神々の集まり(カムイウエカルパ)
わたしは妖だ・・・。
自身にずっとそういいきかせてきた。
なにゆえ、妖のままでいてはいけなかったのか・・・。
否、それ以前になにゆえ人間でなかったのか・・・。
選ばれし憑代・・・。ただの器・・・。
そのはずだった。
川の流れは激しい。ここには、魚すら棲まぬ。
そう、ここは神域。ここには、なにもない。すべてが無。
およそ、生きとし生けるものが、入り込む余地はなく、混沌だけが横たわっている。
それは古よりつづき、これからも無限につづく。
二頭の獣と一羽の鳥、そして、人間。
だが、それはただの容姿。
おおいなる神の領域で、その息を吹かせているのは四柱。
いずれも永きに渡ってあらゆることをみ、あるいはきき、あるいは護り、あるいは淘汰してきたれっきとした神々。
音も匂いも気配もなにもない。神々はここでこうして集い、戯れる。
もうどれだけ永い間、こうしてきたことか。
器である自身が壊れかけている。
それは、人間としての意識が奪われ、もう一つの存在の台頭を現す。
もう、それを御すことは難しい。
妖であってでもいい。せめて、自身のまま果てたい。
かような存在は糞くらえだ。いやだ。わたしはこれ以上、殺したくない、傷つけたくない。
いかなるものの肉体も、精神も。
はっきりと自覚している。もう一つの存在を。
否、それも本当は、自身が創りだしている創造物。
壬生狼のように。
最初から、自身は一つ。
妖であることを、信じてきた。そうであることを祈り、そう演じてきた。
だが、しょせん、それはごまかしでしかない。
なぜなら、これはただの容器にすぎぬのだから。
「大いなる神」それがわたし・・・。
あのとき、神に救われたのではなく覚醒した。
父は、すべてを知っていた。
神の子を宿す力をもつ巫女のことを。
そして、父は利用しようとした、わたしを。
わたしの力を・・・。
他の神々がわたしを護ってくれた。
とくに狼神は、わたしにもっとも近しい眷属。
大切に育んでくれた育ての親。
少年は、付き従う白狼の頭部を抱きしめた。
狼の姿をしている、勇ましき戦いの神。
アイヌの村で待っている五頭の子どもらだけでなく、たくさんの子を成し、育て、この大地を護ってきた。
同じ姿のまま何百年も。
熊神は、羆の姿で自然を統べる神。
そして、梟は、人間を護る守護神。
そして自身は・・・。
人間を、動植物を、自然を、大地を、大空を、大海を、この世界そのものを、眼前にいる神々をも支配する大神・・・。
母上、わたしは、あなたの子はやはり弱虫です。
わが主よ、わたしはあなたの一振りの刃として果てたかった・・・。
わたしは妖・・・。
人間として認められぬのなら、せめて、それに近しい存在として消えたい・・・。
演じきりたい・・・。




