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第89話 魔王様!IN!アカルガーデンです!

《そして、数日がたった夜の日のこと》


夜空が広がる丘の上、タダールが居た。

心地よい夜空の風にあたり、ローブが優雅に揺れる。


「お待たせ〜、ごめんね〜!」


しばらくして、ベルゼブブがタダールの元にやって来た。


「用事が長引いちゃって…あら?」


ベルゼブブは、いつも横にいる筈のウィストリアがいないことに驚いた。


「ウィストリアちゃんは?今日は1人で来たの?」


「あの子可愛かったのにな〜」とベルゼブブは少し残念そうだ。


「ああ、あの雑魚はもう私の部下ではない。なんせ、私との契約を破ったんだからな」


「あらあら、せっかくのSランクの冒険者との契約を切っちゃったの?戦力になる、冒険者を捨てちゃうなんて、もったいないことしたわね〜」


そうタダールに言い放つと、ベルゼブブはクスクスと笑い出す。

笑い出すベルゼブブを、タダールは横目で睨んだ。


「まだ有力な人材はいるさ。むしろ雑魚が消えてせいぜいしているくらいだよ。前置きはこれぐらいにして、ベルゼブブ。作戦の準備は出来ているのだろうな?出来ていないとは言わせんぞ」


「もうし終わったわ。後はシルエラを呼び出して、一気に仕留めるだけよ」


タダールは怪しく笑う、ベルゼブブを疑いの目で見る。


「本当なのだろうな…?」


相手は悪徳の悪魔、悪魔を簡単には信じられない。

少しでも気を抜いたら、不幸という地獄に陥れようとして来る…

Sランクのタダールと言えど、気を抜けないでいた。


「もしかして、私を疑っているの?」


頬を膨らませ、ベルゼブブはタダールに近く。


「当たり前だろ、悪魔は信用できないからな」


「ヒッドーイ!でも安心しなさい。これは本当のことだから!神に誓うわ」


(そう言う奴ほど信用できんのだがな)

ダダールは疑いの気持ちがあったものの、ベルゼブブを信じることにした。


「…そうか。もう一度言っておくが、この『フィスルムの丘』で2週間後に作戦を決行する。覚えているよな?」


「ええ、耳が痛くなるほど聞かされたからね。その日まで、しばらくお別れね。必ず仕留めましょう、あの古い蛇を!」


タダールとベルゼブブの顔は、狂気に彩られていた…


《日時変わり数日経った頃…》


とある街角で少年が蹴り出された。


「ぐはっ…」


地面に倒れこみ、震える手足で立ち上がろうとする。


「まだ立ち上がるのか?しぶといね〜」


少年を蹴ったであろう、男冒険者が更に少年に蹴りを入れる。


「ったく、これほど美味しい依頼はねぇよな」


「ガキいじめるだけで金がもらえるんだからな!」


もう1人の男冒険者が、少年の腹を殴りながら言った。


「っはあっ…!」


ついに少年は、動かなくなってしまった。


「あ?やべ、死んじちまったか?」


「いや、まだ生きてるぜ。おら立てよ!」


男冒険者は少年の胸ぐらを掴み、起き上がらせる。


「それにさ、日々のストレスも解消できんじゃん?」


拳をあげ、男冒険者は少年を殴ろうとする。


「そうだな、お前みたいなガキがちやほやされてる所見てると、イラついてくんだよな!勇者ハイルの息子さんよぉ!」


《場面が変わり道を進む、馬車の中では…》


リカルダ達はととある町にいく為、馬車に乗って移動していた。


「……!?」


リカルダは夢から覚め、飛び起きた。

身体中から汗が吹き出し、鼓動が早くなる。


「ど、どうしたんですか?リカルダさん?」


すぐ横にいたルアとバニラが、いきなり飛び起きたリカルダに驚いていた。


「あ…何もない。気にしないでくれ」


「そう?凄い汗…だけど…」


「大丈夫だ。気にするな、悪い夢を見ただけだ」


リカルダはそう言うと、ルアに背を向ける。


よりによって、何でこんな夢見るんだよ…


息が乱れ小刻みに揺れる、体を抑えていると、


「ついたよ。ここがアカルガーデンだ」


到着を知らせる商人の声が聞こえ、リカルダは馬車を降りる。


「ここがアカルガーデンか…」


赤いレンガ造りの町“アカルガーデン”を、恐る恐る見渡した。

アカルガーデンと聞いて、リカルダは汚い町を想像していたが、まさかこんなにも綺麗な町だとは思ってもいなかった。


「一見…綺麗でのどかそうな町に…見えるでしょ…?けど…治安は最悪。強盗とか相次いでいるのよ…こんなところ、貴方達だけでは行かせられないわ…」


そう言ってバニラはアカルガーデンの人々を、殺気を丸出しにし睨みつけていた。


「ふあっ〜!アカルガーデンにもう着いたのかよ?」


さっきまで爆睡だったウェルミナとジルが、欠伸をしながら馬車に降りる。


「ったく、何でアンタがついて来てんのよ?アンタはギルドに待機するって、言ってなかったかしら?」


「言ってねぇよ!あのレオン隊長を殺した、アルベルトをほうっておく訳にはいかねぇ!このレオン隊長の一番弟子の俺が、あいつをぶった斬ってやる!」


槍を手に取り振り回すジル。興奮し今にもぶっ飛ばしそうだ。


「フン、アルベルトをぶった斬るなんて、アンタには無理な話よ。諦めなさい」


相手は多くの部下を持つ、アルベルト。かなうはずもない。


「はぁぁあぁ?俺に諦めろってのか?こんなところまでわざわざ来たんだ!アルベルトを一発殴るまで俺は帰んねぇよ!」


「一発殴られんのは、アンタの方じゃないの?」


「はっ?お前は黙ってろ、こんのババア!」


「あー、二人共落ち着いてくださいよ。皆が見てますよ〜」


今にも喧嘩を始めそうな二人を、ルアが宥めた。


はっはは…相変わらずだな…


「ねぇ…リカルダ。本当に行くの?アルベルトに…誘われたパーティに…」


さっきまで殺気を撒き散らしていた、バニラがリカルダに聞く。


「ああ、相手はこの町を統べるアルベルト。行かないと、何をされるかわからない」


“来ないと、君の大切な仲間を傷つけることになるから”

それに、あの時の言葉…行くしかない。


今までは良かったんだ。これまでは。

けど、あんな事態が起こるなんて誰も思ってもいなかった。誰も…

次回もお見逃しなく!

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