表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士大神(もののふおおかみ)   作者: ぽんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/117

神々の集まり(カムイウエカルパ)

 わたしはばけものだ・・・。


 自身にずっとそういいきかせてきた。


 なにゆえ、ばけもののままでいてはいけなかったのか・・・。

 否、それ以前になにゆえ人間ひとでなかったのか・・・。


 選ばれし憑代・・・。ただの器・・・。


 そのはずだった。


 川の流れは激しい。ここには、魚すら棲まぬ。


 そう、ここは神域。ここには、なにもない。すべてが無。


 およそ、生きとし生けるものが、入り込む余地はなく、混沌だけが横たわっている。

 それは古よりつづき、これからも無限につづく。


 二頭の獣と一羽の鳥、そして、人間ひと


 だが、それはただの容姿かたち


 おおいなる神の領域で、その息を吹かせているのは四柱よつばしら


 いずれも永きに渡ってあらゆることをみ、あるいはきき、あるいは護り、あるいは淘汰してきたれっきとした神々。


 音も匂いも気配もなにもない。神々はここでこうして集い、戯れる。


 もうどれだけ永い間、こうしてきたことか。


 器である自身が壊れかけている。


 それは、人間ひととしての意識が奪われ、もう一つの存在の台頭を現す。


 もう、それを御すことは難しい。


 ばけものであってでもいい。せめて、自身のまま果てたい。


 かような存在は糞くらえだ。いやだ。わたしはこれ以上、殺したくない、傷つけたくない。


 いかなるものの肉体からだも、精神こころも。


 はっきりと自覚している。もう一つの存在を。

 否、それも本当は、自身が創りだしている創造物。

 壬生狼のように。


 最初(はな)から、自身は一つ。


 ばけものであることを、信じてきた。そうであることを祈り、そう演じてきた。

 だが、しょせん、それはごまかしでしかない。


 なぜなら、これはただの容器かたちにすぎぬのだから。


大いなる神カムイ」それがわたし・・・。


 あのとき、神に救われたのではなく覚醒した。


 父は、すべてを知っていた。

 神の子を宿す力をもつ巫女のことを。

 そして、父は利用しようとした、わたしを。


 わたしの力を・・・。


 他の神々がわたしを護ってくれた。


 とくに狼神ホロケウカムイは、わたしにもっとも近しい眷属。


 大切に育んでくれた育ての親。


 少年は、付き従う白狼の頭部を抱きしめた。


 狼の姿をしている、勇ましき戦いの神。


 アイヌの村で待っている五頭の子どもらだけでなく、たくさんの子を成し、育て、この大地を護ってきた。

 同じ姿のまま何百年も。


 熊神キムンカムイは、羆の姿かたちで自然を統べる神。


 そして、コタンコロカムイは、人間ひとを護る守護神。


 そして自身は・・・。


 人間ひとを、動植物を、自然を、大地を、大空を、大海を、この世界そのものを、眼前にいる神々をも支配する大神カムイ・・・。


 母上、わたしは、あなたの子はやはり弱虫です。


 わが主よ、わたしはあなたの一振りの刃として果てたかった・・・。


 わたしはばけもの・・・。


 人間ひととして認められぬのなら、せめて、それに近しい存在として消えたい・・・。


 演じきりたい・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ