第75話 魔王様!悲しみは時間がなんとかしてくれますよ!
嘘だろ…?嘘だよな…?
「リカルダ?どうしたのよ?」
リカルダの異変に、ウェルミナが近寄って来た。
「何かあったの?…あ」
ウェルミナも外号の内容を見て、驚きを隠せないでいた。
「リヒト様が…嘘!」
隣から外号を見た人々の声が、耳に入ってくる。
「あ…リヒト様。亡くなったのか」
「なあ、リヒト様夫妻ってテロリアの門前で晒し首になってたらしいぜ。酷いことするよなー」
死んだのは…嘘じゃない…?そんな…
“リヒト様夫妻が晒し首”、この言葉を聞いて、死んだのは確かなんだとリカルダは絶望に陥った。
リカルダは何を思ったのか、この場を立ち去ろうとする。
「…リカルダ。待ちなさい」
去ろうとするリカルダを、ウェルミナは引き止める。
「ねえ、私に全部話しなさいよ?アンタ、私に話してないことあるんでしょう?過去の話とか…」
リカルダを掴むウェルミナの手の力が、強くなる。
「…わ、私!…リカルダの力になりたいのよ。アンタの悲しそうな顔を見てると、私まで悲しくなっちゃうじゃない!迷惑なのよ、リカルダが楽しそうな顔してくれなきゃ…」
リカルダはそれに対し、ウェルミナの手を振りほどいた。
「…1人にさせてくれ」
リカルダはウェルミナにそう言い残し、ウェルミナから離れていく。
「リカルダ!待って!」
ウェルミナの言葉にもリカルダは見向きもせず、人混みに紛れ街道を走る。
その瞳は涙が溜まっておらず、ただ絶望を見るかのような瞳をしていた。
リカルダは走り続けると、人気のない路地へと辿り着いた。
路地の壁にもたれると、リカルダは泣き出した。
「っ…何でなんだよ…」
リカルダの頬に涙が伝い、地面に落ちる。
どうし…て、何で死んじゃうんだよ…
リカルダが服の裾で、涙を拭こうとするも、涙がとめどなく溢れてくる。
ついには顔を腕で覆い尽くし、リカルダはしゃがみ込んでしまった。
…俺が一人前になるまで…死にはしない…って言ってたじゃないか…
「なあ、大丈夫か?」
聞き慣れた声に、リカルダは涙を拭きそっと顔を上げる。
そこには、鉄の鎧を身に纏ったジルがいた。
「…オルダスがお前を呼んでたぞ?いかないのか?」
ジルの発言にリカルダは少し嫌な顔をする。
嫌な顔をしたのは、ついさっきウェルミナと気まずい別れ方をして、会うのが嫌だからだった。
「もしや、オルダスの修行が厳しすぎてもう行きたくないってか?」
「今は…話しかけないでくれ」
ややなめた様子で言うジルに、リカルダは再び顔をうつ伏せた。
「ちょっおい、よかったら話聞くぜ?最近のお前変だしさ、何かあったのか?」
ジルの心配の言葉にも目もくれず、リカルダはうつ伏せたまま…
リカルダの落ち込みように、ジルはムスッとなった。
「はあ〜仕方ねぇな全く!」
ジルはそう言って、落ち込むリカルダを担ぐ。
「ちょっ…お前何するんだよ?」
「決まってんだろ?今からオルダスの家に向かうんだよ。こうしねぇと、お前動かなさそうだし」
オルダスの家に向かう…リカルダはそれを聞いて暴れだした。
「ちょっマジでやめ!離せよ!」
リカルダはジルから離れようともがくも、ジルの強い力にはかなわず、リカルダは諦めた。
「よっしゃぁ!オルダスの家へと出発すんぜ!」
と間も無くして、ジルは走り出しオルダスの家へと向かい、本の数秒でオルダスの家についた。
手合わせをしているのか、家前の広場にはルアとオルダスが向き合っていた。
「空気の氷結!」
ピキピキピキ…!
オルダスの体が氷によって犯されていく!
「フンッ!」
バリーン!
オルダスが体に力を入れると、体に纏わりつく氷が剥がれていった。
「耐久力がまだだな。動きを封じ込められても、強い魔物となってくると動きを止めるどころか、一瞬で破壊される。もっと魔力を練るんだ!」
「はあっ、もっと魔力を練るって言われてもですね…もう限界ですよ」
「魔力切れです…」と汗だくになったルアは、その場にちょこんと座り込んだ。
「あっ、ジルさん!リカルダさ〜ん!おはようございます!」
リカルダとジルの存在に気づいたルアが、リカルダとジルに手を振った。
「やっと帰ってきたか、リカルダ。今日も悪魔斬りの剣の扱い方について、特訓するぞ」
「いや、今日はいい」
リカルダはジルに降ろしてもらい、オルダスにそう言うと、スタスタとベンチに向かっていく。
「お、おい!リカルダ?」
リカルダの変わり様を見て、オルダスは思わず戸惑った。
「リカルダさんに何かあったんですか?」
リカルダの表情から、何かを読み取ったルアがジルに聞いた。
「まぁな…」
ジルはリヒト夫妻が死亡していたことを、オルダスとルアに話した。
「り、リヒトがか?」
リヒト大神官が死亡した。オルダスは信じられないと言った表情でジルに問う。
「そうだ、信じたくない話だけどな」
ジルは拳を握り、奥歯を噛み締めた。
「そうだったんですか…だから、リカルダさんは…」
ルアはうつむいて座る、リカルダに目を向けた。
「…悲しみは時間がなんとかしてくれるさ、ルア!ジル!お前達だけでも修行するぞ」
「えっ、まだするんですか!?」
ヘトヘトのルアが、もう無理という顔でオルダスに言った。
「当たり前だ!裏山の魔物を狩るぞ!」
この後、ルアとジルは裏山の魔物を狩り尽くしたのだった。
次も見て欲しいと、作者が言ってますよ




