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27 空の一夜

夜中に投稿します。内容が内容だけに・・・・・・

 風呂から上がったタクミは椅子に座って1階のホールで用意してもらったオレンジジュースに似た何かを飲んでいる。


 約2週間のダンジョンでの出来事を思い返しながらややまぶたが重くなってきた頃に、部屋のドアを『コンコン』とノックする音が聞こえた。


 外からは『タクミ開けて』と声が聞こえる。


 彼がドアノブに手をかけて引くとそこには風呂上りの空がちょこんと立っていた。


 スタスタと部屋に入り込む空、彼女はテーブルの上に置いてある飲み掛けのオレンジジュース的な物を見つける。


「喉が渇いた、これもらっていい?」


 と言いながら手を伸ばす。


「下から新しいのをもらってこようか?」


 わざわざ飲み掛けを飲むこともないだろうと思いタクミが尋ねる。


「これでいい。そんなにたくさんは飲めない」


 確かにエールを注ぐジョッキのような大きなグラスに入っているので、体が小さい空には量が多いのかもしれない。


「もう寝るの?」


 飲み終えてからタクミに聞く空。


 彼女はどちらかというといつも眠そうな目をしているので、本当に眠いのかどうか見かけでは判断できない。


「そうだな、色々疲れたし今日は早く寝ようかな」


 風呂から上がったタクミはいつでも横になれる格好をしている。


「わかった、パジャマに着替えるから明かりは消さないで」


 そう言って空は洗面所に入っていった。


 先にベッドに入るのも悪いような気がしたので、タクミは空が出てくるのを待っている。


 パジャマなんて用意しているとはずいぶん準備がいいなと思っているとあっという間に空が出てきた。


「おまたせ」

 

 一体何を待っていたのかと突っ込みたい気持ちを抑えてタクミは空の方に振り向くと、彼女は大きめのTシャツを一枚着ているだけの姿で立っている。


「空、その格好はパジャマとは言えない気がする」


 たしかにいくら季節が初夏とはいえあまりにも薄着だ。それにタクミにとってもこれから相部屋で寝る事を考えると無防備すぎる。


「気にしないでいい、いつもこの格好で寝ている」


 『お前が気にしなくても俺が気にする』という言葉が咽から出掛かるが、ぐっと堪えるタクミ。


「タクミお願いがある、抱っこしてベッドまで運んで!」


 『人の話を聞け!』と言いたい所だがまあ本人がいいと言っているならいいかと思い直す。


 それにしても、空がお願いなんて珍しいことだなと思いながら彼女の小さな体を抱える。


 それは父親が七五三の時に子供をを抱きかかえて写真に写るような抱っこだった。


 タクミの顔の前に空の顔がある。一瞬見つめあう二人・・・・・・


「ちがう!」


 タクミの額に空のチョップが飛んだ。


「これはこれでありだけど、これじゃない抱っこがいい!」


 予想通りの反応をしてくれた空に感謝しながら、タクミは彼女をお姫さま抱っこでベッドに運ぶ。


 そっと静かに彼女を横たえると、空はタクミの手をとって引っ張る。


「夢がひとつ叶ったけど、女の子の夢は果てしない」


 空は憧れのお姫様抱っこをしてもらったが、まだ満足していないようだ。


「一緒に寝て」


 春名からは『女の子の希望は叶えてあげなさい!』と言われているので『いいのかなー?』と思いつつも空の横に体を横たえる。


 空はタクミの胸に顔を埋めてその筋肉を堪能し始めた。彼女は特に大胸筋と割れた腹筋が好きと言っていた事をタクミは思い出す。


 空が顔を密着させやすいように少し彼女の方に体を向けて好きなようにさせるタクミ。だが、空が顔を動かすたびにこそばゆさが伝わってくる。


 時々彼女の口から『ムフー!』とか言う声が漏れてくるが、気にしたら負けだ。


 やられっぱなしは悔しいので、タクミは空のやや短めの髪に触れて優しく撫でた。


 髪から首筋、背中、腰と段々その手を下の方に伸ばしていく。


 空の体が時々ピクリとするが『いや!』とは言わないのでそのまま背中から腰にかけて撫で続けた。


 空は顔をゆっくりと持ち上げてタクミの顔に重ねる。互いの唇同士が重なり合ってそっと触れ合った。


 照明は消してあるので空の表情はわからないが、いつもよりもトロンとして甘えた声になっている。





 ようやく満足した空は、目を閉じる前に照れながらタクミの方を向く。


「タクミ……」


「どうした?」


「すごく幸せ!」


 そんな空の額に優しく口づけをして『おやすみ』とささやいてからタクミも目を閉じる。


 空は寝ている時もタクミにしがみ付いたままで一夜を過ごした。



 翌朝、朝食の時間に大幅に遅れてしかも寝不足丸出しの顔をした二人を、女子5人がジトーっとした眼で迎えたことは言うまでもない。



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