第90話 魔王様!まさしく腐敗の町ですね!
「皆…私を離れないでね」
バニラを先頭にし、リカルダ達はバニラの後に続く。
町を進んでいくと、豪華な屋敷が多く見かけられる。
「豪邸や屋敷が多いわね…?」
雑草かのようにいくつも見かける豪邸に、ウェルミナは目を取られていた。
「アカルガーデンは“貴族が住む町”と呼ばれていて、高値のものが多く取引されている町でもあるんですよ。豪邸が多く見られるのも、アカルガーデンの特徴でもありますしね。しかし…」
ルアはちらほら見かけられる、古びた小さい家を見る。
「潤った人達がいる裏にも、こういった満足に生活ができない人がいるのが、現実ですね」
ここは多くの貴族の住む町、アカルガーデン。高値の品を買ったり、売ったりする売買がこの町のお金の収入源なのだ。
大変潤っている者がいるが、その裏にも高値のものを入手できない平民達は、貧相な暮らしをしざるおえなかった。
「それで、貧困に耐えかねた平民達が強盗に走り、治安が悪くなったのか。そりゃあ、悪くなるわな」
豪華な食事しながら子供を睨む貴族、ボロボロの服で走り回る子供達。身分差が目立つ。
リカルダが建物を見ているところ、誰かに声をかけられる。
「あの、落し物をしてしまって…手伝ってくれませんか?」
ボロボロのワンピースを着た少女が、小刻みに震えながらリカルダに訴える。
この町の平民だろうか?
「すまない、こっちは用事があるんだ」
手伝ってあげたいが…こっちは大切な用事がある。
リカルダが行こうとすると、少女はリカルダの裾をつかみ引き止めた。
「ま、待って下さいよ…貴方が最後の希望なんです…お願い、します。母の形見なんですよ…うぅ…」
瞳に目が溜まり、今にも泣き出しそうだ。
「お、おい。泣くなよ…」
リカルダは泣き出す少女に戸惑った。こんな時どうすればいいのか…
「…何やってるの?」
バニラがリカルダを見かね、少女に近づいて来た。
それも、凄まじい気迫を身に纏って。
「…!」
少女もこれまで感じたことのない、バニラの気迫に固まっている。
「何かな…?私達は用事があるの…“私の”リカルダに手を出さないで」
「へ?“私の”?」
リカルダは思わず声に出してしまった。
「ちょっと!“私の”って、どういう事よ!」
話を聞いていたのか、ウェルミナが腹を立てた様子でバニラに突っかかった。
「…嘘だよ。ほんの冗談…気にしないで。誰かの命令で悪魔斬りの剣を…盗むつもりで誘ったんでしょ?消えてくれる?」
「…チッ!」
バニラの冷たい言葉に、少女はそそくさとこの場を去っていった。
「変わりようがすごいな…」
「この国の平民は…こうやって誘って…ここに来た冒険者の持ち物を盗むのよ。女の子だからって、気を許さないで。行くよ」
(…これもきっとアルベルトの命令。何を考えているんだか…)
バニラは何もなかったかの様に、さっさと夕暮れの街道を歩いていく。
「っ〜!絶対、リカルダは取らせないんだから!リカルダ、行くわよ!」
「お、おう」
ウェルミナはリカルダの腕を引っ張り、バニラに続いて行った。
「これが嫉妬ってやつか…」
「凄まじいですね…」
ウェルミナの背中をしみじみと見つめ、ジルとルアもバニラに続いて行った。
それから、暫くすると城のような建物の前にリカルダ達は辿り着いた。
「ここなのか?」
「どうやらここらしいですね」
華やかな装飾をした貴族達が出入りし、建物からは愉快な音楽が聞こえてくる。
「ねえ、私達冒険者がここに来ていいの?ちょっとジロジロ見られて、恥ずかしいんだけど」
ウェルミナの言う通り、貴族達はこちらをジロジロと見ている。
気品溢れる貴族のパーティに不似合いな、冒険者がいることに嫌気をしているのだろう。
「まぁ、本来冒険者が来るところじゃねーしな。冒険者の俺達を呼ぶなんて、変わった馬鹿野郎だなアルベルトは」
「馬鹿野郎…言ってくれますね」
待ち構えていたのか、赤い貴族服を着たアルベルトがそこにいた。
「良くぞ来てくれたね、リカルダ君。見たことない顔が揃ってるけど、そちらの方々は君のお仲間さんかな?」
アルベルトの問いに、リカルダの代わりにバニラが答える。
「ええ…そうよ。リカルダをこんなパーティに誘って…何か企んではいないでしょうね…?」
バニラの睨む姿を見て、アルベルトは笑みを浮かべる。
「ははっ、何も企んでないよ。リカルダ君に楽しんでもらう為に、パーティに呼んだんだからね。それにしても…」
リカルダ達の服装を、アルベルトは舐めるように眺める。
「その格好じゃあ、この場には不似合いだ。君達!」
アルベルトは黒い礼装をした、従者を呼び出す。
「この者達に似合うドレスを、特にこの男の子はカッコよくね?」
「かしこまりました」
と従者達に控え室的な部屋に、強制的に連れて行かれる。
「ちょっと、何よここ!って、ほわあぁぁぁ!」
目の前の数えきれないほどのドレスに、ウェルミナは目を輝せた。
「好きなドレスをお選び下さい」
「え?このドレス、貸してくれるの!?」
「はい、お好きなドレスを」
従者の言葉に、ウェルミナはドレスを物色し始めた。
「ウェルミナ。ほどほどにしろよ」
いっつも、服に目がないんだからな…
リカルダがウェルミナの様子に、呆れていると従者に服を勧められる。
「こんな服はどうでしょうか?」
勧められたのは、黒い軍服のような礼装。ところどころに金色の装飾が、控えめに散りばめられている。
「いや、遠慮する。そういう派手なやつh「さあ、着替えましょう」
またまた強制的だな…
リカルダは無理矢理、更衣室に礼装と共に突っ込まれた。
また見てくれると…ね?




