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174 闇に潜んでいたもの

風邪を引いてしまい寝込みました。そのため執筆が全く出来ずに一日遅れてしまい申し訳ありませんでした。まだ本調子とはいかず次の投稿も少し時間を置いて今週末くらいになると思います。季節の変わり目で体調を崩しやすい時期です、皆さんもどうかお気をつけてください。

 響き渡った春名の悲鳴で美智香が急いで周囲を魔法で照らす。そしてその場に浮かび上がってきたものは・・・・・・


 それは横幅10メートルで全体の高さは3メートルくらいの、形はタコやイカの仲間のようであったが、色は真っ白で体全体がウネウネと動くゼリーのようななんとも言い難い気味の悪い物体だった。その魔物が伸ばした触手に春名は捉えられて、顔面蒼白のままで身動きがとれなくなっている。


「触手プレーキターーー!!」


 空だけが違う意味で盛り上がっているが、他のメンバーは春名を救い出すための行動を即座に開始した。


「美智香、春名を救い出すまで魔法は控えてくれ。紀絵と圭子は動き回りながらあれの注意を引き付けろ! 岬、あれを切れるか?」


 タクミが出す矢継ぎ早の指示に従って女子たちは動き出す。圭子は触手の怪物の注意を引き付けるために両拳から衝撃波を放ち、紀絵はボウガンから矢を撃ちだす。その間にタクミもパワードスーツの展開を完了していた。


「参ります」


 岬はアスカロンを大きく振りかぶって春名を捉えている触手の真ん中辺りに思いっきり振り下ろした。


「グニャ」


 だが彼女の豪腕をもってしても触手の半ばにめり込むだけで切り落とすことが出来ない。圭子や紀絵の攻撃も全く成果がなかった。


「いやー! 離してー!」


 春名の恐怖に歪んだ口から再び悲鳴が響き渡る。よく見ると彼女が体にまとっている服が少しずつ溶かされている。時間が経つほど春名の身に危険が及び、もはや一刻の猶予もない。


 タクミはブラスターガンを触手目掛けて立て続けに放っていく。白い怪物の体内にめり込んだ弾丸は小さな爆発をするが、僅かにそのゼリー状の体を飛び散らせていくだけで大きな効果はなかった。


 春名を捉えた怪物はタクミたちを敵と認識したようで、次々にその触手を伸ばして彼らを捉えようとしていく。圭子と紀絵は俊敏な動きでそれをかわして攻撃を繰り返す。タクミと岬は迫ってくる触手に剣やパワードスーツの力で弾き飛ばしているが有効な攻撃は全く出来なかった。


「私にやらせて!」


 後方待機の美智香が一歩前に出る。彼女には何か有効な手段があるのだろうか。


「わかった、春名に被害が及ばないように注意してくれ」


 タクミは美智香に念押しして身構える。もし彼女の魔法が春名に迫った時にはパワードスーツの出力を全開にして触手を引きちぎってでも助け出す覚悟を決めている。


 それに対して冷静な表情を崩さない美智香は展開したタッチパネルのドクロのマークに触れた。


「レーザービーム照射」


 美智香は最初に魔法の威力を試した草原で突如現れたワイバーンに放ったレーザービームを選択していた。その左手の手の平から収束された赤い光が怪物に向かって瞬時に突き進む。


「ギュオーーー!」


 怪物から声が上がった。全身がゼリーのような体でどうやって声を出しているのかはわからないが、どうやら効果があったようだ。美智香のレーザービームを受けた箇所は発泡スチロールにライターの火を近づけたかのように溶けて蒸発している。


「思った通り、これで片付ける!」


 その効果に手応えを掴んだ美智香は羽織っている魔法使いのローブを脱ぎ捨てて身軽になった上で右手にライトサーベルを握っている。その剣からは低周波の振動音が『ブーン』という唸りを上げている。


 その剣を手に美智香は前衛のメンバーの間を抜けて一気に怪物に切りかかった。そしてそのライトサーベルは美智香を狙って迫る触手を悉く切り伏せていく。先程の魔法はレーザーがこの怪物に対して効果があるか試したのだった。ライトサーベルの仕組みはレーザーと低周波振動で対象を斬っていくもので、効果が確認できたら美智香はこの剣を使用すると最初から決めていた。


 迫る触手を5本切り捨てたところでようやく春名を捉えている触手に近づいてその半ばを絶ち斬る。


「ストン」


 2メートルくらいの高さから春名は触手に纏わり付かれたままで落ちてきた。地面には切り伏せられた触手の残骸がいい感じのクッションになって彼女を受け止める。


「春名!」


「ハルハル!」


 タクミと圭子が駆け寄って彼女の体から触手を引き剥がしていく。その前に美智香が立ちはだかり、迫る触手を次々に斬って捨てる。


 救い出された春名はすでに意識がなく服は全て溶かされて辛うじてパンツだけが残っている姿だった。その白い肌の所々に赤くなっている部分が広がっている。タクミはすぐに春名を空の元に運んだ。


「おそらく強酸性の消化液で溶かされたものと推定する。タレちゃん春名にシャワーを浴びさせて」


「はい、すぐに」


 岬は毛布で包んだ春名を空が準備したシェルターに運び込んで浴室に連れて行く。その後に空も続いた。



「これで春名は大丈夫、後はあの怪物の始末だけどおそらく熱に弱いはず」


 美智香の意見にタクミは頷いた。彼女によって殆どの触手を切り落とされた怪物はちょうど体の再生を図って動きを止めている。


「では少し派手なやつをお見舞いしておこうか。危険だから全員シェルターに入ってくれ」


 タクミの指示でこの場に残っていた女子3人は空のシェエルターに入っていく。それを見届けてタクミは左腕のレールキャノンを起動させた。弾種は焼夷弾で、直径3センチの砲弾の内部にヒドラジンが詰まっている。これは宇宙船の燃料としてはポピュラーなもので、燃焼エネルギーを極限まで高めた液体だ。


「ブーン」


 レールキャノンの内部で電磁加速された砲弾は音速の10倍の速度で打ち出されていく。ゼリー状のこの怪物を燃やし切るまで砲弾の大サービスで都合10発が怪物の体内にめり込んでいく。


「ブシューー!」


 そして取り込まれた砲弾はその体内で燃焼を開始した。それは紅蓮の炎と呼ぶのも生易しい全てを滅していく炎、破滅そのものをもたらす業火に他ならない。ロケット燃料を体内に取り込まされてその炎で焼かれるなど、想像しただけでゾッとする運命だ。


 タクミは燃え残りにさらに3発焼夷弾を追加して本体はきれいに燃やし尽くした。残るのは切り落とされてまだ地面で蠢いている触手だがこれをどう処理しようかと考えているところに岬がやって来た。彼女は空からヒドラジンが使用されていると聞かされていたので、防護服に防毒マスクという完全仕様だ。


「ご主人様、春名ちゃんの意識が戻りました。空ちゃんの回復魔法をかけてもらってまだ安静にしていますが心配はないようです。残りの触手の処置は私が遣っておきますので、春名ちゃんに顔を見せてあげてください」


 彼女に促されてタクミはシェルターの中に入っていく。それを見送った岬は収納から銀色の筒を取り出した。かつて魔族に大火傷を負わせたあのガーデニング業界最強の武器だ。


「邪魔なゴミはきれいに片付けましょう」


 岬はカセットボンベを押し込むとスイッチを入れる。その筒の先からは22000キロカロリー、1300度の炎が噴出していく。彼女がそれを触手に向けると面白いように溶けていく。僅か10分で全ての触手を焼き切って怪物退治は終わった。


 地面のシミだけが残るそのフロアーを念のため確認して見回ると青くて真ん丸いボールのようなものが転がっている。


「一体これは何でしょうか?」


 それを防護服のグローブで拾い上げてシェルターに持ち帰る岬だった。





 



次の投稿は土曜日か日曜日の予定です。

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