第72話 魔王様!町が崩壊寸前ですね!
剣をななめ上から入れ、リカルダは的を斬る!
ブオオォーン!
的を斬るどころか、地面に青い切れ目が入り、地面が大きくえぐれてしまった。
的だけを斬るつもりだったが、地面まで斬ってしまった。手加減が難しいな…
ハードプラントの時は上手く根を斬れていたんだが…?
「斬れたのは斬れたが、地面までが斬れてしまったな。昨日は上手く斬れていたよな?次はこの的を斬ってくれ」
それから、1時間後。
結局的は上手く斬れず、地面まで斬れ広場には生々しい斬撃の跡が残った。
「リカルダ、原因がわかったぞ」
ベンチに座り休憩していたリカルダに、オルダスは剣をリカルダに返した。
「悪魔斬りの剣はどうやら、コンディション…なにやら、今日は調子が悪いらしい」
何だそれ…調子が悪いって。
呆れていると、リヒト大神官が言っていた言葉を思い出した。
“悪魔斬りの剣はな、意思を持つ剣なんだ”
意思を持つ剣…何か使い勝手が悪いな。
しばらくはこの剣を持ってないと、いけないか…
リカルダはもう一つの鞘に収まっている、前使っていた剣を見た。
「調子が戻るまでは、その剣を使うしかないようだな」
それから、オルダスと会話をしていると…
「リカルダ〜!大変よ!」
ウェルミナが何かあった様子で、リカルダに駆け寄ってきた。
「町で外号が配られてたんだけど…これ見て」
ウェルミナに外号を渡され、内容を見る。
【リヒト夫妻行方不明に】
この見出しにリカルダは目を見開いた。
【アカルガーデンからテロリアに帰る道中、リヒト夫妻が乗っていた馬車が、何者かに襲われ行方不明に。兵士達は無惨に殺され、全員が虐殺されていた】
なんだよ…これ…
まさか、リヒト大神官が殺されたんじゃないだろうな?生きてるよな?
「これは…!」
オルダスも驚いている様子だった。
「…一体、誰がやったのかしらね」
リカルダの固まる様子を見て、ウェルミナは拳を握る。
「もしや…」
オルダスには、思い当たる節があった。
リヒト大神官をもっとも嫌い、恨み憎んでいたあの人物…
「アンタ、この犯人がわかるの?」
オルダスの反応を見て、ウェルミナはオルダスにそう言った。
「いや、何でもないさ。忘れてくれ」
言ったとしても、意味がないとオルダスは言わないようにした。
「喋っていると時間がない。今から修行を始めるぞ!」
不安げなリカルダの気を紛らわせようと、オルダスは大声で言った。
「ウェルミナ、他の皆を連れて来てくれ。ドークらもな」
「え、あいつらも!?仕方ないわね…」
ウェルミナは嫌そうな顔をして、階段を降りて行った。
「リカルダ、その話は一旦終わりだ。準備をしておくといい」
オルダスの言葉に、渋々用意し始めたリカルダ。リカルダの胸には、わだかまりが残っていた…
《そして、日時が過ぎテロリアでは…》
「マスター!買い出しに行ってきます!」
そうマスターに言い、早朝にギルドを飛び出すサリーがいた。
「今日は何の料理を作ってもらいましょうか?シチュー、グラタン…グラタンもいいかもしれません!」
商店街前の交差点につくと、こんな早朝なのにそこらじゅうに人、冒険者などがざわざわと騒いでいた。
「ああ、リヒト様!どうか無事で…」
「っまく、誰だ!リヒト様を誘拐したのは!」
(いつもは人が少ないんだけど…リヒト様夫妻がいなくなった所為か)
リヒト夫妻が行方不明になってから2日目。テロリアでは、まだ騒ぎが残りつつあった。
あの事件から日中、啜り泣く声や不安の声…怒号などリヒト大神官を心配する声が、テロリアに飛び交うようになったのだ。
様々な声が飛び交う中、サリーは人混みをわけ商店街の中に入る。
「狭い…ちょっ、通らせて下さい!」
人混みの中は狭く、これ通れないんじゃ…と思うくらいに、人が行き来できる隙間がなかった。
「やめ、苦しい…!」
両側から冒険者が押してきて、サリーは腹を挟まれる状態になった。
ギチギチと腹を挟まれ、苦しんでいると、
「こういう時は、背を低くして人混みの足元を通って行くんだよ」
たまたま通りかかったイグナが、サリーの手を引っ張り、人混みの足元を突っ走っていく。
「!ちょっと…ええぇ!?」
イグナに引きずられ、サリーはされるがまま。やがてサリーは人混みを逃れ、人が少ない場所に辿り着いた。
「はあ…ありがとうございます。おかげで抜け出せましたって…イグナさんじゃないですか!」
サリーは目の前にいるイグナを見て、喜びの声をあげる。
「久しぶりだね、サリー。ギルドは上手くいってる?」
「まあまあですよ!それより、イグナさん。リヒト様夫妻が行方不明になった話…聞きましたか?」
サリーの質問にイグナはうんうんとうなづいた。
「うん、その話は耳が痛くなるほど聞いたよ。護衛の兵士達は全員虐殺…全く酷いよね。こんなの出来るのは、悪…はっ!」
イグナは何かを言いかけると、口を押さえる。
「悪?何ですか?」
「い、いや!何でもないよ〜!気にしないでね〜!(あっぶな!もう少しで言いかけた…あたしマジ凄いよ!)」
「…そうですか?」
あたふたしだしたイグナに、疑問を抱きながらもサリーは何もなかったように流した。
「ところで、君。こんなところに来て何するつもりだったの?」
イグナの質問に、サリーはキョトンとなった。
「何って、買い出しに来たんですが?」
「買い出し?ああ、残念だね。今日は店は全部しまってるよ」
「えっ、嘘!」
イグナの言葉に、サリーは周りを見回した。
連なる店は全部閉まっており、店員はもちろんのこと、人気すらなかった。
「リヒト様夫妻の事件の影響を受けてだろうね。不便だよね」
「え、ええええ〜!今日のご飯作れないじゃないですか!これじゃあ、ギルドのみんなが飢え死んじゃいます!」
サリーは頭を抱え、焦り出した。
「飢え死ぬって…そこまではいかないと思うけど…」
イグナがサリーの焦りように、呆れていると、
「ひっ!ひいぃぃぃ!」
と城の方から男が悲鳴を上げ、商店街に入って来た。
「ど、どうしたの?そんな怯えた顔をして」
「リヒト様…ソフィア様…!」
と2人の名前を呼んで、イグナの質問にも答えず、走り去っていった。
「あの男の人、何かあったんでしょうか?城の方から来てましたよね?」
「あったかもしれないね、行こう!」
イグナとサリーは商店街を抜け、リヒト大神官の城前に辿り着いた。
城門前には、人が既に集まっており人々の嗚咽と悲しむ声が交差していた。
「!?…えっ…あれって…」
イグナとサリーは目の前の光景に、驚き固まっていた。
イグナとサリーが見たものとは…?
次回も見て欲しいです、ではまた!




