第80話 魔王様…へ、変態が現れましたよ!
皆さん、満月みましたか?昨日見忘れてたんですけど、今日見たら綺麗な満月が浮かんでました。
いや〜、綺麗ですね。月って何時間見ても飽きないです。
無駄話は置いといて、どうぞ。
この声は…!
リカルダは突如、聞こえてきた声に思わず目を見開いた。
「リヒト…大神官…?」
見覚えのあるこの声は明らかにリヒト大神官のものだった。いや、リヒト大神官しかありえなかった。
“悪魔斬りの剣を持て、リカルダ”
「…持ちたいのはやまやまだが!」
“ジルに怪我を負わせてしまうんじゃないか…だろ?”
自分の心を見透かされ、驚くリカルダにリヒト大神官は笑うような声を出した。
“悪魔斬りの剣が上手く扱えないのは、お前が剣を信じていないからだ”
「信じていないから…か?」
“そうだ。この剣は意志を持ち、お前を剣の主として認めているんだ。しかし、お前はこの剣を信じず、剣に疑いの心を持っている”
リヒト大神官の言う通り、リカルダは剣を信じていなかった。周りに被害を出してしまうんじゃないかと、使うのを遠慮していた。
“今のお前ならやれる、リカルダ!剣を信じろ!”
リヒト大神官の言葉に、リカルダは悪魔斬りの剣を恐る恐る手に取る。
“そうだ、今のお前なら…どうした?”
震えだすリカルダの様子に、リヒト大神官は怪訝そうな声を出した。
「…そうしたいのは、やまやまだ。だが、ジルを殺したくない」
リヒト大神官はリカルダの言う事に、少し黙り込んだ。
“…お前の父親、ハイルも初めはそうだった”
怒られるんじゃないかと、少し身を引き締めていたリカルダ。
予想だにしない言葉にリカルダは思わず、うつむいていた顔を上げた。
“無闇に使えば、誰かを殺めてしまうのではないかと、あいつは頭を悩ませていた。だが…”
リヒト大神官は続けてこう話した。
“剣を信じてあげることで、剣を上手く扱えるようになったと…”
リカルダの肩に、リヒト大神官の手が触れる。
“ハイルが使えたように、お前もこの剣を自由自在に操れる!剣を信じるんだ…”
このリヒトの言葉にリカルダは悪魔斬りの剣を握りしめる。
リカルダが握りしめると、まるで合図をするように剣の模様が眩しいほど光った。
“もうお前は一人前だ。何も心配することはあるまい!自分を信じ、剣と共に生きて行け!”
リヒト大神官の言葉に、決心づいたリカルダの瞳が一瞬青く光った。
《一方、リカルダが決心する何分か前。ジルは…》
「ぶはっ!」
アンドロマリウスは乱暴に、ジルの髪を掴み土煙から出し祭壇に投げ飛ばした。
「こんなに無様になってな、まるでさっきとは別人みたいだな」
砂埃塗れで今にも倒れそうな姿のジルを、アンドロマリウスは冷めた目つきで睨みつけた。
「うっせ…黙れ」
今にも途絶えそうな声で言い、ジルはアンドロマリウスに睨み返した。
「まだ睨み返すほどの力が残ってんじゃねぇーか。かかって来いよ。って無理な話か」
アンドロマリウスは血塗れた短剣を片手に、ジルに歩み寄った。
「まずはお前を始末させてもらうぞ」
(レオン隊長の一番弟子が情けねぇ…)
振り上げられるアンドロマリウスの短剣を見つめる。
しかし、その瞳には生きる意志が宿っており、諦めてはいなかった。
(何か…逆転できる方法は…)
出来れば槍で短剣を防ぎたい所だが、ジルの肩は動く気配がない。
アンドロマリウスの短剣がジルの首を斬る…その時!
ボコォッ!
何か地面が蹴られる音が聞こえ、アンドロマリウスは横を向く。
横から、リカルダが飛んできアンドロマリウスの短剣を弾く!
「なっ…!?」
ジルは突然の出来事に目を見開く。ジルと同様、アンドロマリウスも驚きを隠せないでいた。
リカルダの持っている剣を見て、アンドロマリウスは後ろに下がった。
「お前、その剣は!」
さっきまで余裕面していたアンドロマリウスの顔が、一気にまずそうな顔に変わった。
「ジル!大丈夫か?」
「ああ、なんとか…」
ジルの安否を確認すると、リカルダはアンドロマリウスに向き直った。
「お前がその剣を使うとなっちゃあ、今回はもうやめだ」
アンドロマリウスは短剣についた血を振るい、鞘にしまう。
「おまっ…逃げる気か!」
「そうしねぇーと俺の命が、片付けられそうだからな!」
アンドロマリウスは後ろに下がり、この場から立ち去ろうとする!
「させるか!」
立ち去ろうとするアンドロマリウス目掛け、リカルダは短剣を横に振るう!
「ちょっ、待っお前!」
ズッバーン!
という物凄い音をたてながら、アンドロマリウスごと祭壇が真っ二つに斬れる!
「そ…んな…」
リカルダの攻撃により、胴体が真っ二つに斬られたアンドロマリウスは血の水溜りに俯けに倒れた。
「はあっ…くっ…お前…ら!」
アンドロマリウスの上の胴が動き、手で這ってリカルダに近づいてくる。
「お前…らも一緒…に地獄に…落ちろ!」
赤く光る瞳に血塗れになった顔で、這い寄ってくるその姿は、この世のものとは思えないものとなっていた。
「フッ…フフフッ…」
と不気味な笑みを浮かべると、体が動かないのかアンドロマリウスは動かなくなった。
「お前らも…絶望と…言う地獄…に崩れ落ち…る。いつか…必ず…」
と意味深な言葉を残し、アンドロマリウスの体は、固まった砂のように崩れていった…
《リカルダとジルが悪魔との戦い終えた祭壇から、離れた崖にその一部始終を見ていた二つの人影があった》
クリーム色の黄色い髪が風になびき、青い瞳でリカルダの様子を伺う青年。
「あれが噂の勇者ハイルの子供?」
そして、もう一人の青い眼鏡をかけた青髪の男が青年に聞く。
「そうさ、あの少年が私達の希望の星」
「そう…マリアたんより優れていなさそうだ」
眼鏡をスチャッと上にあげ、一息つく。
「そもそも、マリアたんより優れているやつなどいないのだ。そう!マリアたんが一番なのだ!マリアたん、マリアたん、マリアたん、マリアたん!マリアたんハァハァハァハァハァハァ」
突然、興奮しだす男を青年は無視しリカルダに視線を戻した。
「…私達人間の最後の希望。会えるのを楽しみにしているよ」
そう言い残し、2人は風邪と共に去っていった。
シルエラ様のためにも、次回も見てくれよ!




