20 閑話 お嫁さん計画
本日2話目の投稿です。この話の後はまたダンジョンの話に戻ります。
タクミと春名がイチャイチャしている時、美智香のシェルターに女生徒4人が集まっていた。
「タレちゃん、今朝春名が言っていた事は一体どういう事なのか説明しなさい!」
圭子の言葉に顔を赤らめる岬。
元々控えめな正確なので、思いっきり照れてもじもじしている。
「その・・・・・・春名ちゃんが言った通りで・・・・・・私達はタクミ君のお嫁さんになる事を前提にお付き合いしています」
岬はタクミの事を『ご主人様』と呼んでいるが、それはタクミと春名の前だけのことで、他のメンバーがいる時には『タクミ君』と春名と同じ呼び方をしている。
「だからそれが解らないのよ! タレちゃんは愛人にでもなるつもり?」
圭子は春名から『二人ともお嫁さんになる』と聞いていたが、彼女は日本生まれの日本育ちなのでタクミの惑星の常識がもうひとつ理解できていなかった。
「えーとそれは・・・・・・私も詳しい事は春名ちゃんから聞いただけですので、でもタクミ君の惑星では極端に男性が少ないらしくて、妻を何人も娶るのは当たり前の事らしいです」
圭子だけではなく美智香も空もそのような社会習慣に慣れていなくて、話を聞いた時は顔には出さなかったもののかなり面食らっていた。
「タレちゃんはそれでいいの?」
美智香が尋ねるが岬は相変わらず照れながら答える。
「はい、私はタクミ君のそばにいられれば満足です」
そのやり取りを聞いていた空がそっと何かを岬に差し出す。
「3Pをすることがあったら、ぜひこれに様子を記録して欲しい」
彼女が差し出したのはごく小さな記録用のカメラだった。
圭子と美智香からさっとイエローカードが出されて、カメラを引っ込める空。
「そんなものに記録して間違って流出したら、銀河中に流れるでしょうが!」
冷静な美智香が空に切れている。
「流出させるつもりはない。個人でおかず・・・・・・いや、趣味で楽しむだけのつもりなのに」
空はやはり空だ、一向に懲りた様子がない。
彼女たちのやり取りを当事者の岬はポカンと見ているだけだった。
しばらく沈黙が流れる中で、ようやく空の暴挙から立ち直った岬が口を開く。
「あのー・・・・・・皆さんの中でタクミ君のお嫁さんになりたい方がいらっしゃったら、今のうちに私か春名ちゃんに教えておいてください。私達は大歓迎ですから!」
切り出しにくそうにその場に爆弾を投げつけた岬。
圭子はその言葉にかなり動揺しているが、それより先に反応したのは空だった。
「タクミの筋肉は私の好みのストライクど真ん中!!」
「ええー!!」
圭子から声が上がる。
彼女から見て空は全くノーマークだった。確かに機会があるごとにタクミの腕や胸に触れたりしているのを見てはいたが、それはあくまでも空の趣味嗜好の問題だと思っていたのだ。
「空ちゃん、大歓迎ですよ! 今度タクミ君のシェルターに泊まれるようにしておきますからね」
岬の言葉に『うん』と答えて頷く空。
彼女の中で『一晩中あの筋肉に触れていられる』という妄想が膨らんでいく。
『にへら-』とちょっと危ない笑みを浮かべている空はひとまず置いといて、岬は圭子に向き直る。
「圭子ちゃんはどうしますか?」
岬の言葉に圭子の気持ちが揺らぐ。確かに何回かタクミのシェルターに泊まったことはあるが、敢えてそういう事になるのは避けていた。
というか、彼女は全くアプロ-チの方法が思いつかなくて何もできなかったのだ。
春名や岬の話を聞いた現在でも、圭子にはマウントポジションを取って無理やりキスをするくらい思いつく方法がない。
さすがに『これではだめだろう』と考える心の余裕があったのが幸いして、圭子はこの申し出を断る決心をした。
「わ、私も興味がないわけじゃあないけれど、今は遠慮しておく」
言葉の端々に未練たっぷりな様子が伺える。
彼女はこの時初めて決心した。『誰かに与えられるのではなくて、自分の手でタクミを捕まえてやる!』そう心に固く誓ったのだった。
「美智香ちゃんはどうですか?」
岬の言葉に何かを考え込む様子だった美智香が我に返る。
「わ。私はタクミのことなんか、べ、別に好きなんかじゃないんだからね!」
この時美智香の頭の中には、あの草原で襲い掛かってくるワイバーンの巨体から間一髪タクミの手で退避させられた時の事が蘇っていた。
あの時は咄嗟に自分で動けなかった。『もしタクミの手が自分に伸びていなかったら』そう思うと今でも体が震えてくる。
だがそれと同時に、彼の逞しい腕に包まれた時の安心感が彼女を包み込んでその震えをすぐに止めるのだった。
しかし、その事を素直に口に出来る美智香ではない。
ついいつ心にもない事を口にしてしまい、あとから『しまった!』と後悔する悪い癖がまた顔を覗かせてしまった。
この時も明らかに『しまった』という表情をしている。本人はうまく隠しているつもりでも、メイドの眼は誤魔化せなかった。
(そうですか、美智香ちゃんも・・・・・・これで私達の『5人のお嫁さん計画』も達成の目途が付きました)
美智香の顔を見ながら優しく微笑む岬、この事を春名の報告したいが生憎彼女はタクミとお楽しみ中なので、翌日以降に持ち越しとなった。
これで春名と岬によって、5歳の子供でも飛び越えられるほどに埋め立てられたタクミの外堀は、完全に平らになってしまった。
後は時間が解決する事だ。
この時、春名とのお楽しみの時間を終えて寝ようとしていたタクミを原因不明の悪寒が襲った。
彼がその悪寒の正体に気づく事はない。
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次回の投稿は22時頃の予定です。