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48 後始末

昨日に引き続いての投稿です。おかげさまで体調は万全な状態に戻りました。健康って素晴らしい事ですね。


お話は魔族の襲撃の落とし前をどうつけるか・・・・・・

 エルフの村で騒乱はひとまず収拾した。村人の中には怪我をした者がいたが、彼らは空がすぐに手当てをしたので、命に別状はない。


 亡くなったのは最初に魔族の襲撃を警告した男性と、そして入り口付近にもう一人。


 村人達とともにタクミと空が結界の入り口の様子を見に行くと、そこには何か丸い物が転がっていた。


「姉さん!」


 サラナがその丸い物に駆け寄る。それはアルソナの頭部だった。入り口を開いた途端に発動した爆発の術式で五体をバラバラに吹き飛ばされたその頭だけが奇跡的に無傷で残っている。


 彼女はサラナの姉で一緒に森の調査に向かい、魔族に遭遇した時に囮となって他の皆が逃げる時間を稼ごうとした。その結果捕虜となり拷問を受けた挙句に、このような悲惨な運命を辿る事となった。


「姉さん、こんなひどい・・・・・・」


 姉の頭を抱きかかえたままサラナはそれ以上の言葉を継げない。


 周囲の者やタクミ達も魔族の非道なやり方に憤っている。地球で言えば、何も知らない人に爆弾入りのリュックを持たせて、自爆テロの実行犯に仕立て上げるようなものだ。


 銀河連合内でこのような手段の戦い方を行った場合は、その対象者に対しては『危機管理ランクSSS』が発動され、惑星ごと即時殲滅される最も重い罪に当たる行為だ。


 もちろんタクミもその事を理解しており、今回魔族が取ったやり口は、その首謀者と責任者に対する死刑執行書に自分でサインしたものと彼は判断している。


 村人達は多くがこの場に残り、結界の修復に当たっている。結界が大きく揺らいだので、その揺らぎが収まってから精霊達を集めて再度結界を張り直すそうだ。


 この場を去って村に向かった者達はアルソナの家族や関係者で、これから弔いの準備をする。


 結界の修復に関しては村人達に任せるしかないので、タクミもこの場を離れて圭子達が見張っている生け捕りの魔族の元に戻った。


「素直にしゃべらないと今度は膝を捻じ切るよ!」


 相変わらず魔族を踏みつけたままの圭子が脅し文句を放っていた。


 対する魔族は一切口を開こうとはしない。


「圭子、代わろう」


 タクミはこの前と同じように自白剤を手にして声をかける。


「ああ、タクミ戻ったんだ。こいつなかなか素直に話さないからお願い。もう両肩と両足首は外してあるから」


 さらっとものすごい事を言う圭子、彼女は民間人なので捕虜虐待云々は全く気にする必要がない。それでも物には限度があるが・・・・・・


 タクミが地面に転がされたままの魔族の首に自白剤のパッケージを押し当てると、今までかなりの苦痛にも耐えていたその強情さが消え去って、途端に表情がうつろになる。


 タクミの尋問によって得られた結果は、彼らは12人でこの地に来ていること。目的は当然この村にある古代機械でそのために森に拠点を作っていること。


 また、魔王城の結界はまだ解除には至っていないとの情報も得ることができた。


 必要な情報は聞き出すことができたので残るはこの魔族の処分だが、いつの間にかタクミたちの所にやってきていたサラナが強い口調で申し出る。


「お願いします、こいつは私の手で止めを刺してやりたいんです。どうかお願いします!!」


 彼女は調査に出た村人達のたった一人の生き残りで自ら殺されかけたばかりでなく、姉をあんな酷い方法で殺されている。自分の手に掛けて殺してやりたいと考えるのはもっともな事だった。


 タクミも圭子も彼女の気持ちを察して頷く。二人にとっては自分でやらなければならない理由はなかった。


「ありがとうございます、これで姉さんと亡くなった村の人達の手向けになります」


 彼女は腰に差している小振りのナイフを引き抜くと、目を閉じて祈りの言葉を唱える。もちろん魔族のためではなく亡くなったエルフ達のために。


 そして地面に膝をついてその首に何度もそのナイフを突き立てた。


 魔族は自白剤の効果が続いているので、痛みを感じないままに死んでいった。それはタクミ達にとってもかなり人道的な死刑執行だった。


 血だらけのナイフを手にしたままで頭を下げるサラナ、彼女の目には涙が浮かんでいる。亡くなった者の復讐を遂げて改めて悲しみが心の底から溢れてきた。


 その涙は次第に大粒になり、ナイフを取り落として地面に泣き伏してしまう。


 タクミ達はそんな彼女を黙って見つめるしかなかった。


 やがてサラナは落ち着きを取り戻し一礼してからタクミ達に申し出る。その顔にはまだ涙の跡が残っていたが、それでも気丈に振舞おうとする。


「ありがとうございました。それから魔族の残党を探しに行く時は私も同行させてください。ご迷惑はおかけしません」


 彼女の申し出に考え込むタクミ達、だがここに戻ってくるには道案内が必要だ。


「わかった、今日中に出発するがそれでもいいか」


 魔族の残党が襲撃の失敗を察知する前に拠点を急襲したいので、弔いが終わってからなどと悠長な事を言っていられなかった。


「はい、構いません。姉とのお別れは今ここで済ませました」


 決意を胸に秘めてそう言い切るサラナにタクミは準備が出来次第出発する事を告げた。


 


 シェルターで待っている春名達を呼びに行って装備を再点検してから、結界の入り口でサラナと待ち合わせをする。


 やって来たサラナは服を着替えて、腰には先ほどのナイフと父親から借りた短槍に弓を装備している。


 彼女の姉が亡くなった場所で一旦黙祷してから全員が結界の外に出た。


「どうやって魔族の拠点を探すの?」


 森を歩き出そうとした時にマッピング担当の美智香がもっともな事を発言する。


「こういう時はシロちゃんですよ!」


 春名がそこら辺を嗅ぎ回っていたシロを抱きかかえる。


「シロちゃん、さっきの魔族の臭いがする所を探してくださいね」


 シロは春名の顔を見ながら『キャン』と一声吠えた。どうやら彼女の言った事がわかったようだ。さすが霊獣、とても頭がいい。


 シロを先頭にして森の奥に向けて歩き出す。深い森なので道は存在せず、タクミは岬から借りた草刈り機(大)で下草を刈って道を造っていく。


 この草刈り機(大)は、ホームセンターで売っている物よりも強力で、ガソリンエンジン搭載の完全なプロ仕様だ。


『だから何でこんな物を持っているのか!』と突っ込みたいが、うれしそうに手渡してくる岬の笑顔には敵わなかったのでありがたく使わせてもらう。


 シロは臭いを頼りに迷うことなく森を進む。草原で保護した頃よりも体が一回り大きくなって最近は色々やんちゃな事もするようになったが、相変わらず皆から可愛がられている。


 時々立ち止まっては魔物の接近を教える。小型の魔物はシロが自分で倒してしまうし、本当に優秀なガイドだ。


 森を2時間ほど進むとシロは立ち止まった。アルソナは傷ついた体を引きずるようにして何時間もかけて村に辿り着いたが、実際はそれほどの距離ではなかった。


「この先に拠点があるようだな」


 タクミの言葉で一気に戦闘体制に移行する。ゆっくりと接近していくと、天幕が張られているのがわかる。


 用心深く草木で覆ってその姿を隠そうとしているが、本職のタクミからすればちょっと中途半端な感想を抱く出来栄えだった。



 美智香の魔法を大量に打ち込む事も検討したが、万一エルフの捕虜がいた時の事を考えるとこの手は使えない。


 従って魔族を正面から押しつぶす方向で、タクミは作戦を組み立てた。


「春名、空、サラナはここでシールドを張って待機、美智香と岬は天幕との中間地点で合図とともに支援攻撃開始、俺は右から圭子は左から突入する。紀絵は美智香達と一緒にいて圭子を支援してくれ」


 一同はその指示に頷く。サラナは自分も攻撃に加わりたそうだったが、自らの実力では足手纏いに成り兼ねないので自重した。


 タクミと圭子は左右に音を立てずに散開していく。美智香達3人はゆっくりと前進した。美智香はすでにウインドウを開いていつでも魔法を放つ準備を終えている。


 岬は美智香の所に魔族が迫ったときの護衛役だ。彼女は『聖剣アスカロン』をその手にしている。何回か練習で素振りをした時、彼女の怪力で振られたその大剣は衝撃波を発し、その勢いだけで木を5本まとめて吹き飛ばした。


 木が生い茂るこの狭い場所では刃渡り2.5メートルを超える大剣では取り回しがし辛いように思えるが『それならば木ごと吹き飛ばせばいい』というかなり大雑把な岬の発想だ。



『準備はいいか?』タクミがハンドサインで一同に合図する。全員がOKの合図を出して準備が完了した。


 さあ! 戦闘の時間だ!


読んでいただいてありがとうございました。感想、評価、ブックマークお待ちしたいます。


次の投稿は火曜日の予定ですが、早目に書き終えた場合は月曜に投稿するかもしれません。

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