つ位置から扇状に100メートル先まで森が消えている。

 

 そこにはただ木が全て同じ方向を向いて倒れているだけの光景が広がっている。


 岬はアスカロンを収納にしまいこんでから一言つぶやいた。


「月に代わってお仕置です!」


 月世界人だけにうまい事を言うなどといった突っ込みを入れたいところだが、彼女は魔族のやり口を聞いて心から怒っていた。


 普段優しい人が怒ると手がつけられないことがあるが、今まさにそんな状態だ。


 タクミは魔族たちの生命反応を探っている。あんなダンプカーと正面衝突するような衝撃で生きている者があるとも思えないが、念のために確認していた。


 そしてその表情が『おや?』といった風に変わる。


「どうやら一体生き残っているようだ」


 タクミの視線の先で折り重なって倒れている木が持ち上がって、下から人影が現れた。先ほど指示を飛ばしていた体格のいい魔族だ。


 ややふらつきながらもその金色の瞳に宿る闘志は衰えていない。


「貴様ら、よくもこの魔貴族たる我に傷をつけたな! この報いは千倍にして返してやるぞ!」


 憎々しげな表情で岬を睨み付ける。その口からは牙が伸びて本性を現したの如くになっている。


『この台詞って、やられ役の三下の専売特許よね』


 圭子は心の中で毒づいている。彼女だけでなくこの場にいる女子一同皆そう思っていた。


 タクミ達の最大の懸案はもはやこいつを誰が片付けるかに移っていた。


「おい、どうするんだ?」


 タクミが彼女達の意向を確認するが反応が薄い。どうやらここはタクミに任せるということらしい。


 その間に魔族は岬に向かって魔法を放つために詠唱を開始した。


 だがタクミがそれを黙って見過ごすわけがない。彼は魔族に向けて何の躊躇いもなくブラスターガンの引き金を引いた。


「うおっ!」


 ブラスターガンから放たれた弾丸自体は障壁に阻まれたが、その爆発の衝撃まで全て吸収出来ずに魔族はその勢いで尻餅をつく。


「おい雑魚野郎! 相手は他にもいるんだよ!!」


 タクミは魔族に向かってゆっくりと歩を進める。


 立ち上がった魔族は近づいてくるタクミの姿を見て、容易ならぬ敵と見定めた。


「我を本気にさせるとは貴様達も運が悪い。我は魔族の中でも並び立つ者のない存在、魔公爵ランデルベスなり。我の最大の奥儀を持って貴様達をこの場から消し去ってやるは!」


 ランデルベスは呪文の詠唱に入る。どうやらかなり高度な術式を発動するつもりらしい。


「本当に愚かだな。まるでランデルク人のようだ」


 タクミは心から呆れていた。彼が言うランデルク人とは、惑星全体が狂信的な宗教に染まって、周辺の星系で無差別テロを起こした挙句に、惑星ごと消去された種族のことで、銀河連邦内では今でも愚かな者の例えとされている。この魔族と名前が似ているのはただの偶然だ。


 タクミは先ほどと同じようにブラスターガンを放った。これでランデルベスを倒そうというのではない、詠唱を妨害しているだけだ。


 同じように吹き飛ばされて今度は仰向けにひっくり返っているランデルベスをタクミは見下ろしている。


「おい、雑魚野郎! 念話でもテレパシーでもいいから仲間に伝えろ。お前達が狙っている装置の謎は俺達がすでに手に入れている。封印も解除したから俺達以外は手出しは出来ないぞ」


「貴様! なぜ封印のことを知っているのだ?」


 さすがにタクミに封印の事を持ち出されて、ランデルベスは慌てた。自分達以外にまさか秘密を知っている者がいるとは思っていなかったのだ。


「理由など話す必要はない、ここともう1箇所の封印は俺達が解除してすでに使用権者として登録済みだ。お前達に出る幕はないし、いずれは魔王城まで行ってそこにある装置も俺達の物にするつもりだ」


 魔族のプライドをズタズタにするタクミの宣言、エルフの村にある装置の封印はまだ解除していないが、こう言っておけば今後この村が狙われる危険が無くなるだろうというタクミの考えだ。


「そうか、ならば貴様達を手に入れれば封印は解除出来るという事だな。喜べ貴様達は今後全ての魔族から付狙われる事になるだろう」


 ランデルベスは封印を解く手っ取り早い方法が見つかってニンマリとしている。それにはタクミ達に勝たなければならないという前提を忘れているかのように。


「全ての魔族に狙われるのだったら、全ての魔族を滅ぼせばいいだけの話だ。手始めは雑魚野郎、お前からだ!」


 タクミは銀河連邦当局から『危機管理ランクSS』の発動命令を受けている。ひとつの種族を滅ぼす事に対して彼の良心が痛むことはない。


「大きく出たな、やれるものならやってみるがよい。何十万という魔族がお前達に襲い掛かってくるのだ」


 ランデルベスの言葉は多少のブラフも含んでいる。言葉でタクミ達を屈服出来れば儲け物! といった考えがあった。


「最後にひとつ聞く、お前達の魔王はこの世界の者か?」


 タクミは以前から疑問に思っていた事を尋ねる。何で最近になって魔族が装置の封印を解除しようと試みているのか、その理由が知りたかった。


 エルフの村で聞いた話では彼らは今まで魔族と人間の争いには無縁だった。それがなぜ急に彼らの古代機械が狙われるようになったのか、必ず理由があるはずだと考えていた。


 だがそのタクミの問いでランデルベスの顔色が変わる。


「貴様! 一体どこまで知っているというのだ!!」


 彼の表情で答えは出たも同然だ。


「なるほど、魔王とやらは別の世界からやってきて、大方元の世界に戻るために装置を動かしたいといったところか」


 魔王は元の世界に戻るためにPMIシステムを起動させたいが、おそらくシステム自体に対する知識が不十分なのだろう。いまだに封印すら解けないでいる。


「さて聞きたい事は全部聞いた、お前も俺達のことを仲間に伝えたんだろう。ではさっさと終わらせるぞ」


 タクミはレールキャノンをランデルベスに向ける。最初から彼の運命は決まっていたのだ。ここまで生かしておいたのは情報が欲しかっただけの事。


 そして全く表情を変えることなく引き金を引いた。


『ブーン・・・・・・ドカーン!』


 至近距離から直撃を食らったランデルベスは跡形もなく消え去った。その残骸すら遠くに飛び散って付近には見当たらない。


 かなり上位の魔族でもタクミ達にかかればこんなもんだ。


「よーし、撤収するぞ!」


 彼の一声で村に戻る一行だった。


 

読んでいただいてありがとうございました。感想、評価、ブックマークお待ちしています。次の投稿は木曜日の予定です。

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