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269 ドレナンの大乱 1

投稿が遅れて申し訳ありませんでした。理由は・・・・・・ 当然ワールドカップです。深夜まで試合を見てしまい、小説の進行だけでなくて仕事も手につかない有様です。4年に一度のイベントなので、どうかご勘弁ください。反省は一切しておりません!(キリッ)


それにしても日本対コロンビアの試合を皆さんはご覧になりましたでしょうか? いい形で日本が勝利してあちらこちらで大盛り上がりを見せました。日本代表は前評判が低いと不思議と活躍するというジンクスは健在ですね。


そしてあの試合は見どころ満載でした。何よりもファーストプランが崩れてそれを修正するために打つ手がことごとく裏目に出てしまったコロンビアの監督の戦術は、あの一試合だけで小説が書けそうな程『下手を打ったな』という印象が残りました。


実はあの監督は元々アルゼンチンの代表監督で、あの優れたタレントを擁してもベスト8止まりという平凡な成績しか残していません。今回のコロンビアの戦術も心なしか古臭く映りました。現代の代表のサッカーはクラブチーム並みの連携をしないと勝ち抜けないレベルに達していると作者は個人的には考えていますので、その点でいくとあの監督の戦術は時代遅れになっていると認識した方が良さそうです。たぶん今回の大会は組織化が進んでいない南米勢は苦戦するでしょうね。



さてさて、サッカーの話が長引きましたが、お話はいよいよタイトル通りにドレナンの街で3つの勢力がぶつかり合う展開を迎えます。その中で一体どのような戦いが繰り広げられるのか・・・・・・ どうぞお楽しみに!


「なんという天の助けだろうか! この場に君がやって来たのはセイレーン女神のの思し召しに違いない!」


「何かあったのか?」


 レッタニエの冒険者ギルドに1人でやって来たタクミを出迎えたギルドマスターが『これで問題は解決した!』と言わんばかりの表情で彼を出迎える。タクミはシャルディーヌの熱烈アタックから逃げ出すために情報収集を名目にしてこの王都の冒険者ギルドにやって来ていた。



「君たちが捕らえた海賊の首領が鉱山から逃げ出したのだよ。重大な案件として国王直轄の騎士団が捜索に当たっているのだが、その行方は全く掴めないのだ」


「何だ、あいつを取り逃がしたのか。鉱山の場所はどこなんだ?」


「ドレナンから馬車で1週間といった所にある」


「ちょうどいい、俺たちはこれからドレナンに向かう予定だ。ついでに何とかしよう」


「助かるよ、何しろ国王陛下自らが捕縛に乗り出すと言って訊かないのだ。海賊騒動が再燃すると再びわが国の海運に大きなダメージがあるからな」


 タクミがギルドマスターと話をしているのは時系列で言えば修平が魔王になる1日前の出来事だった。それは横に置いて、圧倒的な戦闘力を持ったAランクの冒険者に話が通って、ギルドマスターはホッとした表情を浮かべている。



「ドレナンには何をしに行くんだね?」


「また迷宮に入ろうと思っている。今度は勇者ご一行たちの案内役だ」


「なんと! この世界に勇者様が召喚された話は聞いているが、それを君たちが案内するのかね?!」


「案内と言うよりもあいつらをもう少し役に立つように鍛えるのが目的だな。あれではまだ実戦どうこうというレベルではないからな」


「君たちから見ると勇者と言うのはその程度のものなのかね? 私にはどうにも理解できない話だよ」


「経験が足りないからな。俺が知っている限り勇者と言うのは何年も血の滲むような困難を乗り越えてようやく魔王と戦えるレベルになるんだろう。あいつらはまだこの世界に来てから1年足らずだ、経験不足は否めないだろう」


 タクミが知っている勇者とは春名所有のマンガ本に登場した人物を指している。そのキャラは『ギガスラッシ○』を得意技にしていたりする。


「なるほど、確かに君が言う通りだな。君たちに続いて勇者様たちが人族の戦力になってくれれば、魔族など恐れるに足らんというわけだな」


 2人はこのまましばらく情報交換を続ける。ある程度の情報を仕入れてから、タクミはギルドマスターの部屋を辞した。これからエンダルス伯爵邸に戻るのだが、その足取りはなぜか重たい。何とかタクミに婚約を認めさせようとするシャルディーヌが待ち構えているのだ。


 いや、彼女だけならまだタクミも何とかできたかもしれない。だがそこには意外な応援団が出現していた。タクミのハーレム拡大をメイドとしての最優先の務めと変な勘違いをしている岬と、まだ正式に婚約をしていないルノリアが彼女の味方について煽り捲くっているのだ。


 殊にルノリアがシャルディーヌの味方についたのはタクミにとっては退路を塞がれる大きな一因となっていた。



『ルノリア様はお認めになったのに、なぜ私はダメなのですか?』


 シャルディーヌに問い詰められたタクミは返答に窮した。彼女の追及をうまくかわすもっともらしい理由が完全に失われている。一方的に押し捲られるタクミの姿を岬はほのぼのとしたホームドラマを見るような表情でにこやかに眺めているだけだった。他の女子たちは揃って『好きにすれば・・・・・・』と言う表情でジト目を向けている。すでに心の中では半ばシャルディーヌが仲間になると観念している。




「はー、気が重い」


 ため息をつきながらタクミは伯爵邸に戻っていく。


 そこには当然のようにシャルディーヌが待ち構えているはずだ。かつてルノリアがタクミに対して行ったアプローチよりも何倍も精神的に追い詰める攻撃を必ず仕掛けてくる。そしてその裏側では岬とルノリアが結託して糸を引いている。






 翌朝の朝食後、少々ゲッソリした表情で毎日の日課の魔王の鎧に仕込んだ位置情報発信機の様子を確認するタクミの表情が変わる。



「ヤツはドレナンの近郊に転移したのか?」


 しばらく発信機は魔王の位置を知らせていなかった。魔公爵のマジックバッグの内部に収納されている間は、いわば別次元に存在していたためにその位置をロストしていた。それが急に姿を現したと思ったら、自分たちがこれから向かおうとしているドレナンに近い場所に居る。



「少々まずいな」


「えっ? タクミ君、私の体重は今日は増えていませんよ!」


「普段は増え捲くっているだろう! いや、春名の体重の話じゃなくて魔王が急に姿を現したんだ。それも迷宮があるドレナンの街の近くだ」


「なんだ、あんなヘタレ魔王なら放って置いても構わないじゃない!」


「圭子、あれでも魔王には違いないぞ。ヤツが暴れたせいでローランド王国の王都は半壊したんだ。騎士団もあと一歩で全滅という危機だったのを忘れるな」


「それよりも魔王が暴れて迷宮が破壊されると色々と困る」


「美智香が言う通りだな。ジョンが何らかの対策を講じているとは思うが、迷宮に影響が出るのは避けたい」


「すぐにここから向かうとして約1週間、その間何もないといいですが・・・・・・」


 岬はとっても残念そうな表情を浮かべている。あと一歩でタクミが陥落しそうな場面で、ここを去るのが心残りのようだ。いっその事シャルディーヌも一緒に連れて行こうかと検討している。



「美智香、すぐに他のパーティーに出発の準備を整えるように連絡してくれ。昼前には出るぞ」


「了解した」


 タクミの指示ですぐに他のパーティーも準備を開始する。当然魔王が出現した件は全員に伝えられていた。慌しく荷物を馬車に運び込んで、全パーティーが出発の準備を整える。



「急に出発するなんて何かあると思ったが、例の魔王が現れたのか! この前の礼はたっぷりとしてやるぜ!」


 勇造はローデンヌの森で一度遣り合った魔王にリベンジの機会がやって来たと腕を鳴らしている。あの時はあと一歩というところで取り逃がしたので、今度こそ決着を付けようという決意のようだ。



「魔王が王都を襲った時はちょうど入れ違いで俺たちはラフィーヌに向かっていたんだ。勇者としては見逃せない敵だから、今度は戦いに参加させてもらう」


 比佐斗は勇者としての使命感から自分の意思でタクミに申し出た。その隣に居るアルネは『面白そうなヤツが現れた』と戦闘狂の本能丸出しだ。



「まあ出番があったらその時は頼む。もっとも魔王が本当にドレナンにやって来るとまだ決まった訳じゃないからな」


「タクミ様、魔王などという恐ろしい敵と戦うのですか?」


「シャルディーヌ、そんな顔で心配するな。ヤツは過去に2度叩きのめしているから大丈夫だ」


「それでも心配です!」


「魔王を倒して迷宮を攻略したらまたここに戻ってくる。その時にはシャルディーヌの気持ちに対する返事をするから、ここで大人しく待っていてくれ」


「はいわかりました。ご無事にここに戻られるのを待っています」


 このやり取りを聞いている女子たちは・・・・・・・



「うわー・・・・・・・ タクミ、それは死ぬフラグよ!」


「圭子ちゃん、タクミ君が死んじゃうんですか?」


「春名はアニメ好きの割りに肝心な場面を覚えていない! タクミのセリフは『俺、この戦いが終わったらあいつに気持ちを打ち明けるんだ』とまったく同じ意味!」


「美智香ちゃん、ご主人様に限ってはそのようなフラグはまったく効き目はありません。仮にそのような危機が訪れたとしても、私が身を挺してご主人様をお守りいたします」


「タレちゃんが前面に出たら、その余波だけでタクミが大怪我しそう。なるべく後ろに控えているのがいいと思う」


「空ちゃんの言う通りです! タクミ君は私がしっかりと守ります」


 最後に紀絵がちゃっかりいい所を持っていった。それにしても彼女たちの間ではタクミがなぜかお姫様扱いのようになっている。空と春名を除く4人の戦闘力が上がり過ぎて、依然横ばいのタクミと大きな差ができてしまった影響だ。


 だがタクミ自身はこの事態にそれほど興味を示していない。彼の戦闘力はパワードスーツの武装に準拠しているので、彼個人の能力よりも如何にパワードスーツを適切に運用できるかに懸かっているからだ。



 こうして一行は王都レッタニエを発って、迷宮があるドレナンに向かうのだった。









 約1週間後・・・・・・


 ドレナンの街は人口3万人くらいの内陸部にある壁に覆われた小規模な街だ。街の南北に門があって、北の門は王都に通じる街道に、南の門は隣国のローランド王国に繋がる街道に面している。


 街の中心には他の街同様に広場が設けられて、その周辺には官公庁や各種ギルドなどが集まっている。北側には領主の館をはじめとして高級住宅街が並び、庶民は南側に集まって住んでいた。迷宮は比較的人の往来多い広場の近くにある。


 そしてその迷宮の前にはマギカクラッシュの5人が立っていた。



「へー、これが迷宮か! テレビで見たどこかにあるピラミッドみたいだな」


「美晴ちゃんがまともな意見を口にしています! 今日は中に入らずに一刻も早く引き返しましょう!」


「エミ、元から今日は下見に来ただけだから、心配しなくてもこのまま引き返すわよ」


「おい愛美! 突っ込むのはそこじゃないだろう!」


「それは美晴の日頃の行いが悪いせいだから、諦めないといけない」


「凪沙が言う通り! 美晴は少々反省の必要がある」


「ちぇっ、まあいいか! それよりも下見は済んだから昼飯にしようぜ! なんだか腹が減ってきたからな!」


「そうね、一通り街の様子も確認できたし、ギルドに迷宮に入る届けを提出したらお昼にしましょうか」


 5人は冒険者ギルドに寄って手続きを済ませてから、大通り沿いにある一軒のレストランに入る。こうして残りのお金を気にせずに食事ができるようになったのは、全て盗賊を捕縛したおかげだった。



「やっぱり飯を腹いっぱい食うとやる気になるな! 明日からはあの迷宮で大暴れしてやるぜ!」


「美晴! 張り切り過ぎてドロップアイテムまで破壊しないでよ! ダンジョンは私たちの貴重な収入源なんだからね!」


「もうあんな貧乏生活は嫌ですー!」


「当面の生活資金はダンジョンで稼ぐとして、その先はどうするんだ?」


「まったく美晴は気が早過ぎ! ・・・・・・・ ちょっと待って! 何か大きな気配が近づいてくる!」


 ほのかが気配に気がついてしばらくしてから・・・・・・




「ドーーーン! ドカーーーン! ガラガラガラガラ!」


 レストランで休んでいたマギカクラッシュの5人を轟音と地響きが襲った。彼女たちだけでなく他の客も何が起きたのかわからずに顔を見合わせている。



「ただ事ではないようね。様子を見に行きましょう」


 愛美の声で立ち上がった5人は代金の支払いもそこそこにして通りに出る。するとそこは南の方向から逃げ惑う人々が押し寄せてパニック状態になっていた。



「魔王だーー! 魔王が現れたぞーー!」


「早く逃げるんだー!」


「キャー! 助けてーー!」


 大人も子供も男女も問わずに怯え切った表情で北門を目指して必死の形相で逃げ出し始めている。中には冒険者なのだろうか、彼女たちの前で立ち止まって『お前たちも早く逃げろ!』と教えてくれる者も居た。



「こんな場所で魔王と出くわすなんて、運がいいんじゃないか?」


「運が悪いとも言うのよ! ひとまずこの人並みが途切れたら、様子を見に向かうわよ! ほのかは引き続き気配を探って!」


「不味いよあれは! とんでもなく大きな『魔』を感じる!」


「それでも『魔』を倒すのが私たちの使命よ! 魔法少女の名に懸けて倒して見せるわ!」


「よーし! ダンジョンの前祝だ! 景気よく暴れてやるぜ!」


 愛美に率いられたマギカクラッシュの5人はようやく逃げ惑う人が途絶えた通りを南の方向に向かって駆け出すのだった。








 






 


次回の投稿は明日を予定しています。ワールドカップの誘惑に負けずに執筆を頑張りたい・・・・・・ でも試合を見てしまったら遅れるかもしれません。その時はごめんなさい。

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