30 数的不利
深夜の投稿です。またまた内容的に深夜がふさわしいので・・・・・・
二人が洗面所に姿を消して何もすることがないタクミは、大きなベッドに腰を降ろしてボーっとしていた。
これからの事を考えると悪い予感しかしないので、あえて何も考えないようにしている。
すぐに洗面所のドアが開き二人が出てくる。
彼女達は昼に買った色違いのネグリジェを着ている。やわらかいコットンの生地で膝丈のごく普通のデザインだ。
岬はもう少し色気のあるものにしようと思ったが、紀絵はこれがいいと譲らなかったので彼女に合わせた。
「ご主人様、空ちゃんにやったように私達もベッドに運んでください」
そういえば今朝、全て暴露されていた事を思い出してタクミは寒気を覚えた。
しかし、全て知られているので彼女達には逆らえない。
「紀絵ちゃんから先にどうぞ」
岬の声でタクミが彼女に近づく。眼で『いいのか?』と問いかけると小さく頷く。
そっとお姫様抱っこをしてベッドに乗せる。日本にいた頃はいくら力があるタクミでもかなり抱えるのに苦労したかもしれないが、痩せた今は簡単に持ち上がる。
次に岬を抱えるとその大きな胸が揺れる。紀絵も小さい方ではないが、クラス一の巨乳には逆らえない。
二人をベッドに運ぶと紀絵が奥につめて、二人の間に場所を作る。
「ご主人様こちらにどうぞ」
二人の間に出来たスペースをポンポンと叩きながら岬はここに来いと言う。
だがそのためには、彼女の体を乗り越えなければならない。『早速きたか』と思いつつ彼女に覆いかぶさらないように注意してベッドにもぐりこもうとする。
しかしタクミの体が岬の真上に差し掛かったとき、彼女の両手がタクミの両頬を捉えた。
逃げようとしてもびくともしない、岬はそれほど力をこめている様子はないのだが、タクミは万力で挟まれたように動きを封じられた。
そのままゆっくりと下に引っ張られる。
触れ合う二人の唇。岬の両手はタクミの体に巻きついて体ごと密着するように彼を自分に押し付けていく。
しばらくして岬の両腕が緩んだと思ったら、彼女は体を少しずらして紀絵に聞こえないようにそっとタクミの耳元でささやいた。
「ご主人様、同じ事を紀絵ちゃんにもしてあげてくださいませ。『いいのか?』などと無粋な言葉は禁止ですよ。優しく彼女をリードしてくださいね」
タクミの体は解放された。どうやら岬は紀絵の補助役を務めるようだ。
これだけ言われてはタクミとしても紀絵を放っておくわけもいかない。
どうしようかと悩んだが、体を硬くして眼を閉じている彼女に優しく話しかけた。
「こっちにおいで」
耳元で紀絵に聞こえるような小さな声でささやくと彼女はぴくんと反応した。
そっと背中に腕を差し込んで、その体を引き寄せる。
依然体を硬くしたままで、両手を胸の前で組んでいる。
反対の手でそっと髪に触れて軽く撫でると、硬かった体が少しずつほぐれてきた。
きっと緊張しているんだろうなと思いながら、優しくその額に口付ける。
額から口を離すと紀絵はわずかにタクミの胸に顔をうずめた。
タクミはその耳元でささやく。
「紀絵、今までお前の気持ちに気が付かなくてゴメン、でもこれからは紀絵のことを大事にするから俺のそばにいてくれ」
紀絵は小さく頷く、そしてその体は時折小刻みに動いていた。
よく彼女の様子を伺うとどうやら泣いているらしい。
「紀絵、どうした?」
優しく問いかけると彼女は胸にうずめていた顔をわずかに上げる。
「タクミ君、うれしい」
それだけ言うと再び顔をうずめた。
後ろから岬が抱き着いてきた。そしてタクミの耳元でささやく。
「ご主人様、満点です。でも私はまだ紀絵ちゃんのようにご主人様の気持ちを言葉で聞かせてもらっていません」
言われてみればその通りだ。タクミは悪い事をしたと思って岬に振り返る。
「岬のことはもうあの日からずっと大事に思っている。これからも俺のそばにいてくれ」
「ご主人様うれしいです!」
そう言って岬もタクミに抱きついたまま泣き出した。
泣いている二人に挟まれてタクミは一体どうすればいいか途方にくれるが、とりあえず髪を撫でたり軽く口付けをして二人が落ち着くのを待った。
ようやく泣き止んだ紀絵の顔を少し持ち上げて、その口にゆっくりと自分の口を近づけていく。
唇が重なった瞬間、紀絵の腕がタクミの背中の回された。
少し長目の口付けをかわしてから『少し待っててくれ』とささやいて今度は岬の方を向く。
彼女も落ち着いたようでうれしそうにタクミを迎えた。
タクミと岬はすぐに寝入ったが、紀絵は初めての経験になかなか寝付けなかった。
『うれしい、こんなにタクミ君に優しくしてもらって・・・・・・大事にするとも言われて・・・・・・お父さん母さん会えなくなったことは寂しいけど、私この世界で生まれて初めて幸せを感じています。いつかこの話を二人に聞かせることが出来たらいいな・・・・・・どうか心配しないで、みんなに囲まれてこの通り私は元気です。二人とも私が帰る日までどうか元気で、おやすみなさい』
タクミの背中に触れながらそっと眼を閉じる紀絵だった。