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38 封印

前回に続いて魔族がらみの話です。

「岬、俺は圭子達の方に援護に行くから、ここは任せていいか?」


 これ以上魔族がやってくる気配がないので、タクミは進行方向に現れた2体の魔族を相手にしている圭子と美智香の様子が気になっていた。


 二人いればエルダードレイクさえも倒せるので、やられることはないだろうと思っているが、何が起こるかわからないので心配はしている。


「ご主人様、ここは私が見張っていますので、圭子ちゃん達をお願いします」


 岬は大剣を手にしたままでにっこりと微笑む。頼もしさと可愛さが同居していて『これは反則だろう!』とタクミが思うくらいに魅力的だった。



 シールドに覆われて固まって停めてある馬車を回り込んでタクミが前方に向かうと、魔法の打ち合いになっているのか派手な炎や氷の槍が飛び交っている様子が飛び込んでくる。


 圭子達の前に現れた魔族は2体とも魔法使いタイプのようで、二人に向けて魔法で攻撃しているようだ。


 だが、美智香は敵の攻撃を反対属性の魔法で打ち消しながら、カウンターで手を変え品を変えて様々な魔法を撃っている。


 圭子は自分に向かって飛んでくる魔法を・・・・・・コブシで叩き壊していた。


 どこまでも脳筋な女子だ。だが、飛んでくる魔法の中心にある術式が込められたコアを的確に破壊するその腕は見事なものだった。


「タクミ、そっちは終わったの? こいつらは私達のの獲物だから手を出さなくていいわよ!」


 魔法を叩き壊しながらじりじりと魔族に向かって前進する圭子は、視界の隅に入ったタクミに声をかける。


 彼女の余裕の表情を見たタクミは『ここは任せて大丈夫そうだ』と判断するが、万一に備えていつでも飛び出せるように心構えはしておく。


 紀絵は圭子に身体強化の魔法を掛け続けていた。タクミは彼女を守るように隣に位置を移す。


「紀絵、大丈夫か?」


 美智香と違ってまだ何の称号も得ていない彼女の魔力量はそれほど多くなく、すでに半分以上を圭子のために費やしていた。


「まだもう少し頑張れます!」


 健気に答えるがかなり疲労の色が濃いのが見て取れる。


「圭子、紀絵の限界が近い。早めに決めてくれ!」


 タクミの言葉を受けて、圭子が一歩踏み込もうとする。


 それを聞いていた美智香は圭子に魔法を放っていた魔族に迫雷撃を1発お見舞いした。


 美智香はタッチパネルの操作だけで魔法を放てるので、敵の魔族に比べて魔法の発動が圧倒的に早い。ここまで相手に合わせて魔族が使用する魔法を解析しながら応戦していたので、全く余裕があった。


 美智香が放った魔法を防御するために、魔族は咄嗟に障壁の魔法を展開する。


 その一瞬圭子に対する攻撃がやんだ。だが、彼女にとってはその一瞬で十分だった。


 強化されたその身体能力を最大限に生かして一気に間合いをつめると、魔族が美智香の魔法のために展開していた障壁ごと砕く1発をがら空きの腹に叩き込む。


「ぐえーーー」


 体をくの字に曲げて頭を下げた顎にめがけて膝蹴りを追加すると、魔族は仰向けにひっくり返った。


 圭子は素早くマウントポジションをとると顔を殴り続ける。1発ごとに骨が砕ける『ゴキッ』という音がするが、そんな事にはお構いなく殴り続ける。エルダードレークの鱗を砕くコブシの雨が降ってくるのだから、やられる方はたまったものではない。


 10発入ったところで、魔族は顔を血だらけにして絶命した。すでに顔面は原形を止めていない、非常に無残な死に様だった。


 仲間がやられたところを見て形勢が不利になった最後の一体はその場から逃走を図ろうとするが、美智香がそんな事を許すわけがない。


「これで止め!」


 そう言って電撃を連発で発動しようとした手をタクミが止めた。


「美智香、すまないが生け捕りにしてもらえないか?」


 タクミに何か考えがある様子を見て取った美智香は、後ろ向きに逃げ出している魔族の背中をめがけて弱い雷撃を放った。


 逃げることに全力を向けていた魔族は、障壁を張る間も無く感電して倒れる。


「心臓はまだ動いているはず」


 タクミのデーザーガンと同じ程度に出力を調整した魔法で魔族の意識を奪った美智香は『この後一体どうするの?』といった表情でタクミを見る。


「ちょっと聞きたいことがある」


 タクミは先ほど彼の前に立っていた魔族が言った『封印を解除する』と言う言葉が気になっていた。尋問のために1体は生かしておきたかった。


 彼は失神している魔族に近づいて、収納から取り出したペンのような物をその首に強く押し当てた。


「美智香、こいつに水を掛けてくれ」


 言われた通りに彼女が水魔法で頭から水を掛けると魔族は意識を取り戻すが、その表情はどこか虚ろな様子だ。


 タクミが魔族の首に押し当てたのは、体の自由を奪う薬剤と自白剤がミックスされた注射器だった。タクミはトロンとした表情をしている魔族に話しかける。


「お前達が解除しようとしている封印とは一体なんだ?」


 薬のために意識がはっきりしない魔族は抵抗をすることなく聞かれた事に答え始めた。


「封印とは我らの神が残した古代の英知、世界の全てを支配できる限りない力を与えるものを固く封じ込めるもの」


 おおよそタクミが予想していた通りの返事が帰ってくる。ラフィーヌのダンジョンにあったPNIシステムのモニターに魔王城という地名が表示されていた。


「封印を解除するためになぜ生贄が必要なんだ?」


 ラフィーヌのダンジョン地下では数字を入力するだけで施設内に入れたことを考えると、どうも様子がおかしい。


「封印を開くためには呪文を正しく唱えなければならないが、我々にはその一部しか伝わっていない。解除の際に違う呪文を唱えるとその者の命が奪われる」


 その説明でタクミは納得がいった。魔族たちは解除のためのキーワードを探しているが、それはまだ見つかっていない。


 そのために人を攫っておそらく一言一言唱えさせているのだろう。かなり長いキーワードを膨大な時間と手間を掛けて魔族は見つけようとしている。


「その封印は魔王城のどこにある?」


 これが最も聞きたかった事だ。タクミは絶対にこれを聞きだすつもりでいた。


 だが、その場所を話そうと口を開きかけた魔族は急に苦しみ始めた。体は麻痺しているので苦悶の表情しか出来ないが、明らかに苦しんでいる。


 そのままひとつ大きなうめき声を上げると魔族は死んだ。まるで命と引き換えに秘密を守るかのように。


「何かの魔法が発動した形跡がある」


 そばでその様子を見ていた美智香が指摘する。彼女の見立では魔族の体内に何らかの術式が仕込まれていて、口から発する言葉によってその術式が発動するような仕組みらしい。


 まだきちんと解析したわけではないが、大まかな仕組みとしては間違いないようだ。


「どうやらあまり悠長にしてもいられないな」


 同じように尋問の様子を見ていた圭子も頷く。魔族達が封印を解くのにあとどのくらいかかるかわからないが、なるべくその前に自分達でその秘密を解き明かしておかなければならない。


 この星の文明レベルで手を出すにはPNIシステムはあまりに危険が大きすぎるからだ。


 下手な事をするとその影響は全銀河に波及しかねない。初めは調査のつもりだったが、最早それだけでは済まなくなってきた。


 事の重大さにタクミと美智香は頭を抱えたが、圭子と紀絵はシステムの事が全くわかっていないので『ふーん、そうなんだ』程度の反応しかしていない。


 今後の事は一先ず街に着いてから相談することにして、ギルドに報告するために魔族の死体を収納にしまいこんでから、先を急ぐタクミ達だった。 


 

読んでいただいてありがとうございました。評価、感想、ブックマークお待ちしています。次の投稿は月曜日の予定です。新たな街に到着するお話になります。


これから年末にかけて色々立て込むので、投稿ペースが上がりません。何とか週に3話は書きたいと思っていますが、少なくなる事もあるかもしれません。その時はどうかご勘弁を・・・・・・頑張って書いていくつもりなので応援してください。

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