第9話 魔王様、これが救世主ってやつですかね?
茶色の髪をなびかせ笑みを浮かべるバフォメット。
「アンタ…これはどういう事?」
その姿はフォメの面影が全くなく別人のようだった。
「ごめんね、リカルダにぃちゃん達。これは、シルエラ様の為なの」
「シルエラ…」
リカルダは何かを思い出すように呟く。
「ほ〜ら!魔物さん達!」
ガァァァッ!ゴォオッ!
バフォメットの周りから沢山の魔物が溢れ出てくる!
「なんて量の魔物だ…おい、この結界を解け!」
「お、おう!」
男は結界を解こうとするが、
「あれ…解けない!嘘だろ!?」
「残念。その結界、解けないようにしてあげたよ。私を罠にはめてあざ笑った罰だよ☆」
間も無くして、周りの魔物達が結界の中へと入ってくる!
「はあぁ…もう俺達は終わりだ!」
「はぁ?もう終わりだって、そう簡単に諦めるんじゃないわよ!」
絶望する男達を尻目にウェルミナは、レイピアを構える。
「そうだよな…まだ諦めては…な」
リカルダがゆっくり立ち上がり、剣を構える。
「リカルダ!?アンタは休んでおきなさい!そんな怪我じゃあまともに戦えないわ!」
「いや、戦えるよ…多分!」
「えっ?た、多分?」
「上から魔物達が来てるよ」
ビビビビッ!ビギャャッー!
上から大きな赤い蜂が降ってくる!
「う、うぇっ…熱針!!」
ヒュンヒュン!ヒュン!
レイピアに炎が宿り、ウェルミナは蜂を突いていく!
ウェルミナの突きを受けた蜂達は、灰となって崩れていった。
「やったわ!…って痛あっ!!」
ドサッッ!
後方から何かが突進してくる!
石の鎧を持った魔物イシトカゲが、突進して来ていた。
「ゴアアアッッッッ!」
イシトカゲが再び突進してくる!
「また!?」
ウェルミナはそれをジャンプしてかわし、後ろに回り込む!
「雷針!」
バチ!バチバチ…!!
ウェルミナは電気を宿らせ素早く突く!
バキッ…ボロボロッ…!
イシトカゲの石の鎧が崩れて行く!
ウェルミナは石の鎧が崩され、あらわになったイシトカゲを素早く斬りつける!
ゴアッッッッ…
イシトカゲは動かなくなった。
ギャァァアッ!アアアッツアー!
と雄叫びをあげながら魔物が、結界の内に次々と入って来る!
「くっ…魔物が多過ぎるな」
リカルダも苦戦しているようだった。
「アンタ達!ビビってないで、戦いなさいよ!」
「お、おう!お前達も戦うんだ!」
「わ、わかった!」
「…やってやるよ!」
アアアアッ!ギャォォォッ!
「もっと!もっと!魔物さん達〜!」
バフォメットの掛け声で魔物が出てくる!
「いけー!」
バフォメットはウェルミナ達を指差す。
「キャアァッッ!」
ブフォッッッ!!
魔物の攻撃で吹き飛ばされるウェルミナ。
「ウェルミナぁっ!くっそ…」
魔物の攻撃により腕を負傷するリカルダ。
「魔物さん達、感心感心!いいよ、いいよ〜!」
段々と血に染まっていく二人を見て、バフォメットは笑う。
“…もう安心して…”
あるウェルミナの言葉がバフォメットの脳裏に浮かぶ。
「…いや、私はあんな人間なんか」
“もう大丈夫だから”
「どうも思ってない…あれは違う、あれは違うの!」
ウェルミナの笑顔が脳裏をよぎる。
「…っ!私は私は!」
バフォメットが混乱し、頭を抱える一方リカルダ達は…
「うっ…はぁっ…」
リカルダは右手を抑え苦しんでいる。
「リカルダっ!その傷…!」
「大丈夫だよ…こんな傷すぐ治るって」
とリカルダは言うも、傷から血がだらだらと流れ続ける。
「大丈夫じゃ、ないじゃん!」
ウェルミナはリカルダの腕に包帯を巻こうとする。が!
「おい!ウェルミナ後ろ!」
「後ろ…?」
ウェルミナが後ろを向くと、そこには片手に棍棒を持った巨大なトロールがいた。
トロールは、ウェルミナに棍棒を振り下ろそうとする!
「えっ…嘘っ!?」
ウェルミナは目を見開き、動かないでいる。
「かわせよっ!」
棍棒が振り下ろされようとする瞬間、リカルダはウェルミナを抱きかかえ、トロールの攻撃をかわす!
ドォォオォォッン!!
「えっ…ええええぇっ!?」
「怪我…ないか?」
「な、ないわよ。ありがとうね」
グオオオオオッ!!
「来るぞ!」
トロール…難易度5に匹敵する強敵。
トロールは雄叫びをあげ、リカルダに襲いかかる!
リカルダはトロールの攻撃を避け、トロールの下に入る。
「氷衝斬!」
キィィィィン!
リカルダはトロールの足元に剣を突き刺す!
トロールの足元が氷に侵食されていく。
「風針!」
フィィィッン!
風を宿したレイピアでトロールの腕を突く!
フィュン!フィュュン!ギチギチッ…!
突かれたトロールの腕がさけ吹っ飛んだ。
腕が裂けた痛みにより、トロールは苦しみもがく!
グォォッ!グォオオオオオッ!
かかさずリカルダが前に回り込み、トロールを斬りつける!
グオオオオオオオオッ!!
「なっ!?」
ブォッン!!
トロールは棍棒でリカルダを吹き飛ばす!
「リカルダぁっ!?」
トロールの視線がウェルミナを捉え、棍棒を振り下ろす!
「はああああっ!」
ドカァァアッッン!タッタッタッ!
ウェルミナはトロールの腕を利用し、トロールの体へと登って行き、飛び上がる!
「熱針!」
レイピアに炎を宿らせ、トロールを攻撃しようとするが、
ガアアアアッ!
上からワイバーンが襲いかかる!
「キャァッ!」
ウェルミナは攻撃を辞めざるおえなかった。
ワイバーンは難易度がトロールよりも上回る魔物。あのまま攻撃を続けていたら…
「っ!どうすればいいってのよ!」
魔物は難易度高めの魔物ばかり、冒険者ランクがFランクのウェルミナにはかなわない…
ウェルミナはリカルダの方を向く。
リカルダはなんとか立てているものの、そろそろ体力の限界だろう。
(このまま私達は…)
トロールが再びウェルミナに攻撃しようとする!
ウェルミナにはもう戦う気力なんてものはなかった。
どう足掻いても事は変えられない…
ウェルミナは何も抵抗もせず立ち尽くす。
ウオオオオオオオオッ!
トロールが棍棒を振り下ろそうとしたその時だった!
ヒユユュュュイィン!
と横から光の矢が何本も飛んでき、トロール達をはじめとする魔物達を突き刺して行く!
トロールは多くの矢に刺され、横倒しになる!
ドスッッッンッ!
ガアッ!アアアッ!
ギャッー!
ゴオッッッ!
魔物達は急所にあたり、倒れていく。
「すっ、凄い…」
ウェルミナは目の前の光景に圧倒されていた。
ヒュュィィィイィィ!
「何…?何が起こったの?」
バフォメットの横から光の矢が飛んでくる!
「っ…!?」
バフォメットはかわし、矢が飛んで来た方向を見る。
「ちっ…外れたか…」
と白いワンピースをきたバニラが現れる。
「光矢もう一発、うっていい?」
そう冷たく言い放つバニラ。
このバニラの登場で事態は大きく左右する!
次回も見てくれると嬉しいんだけど…