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17 ラフィーヌのダンジョン6

やや短い話なので臨時で投稿します。

 ドラゴンゾンビを倒してから、その奥にあった階段を下りていく一行。


 下のフロアーにつくとそこには『ⅢⅤⅠ』という表示があった。


「もしかしていきなり36層まで降りてきたってことかな?」


 驚いた様子の圭子に続いてタクミが話を始める。


「確かにそんな一気に降りた感じはしないが、こういう所は空間が捻じれている事があるから、こんな事もあるだろう」


 その言葉に一同はなんとなく納得する。


「時間的にはズレを確認していないが、空間の捻れならよくある事」


 時空の専門家である空の言葉だけに信憑性がある。


「近道できたのならよかったです」


 春名が選んだ逆が当たりだったのか、それとも普通のパーティーならばドラゴンゾンビに襲われたところで全滅もありうるだけに、どちらがいいとは一概には言えない。


「それより早く魔物が出ないかな! 早くこの篭手の威力を試したいのよね!!」


 圭子はやる気に満ちているようで、両手のこぶしを打ちつけている。だがこの階層はその圭子の気合をもってしても超えることのできない強敵が出現した。


「なにあれ! も、もしかして虫-----?!」


 怖いもの知らずの圭子だったが虫だけは大の苦手だ。全身に鳥肌を立ててズルズルとパーティーの一番後ろまで後退する。


「タクミー! 変身して全部やっつけて!!」


 圭子の丸投げ宣言が出た。だが通路が狭いのでタクミの火力では下手をするとこちらにも被害が出兼ねない。


「私に任せて」


 美智香が前に進み出た。彼女は虫に対しては恐怖心はないらしい。


 前からパーティーに向かって襲い掛かろうとするのは、キラービーの群れでその数はおよそ50匹。


「それポチっとな!」


 彼女は開いたウィンドウの濃い青の真ん中とその隣の水色のタッチパネルに触れた。


 その瞬間、美智香の左手から吹きすさぶ氷の嵐が魔物に襲い掛かる。


 彼女が発動したのは『アイスブリザード』、氷属性の中級魔法に風属性魔法を加えている。極寒の嵐の中で魔物達はたちまち凍り付いて床に落ちた。嵐が通り過ぎた後は、通路全体が凍り付いて彼女の魔法の威力を物語る。


「ちょっとやり過ぎた。複合魔法はまだ試していなかったから、効果が予想できなかった」


 自分でも予想外の恐るべき効果に表情が固い。だがこれで虫の群れも簡単に片付けることができる目途が立った。難点は通路が滑って歩きにくくなることだ。


 凍りついた通路を慎重に進むと、次々に虫達が襲いかかってくる。


 1メートル級のカブトムシ『ジャイアントビートル』や3メートルを超えるカマキリ『キラーマンティス』などが多い。


 これらは全てタクミのバールの餌食になって消えていった。ドロップ品は甲虫の外殻や鎌などあまり大した物がない。


 襲いかかってくる虫達を蹴散らしながら進んでいくと小部屋があった。覗き込んでみるとそこには『キラーアント』が大群で待ち構えている。


 教室ぐらいの部屋を埋め尽くすおびただしい数のアリ達。中には共食いまでしている個体もある。一匹の大きさは3センチくらいで地球にいるものよりやや大きいくらいだが、問題がその数だ。


「私にお任せください」


 ここで岬が前に出た。彼女は収納から何かを取り出して、部屋の中に放り投げる。およそ20個を投げ込んだ時に、アリ達に変化が起きた。


 岬が投げ込んだ物に群がって、それを口にした個体が痙攣して倒れる。そしてその個体を共食いで食べたものまで死んでいった。


「タレちゃん、一体何を投げたの?」


 アリ達から目を逸らしつつ圭子が尋ねる。


「はい、これはアリを巣ごと退治する薬です。ホームセンターで売っているんですよ」


 掃除が趣味の岬にとってはホームセンターはコンビニよりも通う回数が多い場所だ。目に付いたものは片っ端から購入するので、このようなものまで大量に所持している。


 目に見えて動いているアリは減ってきた。残りは美智香が火の魔法で焼き尽くす。しばらく待っているとアリ達の死骸が消えて、部屋の片隅に宝箱が出現した。


「タクミ、任せた!」


 圭子は先程の事で学習したので、タクミに宝箱を任せる。


 彼が再びパワードスーツを展開して宝箱を開けると、今度は何もトラップはなくスムーズに開いた。


 中にある物を手にとってタクミが全員に見せる。それは見かけはチェーンのペンダントで、かなり古めかしいデザインのアクセサリーだった。


『毒消しのペンダント・・・・・・毒を完全に無効化する』


 空による解析結果だ。


「これも圭子ちゃんが持っていた方がいいですね。前で戦う人の方が毒にやられる危険がありますし」


 春名の意見だ。タクミは『俺も一番前で戦うことが多いんだけど・・・・・・』と心の中で突っ込んだが、やはり春名の意見に賛成だった。


「私ばっかりなんか申し訳ないんだけど」


 そう言いつつペンダントを受け取る圭子、でも顔はにやけている。


「さあ、ここを抜けるとどうやら階層ボスの部屋のようだ。この辺で一休みしていくか」


 タクミの言葉通り、朝活動を開始してからすでに12時間が経過している。この部屋を抜けて、ボス部屋の手前で宿泊の準備を始める一行だった。

読んでいただきありがとうございました。

次の投稿は水曜日の予定です。

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