23 ラフィーヌのダンジョン10
お待たせしました。ダンジョン編はあと2話で終わります。
43階層に降りてきたタクミ達、朝出発してからここまでまだ3時間しか経過していない。
「この調子でドンドン行こう!」
どの階層もボス部屋だけなのでサクサク進んで行く。
この階層のボスは3体のサイクロプスだったが、タクミに目を撃ち抜かれて戦いは5秒で終わった。
ドロップアイテムは、巨人が持っていた巨大な斧が2つとハルバートが1つで見た感じ100キロぐらいありそうなこれらの武器を岬が片手でヒョイヒョイ運んで収納にしまっていた。
この部屋には宝箱があって中からは圭子が持っているペンダントと同じ効果を持つ『毒消しの指輪』が出てきたので、これは美智香が着けることになった。
44階層のボスは『スケルトン=ロード』その名の通りアンデッドの王が登場してきた。
「ここは私の番!」
久しく出番が無かった空が前に出る。
彼女が召喚した『天界の光』は、スケルトン=ロードを滅ぼすことは出来なかったが、その動きを完全に封じた。
そこへ美智香の『迫雷撃』がまとめて5発襲い掛かり息の根を止める。
ドロップアイテムは『死の王冠』で、どうやら呪いの類はかかっていないようだ。
さすがにこれを身につける勇気を持った者は誰もいなかったので、タクミが収納にしまっておいた。
そのまま階段を下りていくと45層、この階に降り立った途端にシロが唸り声を上げだす。
『普段大人しいシロが一体どうしたんだろう?』と皆が不思議に思ってボス部屋に入ると、そこには『ケルベロス』が待っていた。
シロは犬系の魔物に対しては常に闘志全開で向かっていく癖があったことを皆が思い出す。
3つの頭から火と氷と毒の息を吐きながらタクミ達を待ち構えるケルベロス。
その前にに突然シロが躍り出た。体高4メートルはあろうかという巨大なケルベロスを相手に一歩も引かない構えのシロ、両者の間で睨み合いが続く。
圭子がシロが魔物の餌食になることを心配して、その体を抱きかかえて退避させようと手を伸ばした時、思いがけないことが起きた。
突然ケルベロスが床に伏せて、シロに対して従順の姿勢を見せた。
シロは小さな体でケルベロスをじっと見ている。対するケルベロスはシロと目を合わせようともしないで下を見ている。
ケルベロスは地球では冥界の門番などと言われているが、この世界では霊獣に区分される。
ダンジョンには時としてこのような霊獣が召喚されることもあるのだ。
霊獣とは言っても犬の習性は持ち合わせている。その習性が目の前にいるのは小さくてもこの世界の『犬の王』であることを告げているのだった。
体力ではもちろんケルベロスの方がはるかに勝っているが、霊獣としての格ではシロに及ばない。
シロはケルベロスの前を素通りして、部屋の奥に進むといつものように『キャンキャン』吠えた。
『このまま通っていいのかな?』と躊躇いがちにシロのいる方向に歩き出す一行。ケルベロスは床に伏せたままピクリとも動かなかった。
そこには宝箱が置いてあり、中からは犬用の首輪が出てきた。
「聖獣の首輪・・・・・・神聖な霊獣が身につける首輪で能力が大幅に上昇する」
空の検索によって素晴らしい一品であることが判明した。
「シロちゃん、よかったですね」
飼い主の春名がその首輪をシロにつけていく。
シロは尻尾をピンと立てて得意満面だ。
こうして一切戦うことも無く45階層を突破した一行だが、続く46階層以降に手を焼くことになる。
ここからは魔物は出ないのだが、通路の至る所にトラップが仕掛けてあって、これに引っかかると魔物が待ち受けている部屋に飛ばされてしまうのだ。
ここの階層の魔物部屋はいわゆる無限湧きというやつで、部屋中に溢れた魔物を倒しても倒しても次々に湧いて来る厄介なものだった。
だが、部屋の奥に置いてある魔石を破壊すると魔物は消えて出口が開けることを発見してからは、何とかこの魔物部屋も突破できるようになった。
この階層に入ってから極端に進み方が遅くなったので、セーフティーゾーンに入って作戦会議を開く。
「このままではまずいな、美智香何かいい手はないか?」
端末を見ていた美智香が顔を上げる。
「うーん・・・・・・飛ばされるたびにマップがグチャグチャになるから、なるべくトラップにかからないようにしたいけどうまい方法が見つからない」
このパーティの頭脳である美智香もお手上げの様子だ。
「あのー、トラップって魔法陣が隠れていて、そこを踏むと発動するみたいなんですが・・・・・・」
いつもボーっとしている春名が珍しく冴えた意見を言う。彼女はこの階層では一番後ろを歩いていて、誰かがトラップに引っかかった瞬間を偶然後ろから目撃していた。
春名の意見を聞いて美智香の目が光る。
「もしそれが本当だったら、常に弱い魔力を流していれば、魔法陣を感知できるかも」
手掛かりを掴んだら早速検証をする。美智香を先頭にタクミと二人で付近の通路を調べると、確かにこの方法で魔法陣が浮かび上がってきた。
「よし、これでいこう! 美智香は魔力が少なくなったら言ってくれ」
念のためシロは岬がバスケットに入れて連れている。実はシロは勝手に動き回って2回ほどトラップに引っかかったことがあったのでその対策だ。
こうして進むことでその後はトラップにも引っかからずに、一行は49層までたどり着いた。
「いよいよ残るはラスボス戦ね!」
圭子はここまで来たからには意地でもラスボス撃破を目指すつもりだ。もちろん、他のメンバーも戦闘員、非戦闘員にかかわらず同じ気持ちだ。
はやる心を抑えて、今日はここで一泊する。英気を養ってから明日のラスボス戦に臨む一行だった。
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