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22 ラフィーヌのダンジョン9

お待たせしました。第22話です。

 翌朝、階層ボスの部屋の前に立つ一行。昨晩はタクミのシェルターには岬が寝たが、朝から階層ボスの攻略を行う事もあり自重した。


「準備はいいか?」


 すでにタクミはパワードスーツを展開しており、圭子と美智香も戦闘体制は万全だ。


「よし、行くぞ!」


 タクミ達が足を踏み入れたその部屋は、丁度ドラゴンゾンビと対峙したあの部屋と同じ様な造りで、何もないガランとした体育館の2倍くらいの大きさの部屋だった。


 そしてそこで一行を待ち受けていたのは、2体のエルダードレイク。


 通路にいたレッサードレイクの倍近い8メートルほどの巨体と、ドラゴンに比べれば威力は落ちるが口からブレスを吐くことも出来る強敵、翼を広げて侵入者を威嚇するエルダードレイクの姿はまさに小さなドラゴンだった。


「2体いるのは厄介だな、俺が手早く右のやつを片付けるから二人は左のやつを相手にしてしばらく持ちこたえてくれ」


 圭子と美智香は無言で頷く。左右に分かれて3人は魔物と対峙した。


 非戦闘員の皆さんは空が展開したシェルターで待機している。中にいる3人は敵があまりにも巨大なので心配そうな表情だ。


 2体のエルダードレイクは目の前にいる標的に向かってほぼ同時に前進を開始した。


 だが最初に攻撃の口火を切ったのは美智香だ。彼女は色分けされたタッチパネルの黄色の一番上に触れる。


 その左手から放った魔法は金角銀角を倒した『迫雷撃』、牽制は無しの最初から全力攻撃を繰り出す。


 稲妻がエルダードレイクの頭を目掛けて下から上に走り、そして下顎から首にかけての辺りに着弾した。


「ギュオオオーーー!!」


 その前進が止まり咆哮を上げるドレイク。直撃を受けた箇所の鱗が焦げて黒くなっているが、まだ戦う余力がある。おそらく鱗が雷撃の大部分を跳ね返したのだろう。


 だがその隙に圭子がその足元に忍び寄っている。その勢いのままドレイクの右後足に渾身の正拳を叩き込んだ。


 『大地の篭手』による効果で何倍にも強化された拳が鱗を突き破る。ドレークの巨体から見てそれ程大きなダメージではないが、圭子は手応えを確認すると素早く後ろに下がる。一撃離脱でダメージを与えていく作戦なのか。


「美智香!」


 下がりながら圭子は美智香に声をかける。ドレークは前足で圭子を捕らえようとするが、彼女のスピードについていけずその攻撃は空を切る。


「任せて!」


 美智香は圭子が鱗を叩き割った後ろ足に狙いを定めて再び『迫雷撃』を放つ。


 彼女の狙い通りに魔法の雷撃がドレークの後ろ足に襲い掛かった。今度は雷撃を弾いた鱗が割れているためドレークの防御力は低下していた。


 後ろ足から体内に侵入した高圧の電流が魔物の全身を駆け巡る。


「ギイイャアアアアーーーーー!!」


 今度は咆哮ではなく絶叫が響いた。


 しばらくの間電流にあたって体を痙攣させたいたドレークは、全身から黒い煙を噴き上げながら『ドオッー』と音を立てて崩れ落ちる。


 それを見届けて圭子が美智香とハイタッチ、そこに右側のドレークを撲殺し終えたタクミが駆け寄ってくる。


「二人には恐れ入ったよ、まさか生身の体でこんな怪物を倒すとは思わなかった」


 彼女たちの手柄にタクミは素直に脱帽している。


 シェルター内でもやんやの騒ぎだ。


「完璧なコンビネーション!」(空)


「圭子ちゃんかっこいいです!」(春名)


「美智香ちゃん、すごい魔法ですね!」(岬)


「キャンキャン! (早く出して! 宝物を探しに行くんだから!!)」(シロ)


 エルダードレークのドロップアイテムは鱗と牙だった。意外としょぼいなと思いつつも回収している時にシロが呼んでいる声が響く。


 声の方に向かうとまたもや宝箱だった。うっかりすると見過ごしそうな地味な作りの木の箱が置いてある。発見したシロは尻尾を振りながら、ご褒美を催促していた。


 タクミが箱を開けると中からは金塊が2本出てきた。一本が2キロくらいあるインゴットだ。


「おおー! 大金持ちになった気分!!」


 タクミから受け取った金塊に頬ずりしながら圭子が叫ぶ。ゲーム好きの彼女達にとっては『ダンジョン=宝探し』といった思考が強いので、初めて手にする金塊でテンションは最高潮になっていた。


「よーし! 次の階もお宝を見つけるぞー!!」


「おおー!!」


 そのままの勢いで下の階に降りていく一行。42階層から先は通路には魔物は出ないようだ。


 その分、強力な階層ボスとの一発勝負になる。


「どうやらこの階はこの部屋だけらしいな」


 タクミが全員を見回して大丈夫か確認をする。皆が頷くのを見てから扉に手をかける。


 その部屋は学校のグラウンドの倍以上あって、天井の高さも100メートル近い大空間だった。


 そこに20本の高さ50メートル以上の石柱がそびえ立っている。


 『いったいこの部屋はどうなっているんだろう?』・・・・・・皆が同じ様な疑問を感じた時、石柱の上から羽ばたいてタクミ達に向かってくる何かがいた。


 ライオンの体にワシの頭を持つ怪物『グリフィン』だ。


「迎撃するぞ!」


 タクミはすでにブラスターガンを構えている。


 空飛ぶ魔物といえば以前草原でワイバーンに襲われた時に、タクミの射撃は全てかわされてしまった事があった。


 実はあの時はパワードスーツに搭載されている射撃照準システムを利用しないで、目視での射撃だったために美智香の魔法でようやく打ち落とす結果になってしまった。


 しかし今はパワードスーツを展開済みだ。空を飛んでいても撃ち洩らしなど有り得ない。


 瞬く間に2体を打ち落としてから最後の一体に照準を合わせていくと、美智香から『待って!』と声がかかる。


 残りは美智香が自分の魔法で倒したいようだ。


「それ、ポチっとな!」


 彼女はタッチパネルの風魔法の一番上に触れた。だがよく見ると他は3段階なのにそこだけ4段階目が増設されている。


 彼女は日々進化し続ける。


 ワイバーンとの戦いの中で、空中にいる敵に対する備えが不十分だと感じた美智香は『ウインドカッター』を魔改造した。


 威力は中級魔法の『ウインドブレイド』と同じ程度にして、その速度と旋回性能を向上させている。


 そして彼女がその頭脳の全てを駆使して組上げた自動追尾機能、これこそが新たな対空魔法の切り札だった。


『ホーミングブレイド』真空の刃がどこまでも標的を追いかけて高速で迫ってくる。一度狙われたら、撃墜されるか、地上に身を潜めるしかないという空を飛ぶ者の天敵と言うべき魔法が発動された。


 自らに迫る危険な気配を察知してこれをかわしてから獲物に襲い掛かろうとしたグリフィンは、背後から再び迫って来る気配に再上昇する。


 こうして何度かその真空刃を交わしたグリフィンだが、すでに逃げることで精一杯になっていた。


 その姿を余裕の表情で見つめる美智香、もはや勝利を確信している。


 そして、全力で逃げ回っていたグリフィンに疲れが見えた時、『ホーミングブレイド』が真後ろからその体を両断した。


 ドロップアイテムの羽を回収してから下を目指す一行、残念ながら宝箱は無かったので圭子のテンションがやや低いが、残り階層もあとわずか。


 ダンジョン攻略を目指して突き進む一行だった。

 

次の投稿は木曜日です。

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