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2 新たなミッション

続けて第2話を投稿いたします。よろしくお願いします。

 今日のところはゆっくり休んでほしいということで、食事を取ってから各自が与えられた部屋で休息をとる。


 タクミはその後も何回か本星と連絡が取れないか試みたが、端末からは無機質な『圏外です』という声しか流れてこない。


 仕方がないので眼を閉じて寝ようとした時に、突然MCS端末が通信メッセージを表示した。


 ヤレヤレ、やっと繋がったかと思いながら、端末の音声スイッチを入れる。


「ルナは無事かーーーーーーーーー!!!!!!」


 突然の大声にタクミは端末を落としそうになった。


 画面でかなり取り乱した様子で、こちらを見ている男性。彼は春名の父親でタクミの上官のイザナ=マサヤ高等調査室長だ。


 十六夜 春名は地球での彼女の名前で、本名はイザナ=ルナである。ちなみにタクミの本名はケン=タクミだ。


 ルナの祖父は、惑星探査機構の総長、つまり最高責任者を務めている。


 そんな彼女の消息が途絶えたことに半狂乱になって、ようやく位置を特定した親バカ全開の彼の上官の姿がそこにあった。


「我々2名を含む地球におけるクラスの生徒が全員謎の現象で転移をした事を報告いたします」


 タクミの言葉に娘の無事が確認できて、ほっとする父親の姿が端末に映っている。


「報告は受け取った。さて、現在君は本星から見て銀河の反対側、つまり未開拓区にいることが判明している。私の権限で銀河中のPNIを総動員してようやく探し当てたよ」


 やはり親バカ、いやバカ親だ。


「現在最も近い惑星から志向性超光速通信波を発射してこの通信を行っている」


 タクミは頭を抱えた。そんなことをしたら、一秒間に日本円にして一億円が吹き飛ぶことになる。


「8週間後にそちらの惑星に向けて、超光速通信ユニットを転送するので、それまで連絡はこちらからの一方通行だ」


 約2ヶ月か・・・・・・かなり時間がかかるな、タクミはそう思った。


「さらに本格的な転送装置を設置するまでは、早くて3年かかる見込みだ」


 3年・・・・・・タクミは声を失った。どこだかも分からない惑星で3年間も島流し状態だ。


「3年もルナと会えない私の辛さが君には分かるかーーー!!!!」


 やっぱりバカ親だった。


「室長、もう一つ報告があります。この惑星には原始的なPNIシステムが存在しております」


 タクミの報告にバカ親が急に表情を引き締める。


「それは一体どういうことだ! どこの資料にもそこに我々が足を踏み入れた形跡がない。間違いではないんだな」


 念を押して確認する室長。


「はい、間違いありません。MCS端末との接続が可能で、ソースコードも読み取れました」


 タクミの言葉でしばらく考え込む様子の室長だったが、いつにも増して表情を引き締めて指令を伝える。


「ケン=タクミ一等調査官。地球での調査活動は破棄して、そちらの惑星でPNIシステムの存在する理由を中心に調査を行え」


 室長の言葉でタクミは背筋を伸ばして敬礼する。


「ケン=タクミ一等調査官、新たな任務を拝命しました。PNIシステムについて調査を行います」


 室長は一つ頷いて厳かに告げた。


「それから、ルナを守ること。これは全ての事柄に優先する任務であると肝に銘じろ」


 やはりバカ親だ。


「了解しました」


 ヤレヤレと思いながらもタクミは返事をする。どの道言われなくても彼女を守ることは彼も覚悟していたことだ。


「それから追加事項だ。その惑星は我々にとっても未知の天体だ。活動に伴う危険度が把握できない。したがって、危機管理ランクSSを発動する」


 室長の言葉にタクミは絶句した。


 危機管理ランクSSとは、その天体の生命体に対して先制攻撃を含む全ての対応が許可され、場合によっては知的生命体の殲滅までもが可能な措置だ。この上のランクSSSになると惑星自体の即時殲滅となる。


「危機管理ランクSS発動の件、了解しました」


 タクミの了解を受け取って頷いた室長は、これで通信を打ち切った。


 『ルナをつれて来い、無事な顔を見せろ!』などと言わなかったところをみると、そこまでの公私混同はまずいと分かっているのだろう。だが次の通信の時には彼女を同席させようとタクミは考えた。


 本星と連絡が取れたことに安堵して、タクミは端末の警戒アラーム機能をセットしてから8時間のコールドスリープにはいった。





 翌朝、朝食の時間に全員が集まる。


 大きな広間にパーティーごとに席について、各自が談笑していた。どうやら彼らも一晩この世界で過ごしたことで、多少の余裕が出てきている。厨二病患者の意見に引っ張られて、ほとんどの生徒がここにいる間は戦うことに決めたようだ。


 中には周囲の雰囲気に流されている者もいるのだろうが。


 もっとも上座に当たる位置に座っているのは、本郷ほんごう 比佐斗ひさとを中心としたパーティーで、どうやら彼が勇者の称号を得たらしい。


 タクミ達のパーティーは、腐女子の『聖女』がいることを評価されてその次に座らされている。知らないとは恐ろしいことだ。


 あとは体育会系の部活動で鍛えている連中が集まったパーティーや、ちょっと素行の悪い連中が集まったパーティーなど結構特色がある。


 タクミとしてはあまり目立ちたくないので、聖女の陰に隠れているのはかなり都合のいい展開だ。


「本日から早速各自の能力に合わせた訓練を行ってまいります。この後着替えてから練兵場に集まってください」


 食後に係りの者からそのような説明があったので各自が部屋へ着替えに戻る。


 廊下を移動するときに、勇者パーティーの中の一人のやなぎ 風子ふうこが空と話しをしていた。何気なくそちらの方にタクミが注意を向けると、彼女が聖女であることに目をつけた勇者が引き抜きをはかっているようだ。


 タクミとしてはあのような腐女子はくれてやっても構わないのだが、他の3人がそんなことは許さないだろう。


 気が弱い空一人では押し切られる可能性があるのでタクミは近くにいた圭子にそっと耳打ちをした。予想通りに彼女は空の所にすっ飛んで行って、腕を引っ張り連れ戻してくる。こういう行動が早いところは頼もしい限りだ。


 ただし、これでタクミが腐女子の妄想の種になる確率が急上昇したことは否めない。






 しばらくしてほとんどの生徒がジャージに着替えて案内に従って練兵場に集合した。ここには各種の武器が取り揃えてあって、自分の技能や職業に合わせて好きな物を選ぶようになっている。


 勇者の比佐斗だけは、この国に伝わる伝説の剣と鎧に身を固めているが、不慣れなためまだ動きがぎこちない。


 各パーティーが思い思いの武器や魔道具を手にしているのに対して、タクミ達は誰一人そこに並んだ武器を取りにいかなかった。


「お前達、何にもなくていいのか?」


 さすがにタクミがこれでいいのか不安になり彼女たちに声をかける。


「ああ、私は自前のがあるから大丈夫」


 そう言って圭子は背中のリュックから、黒い革手袋とレッグガードを取り出して装着する。


「これもあるけど、今はいいわ」


 ブラスナックルを取り出しかけたが、訓練では必要ないのでしまいこんだ。


「お前いつもそんなもの持ち歩いているのか?」


 さすがにその様子を見ていたタクミが引いている。


「当たり前じゃないの! これは私の体の一部よ!!」


 だから武器と防具を持ち歩いているやつが、なぜ魔法少女になれると思ったのかタクミから見れば不思議でしょうがない。


「私には補助魔法具など必要ない」


 美智香が自信タップリに言い切った。彼女は頭脳明晰で一部の生徒からは『クールビューティー』と称されている。本人が必要ないと言うからにはそうなのだろう。


「タクミの胸板に見とれていた」


 空はどこまでいっても空だった。一体彼女の脳内でどのような妄想が展開されていたのだろうか。タクミとしては絶対に知りたくないことだ。ちなみに彼女も魔法系なので武器等は必要ない。


「令嬢ってなんの武器使うんですか?」


 春名の言葉に一同は首を捻った。言われてみれば思い当たる武器が見当たらない。まさかドレスを着用するわけにも行かないだろう。


「春名は他のみんなの邪魔にならないように、ベンチでお茶でも飲んでいろ」


 タクミもそう言うしかなかった。彼には春名が武器を振り回して戦う姿など想像の範疇を超えている。それくらい彼女はお花畑の住人で平和な人柄だった。


「そういうタクミは、武器は要らないの?」


 そう圭子が聞いてきた。自前の装備を装着してすでに気合は十分な様子だ。その気合が自分の方向に向かないようにしないと、タクミにとっても多少の怪我では済まない事態が待っている。


「そうだな、俺はソルジャーだから武器は選ばない。必要な物は一通りすでに持っているから大丈夫だ」


 手ぶらで立っているのに必要な物を持っているとは訳が分からないが、そんなことを深く考える圭子ではなかった。脳筋はややこしい説明要らずで扱いが簡単だ。思いっ切り体を動かす機会さえあればあとの事はどうでもよいのだから。





 このあと魔法組は隣の訓練場で魔法の扱い方を実地で教わる事になって移動した。春名はタクミの言いつけを守ってベンチに腰を下ろしてのんびりとお茶を飲んでいる。


「で、訓練って何からやっていく?」


 圭子の問いにタクミは少し考えてから提案した。


「やっぱり基礎体力だろう」


 こういう事になると脳筋は話が早い。早速準備運動のあとランニングを開始する。この二人組でトレーニングをするのは初めてだった。


「ほほう、タクミの分際で私に張り合おうって言うのかな」


 かなりのハイペースで走っているにもかかわらず、圭子はまったく余裕の表情だ。


 実はこの時タクミは体に負荷が掛かるように、端末を調整して重力を少しずつ上げているところだった。1.1倍からスタートして現在は1.8倍まで高めている。最終的には2.5倍まで引き上げるのがいつもの日課だ。


 負荷が増えるほどタクミは圭子から遅れ始める。最終的には彼女に周回遅れにされてドヤ顔をされた。


 ランニングが終わってから二人で組み手を行う。重力2倍ぐらいが彼女とちょうど対等に動けるレベルなので少し負荷を弱めた。さもないとボコボコにされる危険がある。


「タクミの分際で私に体術で張り合おうなんて100年早い!」


 圭子はそう言ってはいるものの、タクミに次々と技を捌かれてなかなか決めきれない。


 このままではいつまだたっても終われないので、タクミは適当なところで一発食らってダウンした。


「おい! タクミ!! 春名がいないけどどこに行ったのよ?」 


 あれだけ白熱した組み手をやった後でも汗ひとつかいていない圭子が、辺りを見渡して尋ねる。春名はさっきまでベンチに座ってのんびりとお茶を飲んでいたのに周囲にその姿は見当たらなかった。


 その時タクミのポケットに入っていた端末が『エマージェンシー』を伝えるアラームを発する。春名が持っている緊急用シェルターが展開したときに自動的に知らせる警報だ。タクミは彼女の警護役も兼ねているので両者の端末にそのような設定を仕込んでいた。


「こっちだ!!」


 重力を元に戻して羽が生えたような速さで走り出すタクミとそれに負けない速度で追いかけてくる圭子。二人は人間がとても出せない速度で、城の中を目指して突き進んだ。

 


  

読んでいただきありがとうございました。感想、評価、ブックマークをお寄せいただけると幸いです。


1時間後に第3話を投稿します。

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