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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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28 攻略者

ダンジョンの後日談です。

 微妙な雰囲気の中で朝食をとり始める一同。


 春名と岬は何かを期待したワクワク顔でタクミと空を見ているが、圭子はムスッとした顔、美智香に至っては汚い物でも見るような眼でタクミを見ている。


 この雰囲気に新しく入ったばかりの紀絵はついていけずに、どうしてよいのかオロオロしていた。


 食事が終わっていつものように圭子が切り出す。


「空、夕べタクミに何をされたかちゃんと話しなさい!」


 有無を言わせぬ口調で彼女に迫る。


 空は基本的に正直者なので隠し事は出来ない。圭子に迫られると何もかも話してしまう可能性が高い。


 このままでは不味いのでタクミは空を止めようとした。


「空、色々プライバシーの問題があるから・・・・・・グッ!」


 圭子の動きは素早かった。


 気配を消してタクミの後ろに回りこんだと思ったら、スッと腕を首に回してチョークスリーパーで固める。


 タクミが抵抗できないのをいい事に女性陣は空から洗いざらい全てを聞き出そうとする。


「まあ、そんな事までしてもらったんですか!」(春名)


「すごいです、空ちゃん。私も早く追いつきたいです!」(岬)


「・・・・・・・・・・・・」(美智香)


「・・・・・・・・・・・・」(紀絵)


 美智香の無言は呆れ返って言葉が出ないという意味で、そのタクミを見る眼が彼の精神を削っていく。


 紀絵はそういう話に慣れていなくて真っ赤になって俯いているため無言になっていた。


 話が進むに連れて圭子の腕に力が入ってタクミを締め上げていく。もはや生命の危険が迫るレベルに近づきつつあるが、いくらタップしても圭子は腕を緩めようとはしなかった。


 最終的に空の告白が終わるまでタクミは肉体と精神を削られ続けて、最後には口から魂が抜け出していた。


「まったく油断も隙もあったもんじゃない!」


 捨て台詞を残してタクミを解放する圭子、最早タクミのライフは限りなくゼロだった。


「タクミ君、大丈夫ですか? 今度は私にもお願いしますね」


 春名はそんな状態に置かれているタクミの口に軽く口付ける。


「ご主人様、早く私にもお願いします」


 岬は誰にも聞こえないように小声でささやいてから、タクミの額にキスをした。


「タクミ、昨日はありがとう」


 空は短いお礼だけを言って、タクミの頬を撫でた。


 すでに圭子と美智香は部屋に戻っており、紀絵はその光景を呆然と見つめている。


「ノンちゃんもやりますか?」


 どこかの無料体験コーナーのような気楽な口振りで春名が紀絵を誘う。


 その言葉にハッとして我に返った彼女は春名の誘いの意味に気がついて、再び真っ赤になって俯いてしまった。


「あれ・・・・・・ノンちゃんはタクミ君のことが嫌いですか?」


 下を向いたまま無言で首を横に振る紀絵。


「だったら今がチャンスですよ! さあさあ、今ならお買い得!!」


 春名は彼女の腕を取ってタクミの前に引っ張ってくる。


 紀絵は真っ赤な顔のまま春名とタクミの顔を交互に見ていたが、意を決したように顔を寄せていく。


 躊躇いがちに気を失っているタクミの頬に唇を軽く触れさせてから顔を上げた。


「おめでとうございます! これでノンちゃんはタクミ君のお嫁さん候補第4号です!」


 一斉に拍手が起こる。まだ顔を赤くして俯いている紀絵の手を春名がとった。


「ノンちゃんがお嫁さん候補になった記念に、今夜はタクミ君と相部屋にしますから頑張ってくださいね」


 紀絵は「さすがにそれは心の準備が・・・・・・』と言い掛けたが、春名の勢いに押されて何も言えない。


 そのまま女子4人は部屋に戻っていく。誰もいなくなった一階のホールには、意識を失ったタクミが取り残されていた。


 まだ上がってこないことに気がついた圭子が回収に来るまで、タクミはその場にしばらく放置されていた。




「よし、冒険者ギルドに行くぞー!」


「おおー!」


 圭子の掛け声とともに一同はギルドに向かう。


 朝から酷い目に合ったタクミもようやく意識を取り戻して同行しているが、彼のテンションはどん底まで落ち込んでいる。


 ギルドに到着するなり圭子は紀絵を受付カウンターに連れて行く。


「すいませーん、この子の登録をお願いします。あと、ダンジョンを攻略したんですけどどうすればいいですか?」


 登録の受付用紙を出しかかった受付嬢の動きが止まる。


「今なんて言いました?」


「だから、この子の登録」


「いえ、そのあとです」


「ダンジョンを攻略したんですけどどうすればいい・・・・・・」


 受付嬢は圭子の腕を掴んで真剣な表情で問いかける。


「あなた、冗談ですよね。500年間誰も攻略したことが無いラフィーヌのダンジョンですよ。それをこんな見るからに初心者のあなた達が攻略なんて」


 圭子はその言葉を聞いて憤慨した。


「冗談なんて言う訳無いでしょう! ちゃんと攻略して昨日帰ってきたばかりよ!!」


 彼女の声はでかい。ただでさえ地声が大きいのにちょっとキレかかっているので、ギルドの一階にいる全員の耳に入る声だった。


「おい、あの嬢ちゃんがダンジョンを攻略してんだってよ」


「だったら俺はもう5回は攻略しているな」


「違いねえ!」


 ほとんどの者が彼女の言うことを信じずにバカにした笑い声が聞こえてくる。


 その声が圭子の耳にも入り、さらにキレかかりに輪をかけた彼女はタクミを呼んだ。


「タクミ、証拠になりそうな物出してよ」


 今日は圭子の言うなりにならざるを得ないタクミは収納からヒュドラの鱗を取り出す。


 縦横1メートルを超える巨大な鱗の出現に目を見開いた受付嬢は慌てて階段を駆け上がって、ギルドマスターを呼びに行った。


 周囲の者たちもカウンターの上に置かれたその鱗を見てざわつき始めている。


「まさかあれがヒュドラの鱗だっていうのか?」


「でもあんなでかい鱗なんて見たこと無いぞ!」


「こいつはひょっとすると・・・・・・」


 ウロコ見たさに二人の周囲に人垣が出来始める。


 興奮しかけた雰囲気を察してタクミはウロコを収納にしまい込んだ。


 残念そうなため息をつきながら人垣は散っていく。だが散った先では『あれは本物だろう』『いや、何か別のものを持ってきているに違いない』『だったら別の物ってーのは何だ? 仮に違うとしてもドラゴンクラスの大物だぞ!』などと様々な憶測が飛び交う。


 そんな喧騒の中ようやく受付嬢が降りて来た。


「皆様、ギルドマスターがお呼びです。ご案内しますので2階にどうぞ」


 彼女を先頭に2階に上がる一行、そして一番奥の部屋に通された。


 そこには初老だが体格のいい男性が待っていた。


 彼は全員をソファーに案内すると名乗り始める。


「ようこそラフィーヌの冒険者ギルドへ。私はギルドマスターのトーマスだ、よろしく頼むよ」


 気さくな口調で一人一人と握手をする。


 タクミ達も彼に挨拶をしながら自己紹介をした。


「さて君達のパーティー『エイリアン』がここのダンジョンを攻略したのは事実かね?」


 今度は落ちつきながらも威厳に満ちた口調でタクミ達に話しかける。


 圭子は先程の騒ぎで面倒になったのか、この件はタクミに丸投げをするようだ。


「事実だ、昨日地上に戻ってきた。証拠の品もある」


 タクミは収納から先程のウロコと宝石箱を取り出す。


 さらに岬に『聖剣アスカロン』を取り出してもらう。この剣はドラゴンを倒した伝説の剣と言われており、刃渡り2メートルを超える大剣だ。重さもかなりあるはずだが、岬はそれをひょいと持ってテーブルの上に置いた。


 ゴトンと大きな音を立てて置かれた剣にトーマスは目を見張る。


「どうやら本物らしいな」

 

 ふーっとため息をつきながら彼はその品々を見つめる。


「鑑定人を呼ぶからその間ダンジョンの話を教えてくれ」


 彼の要望に応じてタクミは覚えている限りの話をした。


 森の階層で左の魔方陣を選んだ事に触れると、ギルドマスターは目を剥いた。


「お前達左に入ったのか!」


 彼の話だと右の魔法陣を選ぶことが常識で、マップの裏に注意書きで書いてあるそうだ。裏まで見なかったタクミ達は、知らずに左を選んでしまった。


 令嬢の言った事が安全という点では正解だったかもしれない。


「それで左の魔法陣はどこにつながっていた?」


 トーマスが身を乗り出す。


「ドラゴンゾンビがいる部屋につながっていて、そこを抜けると36階層だった」


 平然とした顔で言い放つタクミに唖然とするトーマス。まれに左に進む冒険者がいるという話を聞いてはいたが、誰も戻ってくることは無かった。


 ドラゴンゾンビなどという怪物が待ち構えていれば戻ってこれるわけが無い。


 だと言うのに、この連中ときたら・・・・・・


「ドラゴンゾンビだと!・・・・・・倒したのか?」


「ああ、倒した」


 左の魔法陣を選ばないことを深い階層にもぐる冒険者に徹底して知らせることを心に誓うトーマスだった。 


 40階層から下の階層ボスやトラップの抜け方なども教えて、最後のヒュドラの姿や形も出来るだけ詳しく語った。


「助かったよ、君達の話は今後ダンジョンを攻略するにあたって大いに参考になる」


 ちょうど話が終わった時に鑑定人が到着した。


 彼は大きな木の箱を抱えている。その箱から取り出したのは一枚の鱗だった。


「これは500年前にダンジョンを攻略した冒険者が持ち帰ったものです」


 そう説明してタクミが取り出した鱗と比較する。大きさはタクミの物がふた回りほど大きかったが、その模様や質感は全く同じだった。


「間違いありません」


 鑑定人は自信を持って本物と断定した。


「そうか、ご苦労」


 鑑定人は鑑定書にサインして部屋を去った。


 それを見届けてからトーマスは一同に向き直って姿勢を正す。


「ラフィーヌのギルドマスターの職と名誉ににかけて、君達をダンジョン攻略者として認定する」


 彼の宣言でタクミ達は晴れて攻略者となった。後日この事は、この街だけでなく全てのギルド支部に連絡されてこの世界全体に知らされるそうだ。


 軽い気持ちでダンジョンを攻略してはみたものの、大事になって戸惑うタクミ達だった。

読んでいただきありがとうございました。感想、評価、ブックマークをお待ちしています。


次の投稿は土曜日の予定です。

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